幼稚園の頃から同じ環境で生まれ育った幼馴染み、佐藤
家が隣同士という事もあり、常に距離の近かった二人はよく一緒に遊んだりもした。
学園の美少女四天王と呼ばれる現在に通じるように、幼稚園の頃から、その美少女ぶりは近所でも園内でも評判だった。
そんな美少女の隣にいつもいる男。
それだけで彼は得意げになっていく。
それからしばらくして、一つ年上の
小学校に上がる頃には
仲の良い幼馴染み達と過ごす時間は心地良く、それが小さい頃から当たり前だった彼。
主人公は、自分が恵まれた環境にいることを心のどこかで自覚しつつ、無意識の優越感に浸っていたのである。
彼にとって幸いだったのは、
男に免疫がないから、唯一まともに接することができる自分が特別な存在であり、慕ってくれる女の子に囲まれた環境にいる自分は他者より恵まれた人間であると思い込んでいる。
彼に悪意は無い。だからこそ
それが当たり前であり、無意識にそれがずっと続いていく事だと思い込んでいた。
交友関係において浮いた存在だった主人公にとって、幼馴染みハーレムはまさしく彼の楽園だったのだ。
だが、それ故に、彼は自分が害悪であることに気が付かなかった。
悪意無き悪。自覚なき悪意。この世でもっとも
美少女達に囲まれ、慕われる自分。そんな自分は他人とは違う。
主人公は学園の中で非常に浮いた存在だった。
特に男子生徒からは
付き合いのある友人はいる。
ゲーム内において親友ポジションとなるクラスメイトもいる。
だがその内情は、なんとかして彼の周りの美少女達とお近づきになり、あわよくば
そのことはゲーム内のシナリオにおいても決して語られていることはないのだが、バッドエンディングでシナリオ内からヒロインが退場する要因の一つになっている。
知らぬは主人公ばかり。主人公にとって、この楽園は永遠に続くものだと思っている。
しかし、そんなものは幻覚であることを知らしめるように、彼の楽園は脆くも崩れ去った。たった一人の男よって。
それも、ほんの1ヶ月にも満たない間にだ。
そう、霧島亮二が転生者としての自覚を持ったのが4月の半ば頃。
そして今は5月の頭。
つまり亮二は半月少々の間に、彼の楽園を崩壊させてしまった。
「
「可哀想な
「
主人公は先日の
目の前でみた光景は紛れもない現実であったが、妖精の力によって記憶からは消去されている。
しかし、
数日の間に主人公の頬はこけ、目の下には強烈な
眠ろうとしても霧島と
ここ数日は毎日のようにその悪夢にうなされ、眠れない日々が続いていた。
そんな彼を癒やしたのが霧島に清楚ビッチと表された童貞好きの狡猾女、山本
悪夢のような光景にうなされて精神を疲弊された主人公を取り込み、癒やしと称して自分に依存させていた。
弱々しく泣きじゃくる少年が自分の体に溺れていく様はまさしく性悪女にとってこれ以上ない玩具を手に入れた愉悦を感じさせた。
(仔犬みたいに甘えちゃって♡ 捨てられる時どんな顔するのかしら。想像するだけでゾクゾクしちゃう♡)
自分に徹底的に依存させ、玩具としてもてあそび、最後はゴミのように捨てる。
その時するであろう彼の絶望に引きつった顔を想像する
(どうやって調教しようかなぁ。捨てられそうになった時に必死にすがる姿を想像するだけで濡れてきちゃう♡)
「ほーら、今日もいっぱい甘えていいんだぞ♡ 楽人君には私がいるじゃない。小便臭い幼馴染みのことなんて忘れちゃいなさい」
「そうですよね。
(そこまでいってねぇよ。仮にも数日前まで好きだった女をよくそこまでディスれるな)
先日まで好きだった筈の女に容赦のない
男のあれこれにおいては
そんな彼女にとって、
(自分を好きになる人間しか好きじゃないんだろうなコイツ)
それは人間関係においては最悪の部類である『無意識に相手を見下している』からこそ出てくる発想だ。
実際に主人公は美少女幼馴染みに囲まれる自分は特別な存在であり、他の有象無象とは違うのだと、無意識に周りを見下していたことは事実であった。
それこそが彼を傲慢な人間に増長させてしまった要因でもある。
(典型的に自分だけで世界の全部が完結してるタイプだな)
だが、人間は自分を振り返ることで成長する生き物である。
この半月でそれを理解するチャンスはいくらでもあったにも関わらず、彼はそれをしようとしなかった。
選択肢にも上がらなかった。
そんな彼が一つのきっかけでハーレムを崩壊させ、癇癪を起こして幼馴染み達を呆れさせたのは自明の理である。
「
「ちょ、ちょっと、痛いってばっ」
主人公は心に空いた穴を埋めるように
(ああイッテぇなクソが。何度やっても下ッッッッ手くそだなぁ。こっちの話聞きゃぁしない。何度導いても自分が気持ち良くなることしか考えていない。これじゃあテクニック育てるのも無理だな)
がむしゃらに自分を求める主人公の猿具合に
彼はどれだけ分からせようとしても人の話を聞かなかった。
まるで命令するなと言わんばかりに乱暴な行為に及び、何度たしなめても理解しようとしない。
次第に呆れ返った絵美の心には、最初のうちには存在していた「童貞を可愛がるお姉さん的気持ち」が消え失せ、聞き分けのないペットにイラつく飼い主のような気持ちにシフトさせていく。
(あ~あ、もういいや。予定変更しよ)
絵美は夢中で体を求めてくる主人公の体を押さえ込み、衣服をヒモ代わりにして縛り付けた。
「うわっ、え、絵美さん何を……」
「まったく何回言ってもお上手にならないんだからぁ♡ もういいわ。今日から私があなたを躾けてあげる♡」
「し、しつけ……な、何をいってっ」
パシンッ
「イテッ、な、なにを……」
「反抗的な目だこと。心配しなくても絶対離れられないようにしてあげるからね♡ まずは首輪でもつけよっか♡」
「く、首輪って。冗談は」
バシンッ!
「いてぇっ」
「口答えするな餓鬼ッ」
「ひっ」
彼にとって女に虐げられるのは何よりも屈辱である。
その屈辱が抗えない快楽として彼の心を麻薬のように蝕んでいくのだが、それは語られることはないだろう。
これまでのツケが回ってきたかのように、調教される毎日が始まろうとしているのだが、傲慢という麻薬に溺れ続けてきた主人公には分かろうはずもなかった。