目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第50話◇優奈、ずっと溜まっていた不満◇

「さっきから聞いていれば好摩こうまは何か誤解しているようだ。優奈ゆうな、幼馴染みに見せてやれよ。俺とお前がもうラブラブだってことをな」

「な、なんだとっ⁉」


 妖精さんがいつもの気まぐれで領域展開してしまった事によって、俺と彼女が野郎の目の前で公開チョメチョメしないといけなくなった。


 妖精さんの機嫌を損ねると空間を解除されて公然猥褻街道まっしぐらになってしまうので従わざるをえない。


「ふふ、そうですね。なんか変な勘違いしてるみたいですし、私もこれ以上彼に付きまとわれるのも迷惑なんです」

「だったら優奈ゆうながどういう気持ちか、お前自身の行動で見せてやれよ」


 俺と優奈ゆうなは先ほどからベンチに座ってお姫様抱っこ状態のままで話している。


 優奈ゆうなはそのまま主人公からよく見えるように俺の頬を手で引き寄せ、大きく口を開き、舌を伸ばして唇に覆い被さってきた。


「なっ⁉」


「あーんっ♡ んちゅぅううううう♡」


 優奈ゆうなの容赦ないディープキスによって激しい水音が口の中で反響した。


 その様子を具体的に描写すると、間違いなくエロ小説のような表現になってしまうので詳しい事は差し控えよう。


「あは♡ 私のファーストキス、すっごくエッチになっちゃいました♪」


 銀色の糸を引きながら優奈ゆうなは恍惚の表情をして再び覆い被さってくる。


 その間、視線の向かう先は主人公だ。まるで当てつけるように優奈ゆうなの動きは主人公に見えるように位置取りをしている。


『さあさあここで妖精さんの特別ボーナスを追加しますよー。優奈ゆうなちゃんの欲望大解放ッ。力強い年上男性に強引なセックスを迫られ、自分を解放しちゃう展開だっ』


 それって妖精さんの願望なんじゃないの?

 まさしくエロ同人だな。


 しかし優奈ゆうなはそれを表すかのように強く求めてくる。

 俺が腰をギュッと抱いてやると、嬉しそうに体をよじらせて密着してきた。


「なんだよ……なにしてるんだよ優奈ゆうなッ! やめろよっ! 俺は、俺はお前が好きだったんだぞっ! だからやめてくれよっ!」


 流石の主人公もこうまでされては、己の痛い勘違いに気が付いたらしい。


 そして彼の一世一代の告白は残酷なほど空を切っていく。


「あっそ」

「なっ⁉ あっそって、なんだよその言い方はッ」


 優奈ゆうな本当ほんとっっっっうぅに興味なさそうに簡素な言葉で返した。


「悪いけど、あれだけのことやらかしておいてそんなこと言われても全然嬉しくないよ。それに、私は君のことそういう風に見たこと一度もないから」


 【君】という呼び方が優奈ゆうなの主人公への無味乾燥具合を示しているかのようだ。


 普通の呼び方なのに、この場においては何よりも残酷な呼称の仕方である。


「そ、そんな……」


 そう、可哀想だが、この時点で告白しても主人公に脈はない。

 これは俺が介入していなくても同じだ。


「ちょっと前なら、ラクトと付き合うのも悪くないって思えた未来もあったかもしれない。でも今回ので完全に愛想が尽きたよ。つまんない嫉妬で癇癪かんしゃく起こした姿見たら、幻滅しない方がどうかしてるでしょ。私、ハッキリいってムカついてるんだよ」


「な、なんでだよっ」

「まだ分かんない? 小雪こゆき初音はつねちゃんを怖がらせて、舞佳まいかちゃんや彩葉いろは先輩も呆れさせて、それでも反省一つしようとしない。自分は悪くないって思ってる。被害者だって思ってる」


