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第49話◇公開ロストなんとか◇



 デートのクライマックス。さあいよいよ優奈ゆうなとキスしようかという良い場面で茶々が入る。


 怒りの形相で俺達の前に現われた主人公がそこに立っていたのだ。


 最後の一手を邪魔されたのは忌々しいが、さてどうしたものか。


「ラクト……好摩こうま君……どうしてここに」

「どうしてはこっちのセリフだっ。お前、なんでそいつと二人きりでいるんだっ!」

「なんでって……デートしてるからに決まってるじゃない」

「で、デートだとっ!」

「そうよ。私が誰とデートしたって、好摩こうま君には関係ないと思いますけど?」


「なんだよっ! やめろよその他人行儀な呼び方っ。俺達幼馴染みだろっ」

「はぁ……。この間から何にも反省してないんだね。そういう態度だからよ。皆言ってたでしょ。反省するまで幼馴染みをやめるって。なんで分かってくれないの?」


 後ろをみやると清楚ビッチの恵美の姿が見えた。

 どうやら慌てて追ってきた様子だ。恐らく俺達の姿を見かけて主人公が飛んできたと思われる。


「ねえちょっとぉ。急にどうしたのよ好摩こうまくんっ」


 ほんの1週間では全てを忘れるほど夢中にさせるのは無理だったか。


好摩こうま君こそ、そちらの女性とデート中だったんじゃないんですか?」

「彼女は俺の大切な人だっ! でも優奈ゆうなには関係ないだろっ」


 絵美のやつ、【何言ってんのコイツ?】って顔してるな。

 すまん。そういう奴なんだわ。


 優奈ゆうなは若干呆れつつ、しかしまったく興味が無さそうに言い放つ。



「うん、そうだね。私には関係無い。私は好摩こうま君が誰とデートするかなんて興味ないし、どうでもいいと思ってる」

「そんな言い方しなくたっていいだろ」


 たった今お前から言ったことだろうが。

 絵美を含めたこの場の全員が同じ思いらしい。

 優奈ゆうなの表情から魂が抜けていくように呆れ顔が強くなった。


「それより優奈ゆうな、そいつから離れろよ。こんな町中ではしたない格好するな」

「別に好摩こうま君が気にする事じゃないでしょ」


「寂しかったんだな。でももう大丈夫だ」

「はあ? 何言ってるの?」


「俺は童貞を捨てたっ! 今まで踏み出せなかった所もあったけど、これで自信が付いたんだ。今こそお互いに素直な気持ちになろうぜ!」


 うわぁ、うわぁ、うわぁ……。

 恥ずかしい。聞いているだけで恥ずかしいぞ主人公よ。 

 あまりにも痛々しすぎて共感性羞恥が湧いてくる。



 恐らく主人公は【女の味】を知ったことで気が大きくなっているのだ。


 あいつの性格を考えれば――


【俺は女の味を知った→男としての格が上がった→これでヒロイン達を取り戻せる→今の俺を見ればみんな目を覚ます筈】


 という脳内サクセスロードマップが出来上がっているものと思われる。


 優奈ゆうなが得体の知れない珍獣を見るような目付きに変わっていくのも仕方ないほどに主人公は痛々しい。


「あんたホントに、マジで何言ってんのよ……。私達、単に昔からのってだけで、恋人でもなんでもないんだから」


 優奈ゆうなは当てつけるように俺の首を掻き抱いて頬同士をくっ付け合う。


「恥ずかしがらなくてもいいんだ優奈ゆうな! もうちゃんとお前の気持ちも分かってるから」


 うわぁ。童貞を捨てて絵美の方に夢中になるかと思っていたが、どうやらとんでもない明後日の方向に自信を付けてしまったらしい。


 ゲーム内ではヒロイン達全員に憎からず感情を抱いている事は示唆しているものの、ここまで勘違いハーレム思考だとは思っていなかった。


「私は先輩と付き合うことにしたの。だから先輩とこうしてイチャイチャしたって全然不自然じゃないでしょ?」

「お前は騙されてるんだっ! そいつはお前や皆を騙してそのうち酷い事をするに決まってる」


 失敬な。確かにスキルで洗脳してるから騙し討ちと大差ない自覚はあるが、彼女達の幸せを願っていることに変わりはないぞ。


『たららたったたたーーんっ♪ 妖精さんの性癖がレベルアップした~~っ! ボーナスターイム☆に突入しまーーーすっ!』


 忙しい時にまた妖精さんが騒ぎ出しやがった。

 性癖がパワーアップってなんだよ。


『主人公を分からせろっ! 幼馴染みの目の前で公開ロストチョメチョメだぁあっ!』


 うわぁ、まさかの寝取られ展開かよ(主人公視点で)。


 俺好きじゃないんだよなぁ。目の前で他人が不幸になる快楽ってさ。

 こういう事したくないから清楚ビッチに頼んでおいたのに。


 まさかこんな所に現われるとは。デートの行き先くらい確認しておくべきだったか。


『更にオプションを追加しますよー♪ 【初めてのセックスは公開生放送ッ☆衆人環視で中〇しア〇メを決めちゃおう♡】』


 更に悪趣味なオプションを追加しやがったな妖精さんめ。

 そんなことしたら動画録られて拡散されちまうだろうが。


『あ、ちなみに妖精さん結界の中では録画も記憶も全部なかったことになるので安心してはっちゃけてくださいね☆ 残るのは主人公さんの悪夢の中だけでーす♡』


 対策済みだったか。そうなった時点で俺には選択肢がないのと同じだしな。


 だが考えようによっては丁度良い。


 ここで主人公の脳を破壊して、後は清楚ビッチに慰めてもらえば諦めがついて骨抜きになるだろうぜ。


 あいつそういう感情を絡め取るの得意だからな。

 絶対敵に回したくない。


 俺は恵美にアイコンタクトを送る。すると承知したと言わんばかりに舌なめずりをして見せた。


 ホントに分かってるのかねアイツ。


 まあいい。とりあえず特殊な空間だから俺と優奈ゆうながセックスすることは確定しているからな。


 妖精さんの機嫌を損ねると空間が解除されてどういう事態に陥るか分かったものではない。


 下手をすれば優奈ゆうなに掛かっている感情のバフも元に戻されてしまうやもしれん。


 こうなったらトコトンまでやってやろうじゃないの。

 あとはなるようになれだ。



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