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第59話◇ギャップキャラの桜結美ちゃん◇


「こんにちわ」

「あ、はい。何か御用ですか?」


 早速声を掛けることにする。猫のようなつり上がった目はほんのりとした警戒心を含んでいるように見えた。


初音はつね……桃園さんに用があってきたんだ。どこにいるか分かるかな?」


 本当は黙って探しにいけばいいのだが、桜結美さゆみとの関係性を築くために話しかけておこう。


「あ、はい。初音はつね先輩でしたら……えっと、すみません、先輩? は、桃園先輩とどのような」


「ああごめんごめん。見た目が怖いから警戒しちゃうよね」


「い、いえ、そのようなことは……。すみません」


 やはり俺の見た目が厳ついので警戒しているらしい。彼女は重度の初音はつねラブな女の子であり、彼女に近づく男には例外なく敵意を剥き出しにする。


 だがその反面、非常に真面目で素直な女の子なので、打ち解ける事ができれば攻略はそこまで難しくないだろう。


 そして俺には【警戒心解除】のスキルがある。パスが繋がってないと効きが悪いという欠点があるが、じっくり話し込んでいけば確実に攻略できる。


「俺は霧島亮二。初音はつねの同級生だよ。一応彼氏でもある」


「そ、そうなんですかっ。は、初音はつね先輩に彼氏って初耳ですっ」


「まあつい最近の話だしね」


 ますます警戒心を強めたようだ。まるで威嚇する猫だな。


 ちびっこいので本当に猫っぽくて可愛い。確か公式のプロフィールでは152㎝だった筈。


 そして実は隠れ巨乳だ。


「なんか眼がいやらしいです」


「え、そ、そうかい? もともとこんな目付きなんだ。申し訳ないね」


「い、いえその。こちらこそすみません。失礼なことを」


 イカンイカン。ついついスケベな視線を送ってしまったらしい。

 まだ慌ててはいけない。クールになれ俺。


「じゃあお互いさまってことで一つ」


「先輩って、面白い方なんですね」


 お、少し警戒心が解けた。スキルの効果か、あるいは彼女の素直さ故か。両方だろうな。


「あ、亮二さん」


 俺が桜結美さゆみと話し込んでいると、初音はつねが本棚の向こうからひょっこりと顔を出す。


初音はつね、仕事中に悪いな。話がてら手伝うよ」


「ありがとうございます♡」


 とりあえず目的を伝える為に初音はつねと話さないといけないのだが、図書室の為にあまり大声は出せない。


 だが初音はつねは俺と桜結美さゆみを見比べ、スッと目付きを変えながらトコトコとこちらに近づいてきた。


「さゆちゃん、こちら霧島亮二さん。私の……ふふ♪」


「せ、先輩ッ」


「あ、さゆちゃん、前に言ってた猫カフェ、亮二さんも一緒にいいかな?」


「へっ⁉ そ、それは」


 何故だか初音はつねは猫カフェに行く話に俺を巻き込もうとしている。


 その視線の意味が心の中に伝わり、即座に彼女のアドリブに乗っかる事にした。


「ああ、実は猫に目がなくてね。二人が猫カフェに行くって話しを聞いて便乗させてもらえないかと思ってさ。行きたい気持ちはあるんだけど、この見た目だから恥ずかしくて」


「……な、なるほど。霧島先輩って、結構ギャップのある方なんですね」


「お恥ずかしい限りだ」


「い、いえいえっ。猫好きに悪い人はいません。初音はつね先輩とご一緒なら是非。むしろ私が邪魔になりませんか?」


「そんな事はない。猫仲間が増えるのは喜ばしい事だ。一緒に来てくれないか」


「わ、分かりました」


 なんて話をして、初音はつねのアシストによる吊り出しに成功する。


◇◇◇


「あんな感じでよかったですか?」


「ナイスアドリブだ初音はつね。しかしよく分かったな」


「さゆちゃん可愛いですから。それに話しかける時の亮二さん、すごくさゆちゃんが欲しそうな顔してましたし」


「そんな顔してたのか」


「はい。それに、私もさゆちゃんがほしいです♡」


