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第51話◇溜め込んでいた不満、大爆発◇

 衆人環視の女子ギャラリー達の前で公開ラブラブ。


 というわけで俺は優奈ゆうなとのラブラブ初体験を夢見ていた訳だが、どういう訳かそこに主人公に見せつける公開寝取りプレイをするハメになってしまったとは、なんとも因果な話である。



 『花咲く季節と桜色の乙女』におけるメインヒロインである佐藤優奈ゆうな


 俺の一番のお気に入りヒロインは初音はつねであるが、実は一番薄い本でお世話になったのは優奈ゆうなであったりする。


 やはりメインヒロインというだけあって薄い本の数は圧倒的に多い。


 初音はつねがクソエロボディをしているので薄い本界隈では大人気のズリネタであるが、優奈ゆうなはそれ以上に絶対数が多いんだ。


 俺は寝取られや陵辱ものではヌケなかったので、やはり純愛ものを使いたかった。

 そうすると見つかるのはやはり優奈ゆうなの方が確率が高い。



 主人公視点の寝取られは無理だが、俺は主人公が嫌いなので間男視点の寝取りものならなんとかイケた。


 それも無理やり系とかじゃなく、主人公がこの世界と同じか、それ以上にどうしようもないクズであり、寝取られた方がヒロインは幸せになれる展開であることが好ましい。


 まさか自分がその竿役をすることになろうとは夢にも思わなかったがな。


 ひょっとして妖精さん、俺にゲームのバッドエンドを再現させたいのだろうか?


 そういえば、霧島が関わるバッドエンドでは、ヒロインが「不幸になった」とは明言されていない。


 一枚絵で登場するときも、霧島は目が影に隠れてて表情は見えないし(寝取りモノに出てくるチャラ男がよくなってるアレ)、口元も笑ってはいるが、邪悪に歪んでいるかといえばそういう訳でもない。


 そしてヒロインの表情は後ろ姿だけで表示されないのだ。

 どんな表情をしているのか。

 全てはプレイヤーの想像力に任されている。


 霧島は登場の仕方が不穏なだけで、ヒロイン達を幸せにしたのか不幸にしたかは分からないのである。


 まさしく「シュレリンガーの霧島」とでも言おうか。


 よくよく考えてみれば、ゲーム内で霧島が登場するエンディングを『バッドエンド』と定義づけているのはプレイヤーの印象であり、ゲーム内ではマルチエンドの一つに過ぎなかった。


 そうだ、なんで今まで気が付かなかったのか。


 『花咲く季節と桜色の乙女』には、ゲーム内で「ヒロインが物語から退場する」という描写はあっても、それを「バッドエンド」とはひと言も言っていない。


 確かに死亡を暗喩しているエンドははっきりバッドだろうが、霧島が関わるエンディングに関しては「ヒロインが霧島と一緒にいる」という状態を描写したに過ぎないからだ。


 だがまあ、この世界に転生してきて、元の霧島の感情や性格を考えてみると、やはり碌でもない未来だったのかなとも思う。


 実際こいつはレイプまがいに女をハメて快楽漬けにしたりしてたみたいだし。


「さあいくぞ優奈ゆうな。お前の晴れ姿、幼馴染みにたっぷり見せつけてやれ」

「はい、先輩の命令ならよろこんで。ほらラクト、見せてあげるからしっかり見なさいッ! あんたが惚れた女が、あんたが大嫌いな先輩に自分から喜んで捧げる姿、特等席で拝めるんだからねっ!」


 なんとも哀れに過ぎる主人公よ。 だが、それと同時に少しばかりいい気味だと思ってしまう自分がいる。


 アイツがもう少し、俺がこんなことをして申し訳ないと思うような人間だったら、今みたいな事態にはなっていなかったかもしれないのだ。


 まあほとんど俺と妖精さんがきっかけであるが、それでも他にやりようはあったはずだ。


 何が言いたいのかというと、俺と妖精さんは『要因』ではあっても『原因』ではない、ということだ。


 どっちにしてもヒロインは全員俺の女にしていただろうから、ゲームの未来に横槍を入れたお詫びにマシな未来を用意してやりたかった。


「お前ほっといたらそのうち俺にレイプされてたぞっ。よかったな、俺がお前のこと恋人にしたいって思えてよ」

「私、先輩にならレイプされても、喜んでたかも。でも先輩は優しいから、きっと私に酷い事なんてしないですよね?」

「いーやしてたね。頭の中じゃお前のこと何度も何度も妄想してたからな。お前の姿学園の中で見かける度に何度も拉致ってやろうかって思ってたぜッ」


 もちろんそれは薄い本での話だ。だが、霧島亮二の記憶を辿れば、本当に優奈ゆうなのことをいかがわしい目で見ていたことは確かなようだ。


 あのエンディングの後の展開が想像通りになっていてもおかしくなかった。


 ひょっとして妖精さんは、それを防ぎたかったのだろうか?