「はぁ? だって被害者は俺じゃないかっ! どう考えても俺は悪くないだろっ」


 優奈は感情の伴わない冷たい眼で主人公を睨み付け、深い溜め息を漏らす。


「私、ラクトのそういうところ、昔から直してほしくて何度も注意したのに、ラクトは全然直そうとしてくれなかったじゃない」


 ここにきて再び呼び方が『ラクト』に戻った。

 それだけ優奈ゆうなが他に意識を裂く余裕がないほどムカついているのだ。


「そ、それは……でも、いままでそれで上手くやってきたじゃないか。何がいけなかったんだよ」

「それが分かってないからムカついてるのが分かんないのっ⁉」


 ここに至ってもまだ分かろうとしないのか。さっきから全然会話が成立してねぇぞ。


 妖精さんや、ちょっと主人公黙らせてくれよ。プレイがすすまねぇや。


 ……


 ダメか。とはいえ、こういうのは俺が率先してプレイを進めないと妖精さんは力を貸してくれないので、やるしかない。


「おい優奈ゆうな、いつまでくっちゃべってるんだ。こっち向け」

「はーい♡」


 アイツは問答を続ける限り、いつまで経っても自己弁護を続けるだろう。


 優奈ゆうなの口を塞ぐために舌を吸い、後頭部を押さえつけて舌を絡める。


「先輩、強引なファーストキス、すごく素敵です♡」


優奈ゆうなは強引なのが好きなんだな。ほら見てみろよ。幼馴染みが羨ましそうに見てるぞ」

「たまには良い薬ですよ。いつもワガママで、デリカシーがなくて、女の子の気持ちなんてこれっぽっちも分かりゃしないんだから」


 悔しそうに歯ぎしりする主人公の睨み付ける眼差しを受けながら、優奈ゆうなは当てつけるようにキスの姿を見せつけた。


舞佳まいかちゃんも小雪こゆきも、初音はつねちゃんも、あんなのの何が良かったんだか。私は理解に苦しみます。今までは幼馴染みだからってフィルターがありましたけど、先輩のおかげで目が覚めました」


「なるほどな。俺とのデートも当てつけだった訳だ。今日の初デートで最後まで行くことを期待してたのか?」

「してました♡ 先輩に強引に迫られたら、きっと私、断れませんから♡ 強引に服を剥ぎ取られて、そのまま、処女を捧げる。でも恥ずかしいです、こんな姿、ラクトにみられるなんてぇ」

「あれは酒のさかなみたいなもんだろ。見せつけてやろうぜ、俺達がもうラブラブだってことをな。ほら、周りの人達も優奈ゆうなのエッチな姿をみて興奮してるぞ」


 周りを見渡せばスマホを構えて撮影を始めている。


 皆思い思いにカメラを構え、優奈ゆうなの痴態をフレームに……。


 あれ? よく見るとギャラリーが全部女だらけになっている。


 なるほど。俺は汁男優って好きじゃないから女ギャラリーはありがたい。正直そっちなら興奮するぜ。


 しかも撮影してるのは俺達じゃなくて主人公だ。

 奴は茫然自失となって立ち尽くし、優奈ゆうなの姿を食い入るように見つめている。


 俺は安心して優奈ゆうなとのラブラブを続けた。


「どうだ優奈ゆうな。触ってほしいか?」

「触ってほしいです♡ 先輩と気持ち良くなりたい♡」

「いいぜ優奈ゆうな。幼馴染みに見せつけてやれよ。見せつけて、お前が俺にメロメロだって所を証明してみろ」

「はーい。私、霧島先輩に夢中です♡」


「ふざけるなっ、ふざけるなよっ! なんだよそれはっ!」


 主人公が大騒ぎをしている。しかし妖精さんの力なのかその場からは動こうとしない。


 それどころか優奈ゆうなの痴態を見て興奮しているではないか。


「ち、違うッ、優奈ゆうなはそんな女じゃないっ! 優奈ゆうなは……優奈ゆうなはっ……」


「違うよ、私は先輩にこんな風に扱われて喜んでる変態なの。あんたの理想の優奈ゆうなは、妄想の産物でどこにもいないから」


「さーて、そろそろ優奈ゆうなには処女を捧げてもらおうか」


 こんなはっちゃけた状況でもあれやこれやできてしまうなんて。なんちゅう俺好みの世界なんだ。


「ふざけるなよっ! ふざけるなッ! くそっ! なんで動けないんだっ! なんで俺は動かないんだっ」


 まさか主人公、寝取られものよろしくヒロインが奪われてる所を見て目覚める展開なのか? 