 予想外だった初音はつねのアドリブアシスト。もの凄い適応力と判断力だ。


 そうやって自分で考えて行動するあたりが彼女の気質なのだろうな。やはり優奈ゆうなも似たような事をするので元々姉妹設定の名残がこんな所でも見える。


 恐らく以心伝心のスキルが何らかの影響を及ぼしているのだろう。


「お察しの通り、猫田桜結美さゆみがほしい。何度かデートを重ねてものにするから手伝ってくれ」


「かしこまりました、ご主人様♡」


「こらこら、聞こえちゃうぞ」


「大丈夫です。ここは壁になって小声なら音は届きません」


「なるほど、音は届かない、ね」


 蠱惑的な瞳が何かを訴えている。奉仕精神に溢れている初音はつねだが、同時に非常に貪欲でもある。

 内側にマグマのように溜め込んだ強い性欲。


 これは最近発見した新しい一面だ。


「優秀な奴隷にはご褒美をくれてやらないとな」


「♡」


 バレるかバレないかのギリギリライン。ねっとりとした瞳を向ける初音はつねは、水晶の中央にたたえたハートマークを爛々と点滅させていた。


「声は抑えておけよ」


「はい、♡」


 スカートの中に手を突っ込み、お尻をモミモミしてやると、息を殺した初音はつねが嬉しそうに体を跳ねる。


 初音はつねへのご褒美は図書館で秘密の時間。

 たっぷりとねっとりと、すぐそこに誰かがいる状態で行なうギリギリの行為は激しい興奮を呼んだのである。


「亮二さん、音が」


「しっかり押さえておけ。桜結美さゆみちゃんにバレたら大変だぞ」


「ふゎい♡」


 静寂に包まれた図書室の片隅。まだすぐそこに人がおり、バレたら初音はつねの立場が危うくなるスリリングな状況だ。


 それはまるでご褒美をおねだりしないのに声に出すことをためらう恥じらいのように。


「亮二さん、ご褒美に、匂い嗅がせていただけませんか?」


「そんなのでいいのか?」


「はい♡ 私にとってはご奉仕が最大のご褒美です、ご主人様♡」


 ウィスパーボイスで囁きながら、音を立てないようにねっとりとした声を出す。


 【以心伝心】で心が繋がっているので彼女の考えている事はダイレクトに伝わってくる。


 そうでなくとも初音はつねの表情はその気持ちを雄弁に語っていた。


 小さく囁く初音はつねの呟きは、周りに配慮してなのか大きくない。


 しかし妖精さんの力なのか聴力も強化されてはっきり聞こえてくる。


 俺に傅くことが喜びである初音はつね。それでいてビッチではなく、恥じらいを捨てずに真っ赤になっているところが可愛くて仕方ないではないか。


 だがぶつけると激しい音を出して流石にバレる。



 静寂に包まれた図書室の片隅で、ほんの数メートル向こう側にいる猫田桜結美さゆみに聞こえないようにたっぷりとご褒美を与えてやった。


「せんぱーい。さっきからなんか変な音がしませんか~?」


「ッ⁉」


 桜結美さゆみの呼ぶ声に慌てて初音はつねの衣服を整える。


「先輩?」


「あ……さゆちゃん。どうしたの?」


「い、いえ。片付けにしては遅いから心配で。何かあったんですか?」


「ううん。なんでもない。心配してくれてありがとね」


「⁉ せ、せんぱい?」


 何やら桜結美さゆみは顔を真っ赤にしてモジモジし始めた。

 流石にあれだけ濃厚なセックスをすればバレるかな。


 認識改変によって細工することもできるが、ちょっと面白い事になってきたのでこのまま色々やってみよう。


「あ、あの、ここで何を……? 霧島先輩?」


「ん、なんでもないんだよ猫田さん」


 俺は彼女の肩にポンと手を置き、スキルを発動させてセックスの残り香に興奮する種を植え付けてみた。


 そして俺と初音はつねの顔を見る度にその香りを思い出し、体が熱くなるように。


 あ、桜結美さゆみとパスが繋がった。上手く行ったぜ。


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