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神様なんていなかった
神様なんていなかった
雨宮汐
文芸・その他ノンフィクション
2025年01月18日
公開日
2,092字
完結済
今から少女の一生を話そうか。 死にゆく星の、一筋の軌跡を話そうか。彼女の幸せを思い返して、深く眠れるように。彼女の愛したすべてを話そう。 いまだそこにいる親愛なる彼女へ。

第1話

 静寂が耳を塞ぐような、そんな夜だった。一人の少女が神様なんていなかったと、目からこぼした涙をぬぐう。ただその場には人はおらず、深夜二時の耳鳴りしか聞こえない空間だけが少女とともにあった。

 少女の目からは、次から次へと涙があふれていく。

少女には抱えきれない辛いことが次々と起こり、その度、潰されそうな暴言と暴力だけが彼女の世界にしみこんでいく。

夜が海になって星が生き物のように瞬く。そんな澄んだ夜の公園で少女は失望に満ちた目で、星を眺めていた。

 何もない彼女の人生で、星だけがそばにあった。

 何億光年遠い星々の光だけが、何よりも身近でそれはきっと互いがそうだった。ここは宇宙人のいる星なんだと、彼女は何度か思ったことがある。

 何もかもが不釣り合いで、親しみを感じるものなどは一つもない。この世界から拒絶される感覚だけがそばにひっそりと声を殺し、佇んでいる。

 今から少女の一生を話そうか。

 死にゆく星の、一筋の軌跡を話そうか。彼女の幸せを思い返して、深く眠れるように。彼女の愛したすべてを話そう。

 いまだそこにいる親愛なる彼女へ。




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