「先輩、そんなこと思ってたんですか?」

「そうだぜ優奈ゆうな。だけど俺は好きな女は幸せにしたいからな。同じ快楽漬けならラブラブセックスの方が気持ち良いだろ、優奈ゆうなッ」


「嬉しいです先輩。ほら見なよラクトッ。あんたじゃこんな風に私を幸せにできないでしょっ」


優奈ゆうな、お前もしかして好摩に相当ストレスが溜まってたんじゃないか?」


 俺がそういった瞬間、優奈の口から吐き出される怒濤の愚痴の連続に驚愕させられることになる。


「そうです! 幼馴染みだからって、デリカシーはないし、口は悪いし、下品だし、頭は悪いし、学習しないしっ!」


「いつまで経っても自分で起きないしッ、せっかく作った朝ご飯も代わり映えしないからたまにはパンが食いたいだの文句ばっかりっ! 私はアンタの家政婦じゃないってのっ! 私が善意でしてることをあんたはいつもいつもっ!」


「幼馴染みだからって、なんでも遠慮しなくていいって訳じゃないのよっ! 一定のラインくらいわきまえなさいよっ! あんたと夫婦とか言われて、恥ずかしかったんだからぁ!」


 優奈ゆうなの攻略が難しい筈だ。内側にこれだけのストレスを溜めていた状態から好感度を逆転させなければならないのだから。


 だけどそれは同時に間違いでもある。人間の心ってのは好きと嫌いの区別ってのが案外いい加減にできているものだ。


「そりゃぁさっ! 私が勝手にやってたことだから、筋違いかもしれないけど! 感謝のひと言くらいあってもいいじゃないっ! それをあんたはっ、いつもしてもらって当たり前みたいにっ! 亭主関白気取ってるんですかってのよ!」


 更に優奈ゆうなの激白は幼馴染み達との関係性に及んでいく。


小雪こゆきの気持ちにいつまで経っても気が付かないっ! 舞佳まいかちゃんの愛情表現にも下品に返すし、初音はつねちゃんの気持ちにも全然向き合わないっ!」


「適当に流してなあなあにしてっ、皆アンタのことが好きだったのにっ! 私がどんな気持ちで皆のこと見守ってたと思ってるのよっ!」


 今まで何とも思っていなかった日常が、フとしたきっかけで好きだと気が付くことも、嫌いだと思っていた感情が好きの裏返しであったり。


 逆に今までずっと好きだったものが、何かのきっかけで嫌いに反転したりと。


 ゲームの中では、仲の良い幼馴染みという枠組の中で育てた関係から発展すれば、今言った優奈ゆうなの不満は甘酸っぱい青春の思い出になっていた可能性もある。


 優奈ゆうなが全キャラの中で圧倒的に攻略が難しかったのは、他三人の気持ちを知っていたからこそなのだ。


「私、ここにきてようやく分かったっ! あんたは幼馴染み達に囲まれたハーレムに酔ってただけなんだっ! みんなはあんたの快楽の道具じゃないのにっ!」


「もううんざりなのよっ! 先輩を好きになって、もう我慢しなくていいって気が付いたから!」


 優奈は吐き出しきったと言わんばかりに、もう主人公の方は見ていなかった。


「先輩大好きッ♡ もう、幼馴染み辞めていいって思ったら、凄くスッキリしてるんです」


 自分を好きだといった男に対して、寝取られている姿を見せつけるとは、優奈ゆうなも大分凄い性格をしていたということか。


 いや、そうじゃなくて、それだけ幼馴染みに対して強いストレスを感じて腹に据えかねる思いだったのだろうな。


 哀れ主人公。んで、その主人公はといえば、まったく動く事ができないまま変態痴女と化した清楚ビッチにいじくり回されていた。


 涙とヨダレを流しながら、その場に立ち尽くしている。


 完全に玩具にされているな。あのままでは壊れてしまうので後で注意しておこう。


 アイツの玩具にターゲティングされてしまうとあまりにも不憫だ。


 まあずっと快楽は与えられ続けられるのである意味幸せだろうか。でもあいつは飽きたら捨てるしなぁ。


「しょうがないな優奈ゆうなは。とんでもない願望の持ち主だったんだな。流石は初音はつねの……っと、まあいい」

「わたしぃ、初音はつねちゃんの、なんですか?」

「気にするな。俺を好きになる女は皆似たような性癖の持ち主ってだけだ」

「あははぁ、嬉しいです。私、みんなと一緒に先輩に好きになってもらえて、嬉しい♡」

「いいぞ優奈ゆうな。だが俺は理想が高いんだ。お前が俺に、心を込めて尽くせば、ちゃんと愛してやるからなっ!」

「頑張ります! わたし、先輩の女として相応しくなりますから、みんなといっしょにいっぱい可愛がってください」


 彼女の望む強引で傲慢な男の言い方を意識してやれば、その喜びがスキルを通してビンビン伝わってくる。


 優奈ゆうなの願望も大分倒錯しているな。

 だがエロ同人スキルは認識や常識を変えることはできても、その人本人の願望や本質を変える事はできない。


 これは優奈ゆうな本人が本心から叫んでいる事だ。


「先輩♡ 私の初恋なんです♡ 初恋が先輩みたいな素敵な男性で、しかもそれが叶っちゃって、みんなと一緒に愛してもらえるなんて、私、世界で一番幸せな女の子です」




「もう……やめてくれ……優奈ゆうな、もうやめて……」


 主人公の悲痛な嘆きが耳に届く。流石にこれ以上は良心が痛むので、そろそろアイツには退場してもらおう。


 妖精さんよ、もういいだろ? そろそろ主人公を解放してやってくれ。


『はいはーい♪ 十分に脳破壊ザマァ展開は堪能しましたのでぇ、あとは清楚ビッチさんにたっぷり愛してもらって物語から退場してもらいましょう♡』


 ひょっとして妖精さん、主人公に恨みでもあったのだろうか?


 俺をこの世界に転生させた目的は、主人公の排除だったり?


『後はこっちにお任せを。お二人でラブラブ初体験のやり直してしてくださいねー♡』


 と言ったところで、俺達は妖精さんパワーでラブホテルの一室にテレポーテーションしていた。


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