 勘弁しておくれよ……。


 まあいい。とにかく優奈ゆうなの処女はここでいただいてしまおう。


「それより本当にいいのか優奈ゆうな? 大事な初めてがこんなんでよ?」

「いいんです。ラクトにも、いい加減私達から卒業してもらう良い機会ですから。 それに、私、凄く興奮してるんです。ずっとずっと良い子ちゃんだったから、悪い子になって、先輩好みのエッチな女の子になりたいんです♡」


「いいぜ優奈ゆうな。お前の心意気に応えようじゃないか」


 妖精さんに解放された優奈ゆうなの本音ってことか。


 ここまでされちゃ俺の価値観なんて押し付けるべきじゃない。

 優奈ゆうなが心底そうして欲しいってんなら、応えてやらなきゃ男がすたるってもんよ。


「それじゃあいくぞ優奈ゆうな。幼馴染みの目の前で、お前の大好きな男に処女を捧げてみろよ」

「はーい♡ ラクト、私はね、年上で、たくましくて、グイグイ引っ張ってくれるような先輩みたいな人が好みなのっ! あんたなんか箸にも棒にもかからないんだから、さっさと諦めて他の人と幸せになってね。でもそのひねくれた性格治さないと、当分彼女なんかできないだろうけどね」


「ふざけるなっ、ふざけるなよっ! なんだよそれはっ!」


 主人公が大騒ぎをしている。しかし妖精さんの力なのかその場からは動こうとしない。


 それどころか優奈ゆうなの痴態を見て分身さんをおっ立ててズボンを押し上げているではないか。


 なるほど、確かに普通サイズだ。霧島が相当デカいから、あれじゃ清楚ビッチは満足しないだろうな。


 セックスはサイズが全てじゃないから一概には言えんけど。


 ちなみに前世の俺と比べると、もう少しは大きさがありそうだ。よかったな主人公。完全な短小じゃないぞ。


 それでも女を満足させることはできるから、本当にサイズ差って関係ないぞ。


 アヘ顔よがらせ潮吹大噴火なんてお手の物だ。サイズがないなら道具を使うなりなんなりと、いくらでも方法はある。


 物理的に届かないなら向こうから奥の奥を降ろしてもらえばいい。


 ちゃんと手順を踏めば子宮は降りてこっちに歩み寄ってくれる。


 それでサイズ差なんていくらでもカバーできるのだ。


 セックスは数だ。テクニックなんて場数と自発的な向上心でいくらでも上手くなれる。知識を集めて実践すれば誰だってテクニシャンになれるんだ。


 分身さんのデカさなんてその後に付いてくるおまけ条件の一つに過ぎん。経験が浅くてもお前にはこれからがあるじゃないか。


「おいこら優奈ゆうな、べらべら喋ってないでさっさとしろ」

「はい先輩♡ 優奈ゆうなは、先輩の言うことならなんでも聞きますから、だから優奈ゆうなにいっぱい仕込んでください♡ 初音はつねちゃんや彩葉いろはちゃん、小雪こゆき舞佳まいかちゃんと一緒に、私も良い女になりますからぁ♡」


 主人公はその言葉を聞いてガタガタと震え始める。

 しかし相反するように興奮している。


 よく見ると清楚ビッチが後ろから抱きしめて主人公をイジイジしている。


 ギャラリーからは「うわぁ、カワイイサイズゥ」「皮かぶってちっちゃ~い」とか言われてる。哀れだ。

 経験人数3桁の清楚ビッチに言わせれば、別にそこまでじゃないらしいのにな。


 アイツもよくやるな。もしかして妖精さんの手先なのかしら?


 まあいい。


 しかし、スキルの効果とはいえメインヒロインの初めてがこれで終わりじゃあんまりじゃないのか?


 俺だって憧れのメインヒロインが変態痴女の露出性癖じゃちょっとアレだし。


 妖精さんもう少しなんとかなりませんかねぇ。


『しょうがないですねぇ。そんじゃあこれが終わったら亮二さんにボーナスあげちゃう! 優奈ゆうなさんの初体験をやり直しさせちゃいましょう☆』


 助かった。っていうか、妖精さんって会話できたんだな。


 俺は安心して優奈ゆうなの願望を叶えてあげることにした。

――――――――

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?