「ふにゃぁ♪ 可愛かったですねぇ」
「ホントだね♪」
猫カフェは案外悪くなかったな。動物好きなつもりもなかったのだが……。
「霧島先輩が猫ちゃんにあんなにモテモテなのはちょっと嫉妬しちゃいましたよ」
「俺も予想外だったよ」
どういうわけかカフェ内の猫ちゃん達がこぞって俺の元に集まってしまい、猫カフェ内は俺の独壇場ハーレムとなってしまった。
ただし猫相手だが。
「猫にモテるというのも案外悪くないものだ」
「ズルいですよぉ」
これも妖精さんのスキルのおかげなんだろうか?
『いいえ~。亮二さん本来の性質ですよー』
違うんかいッ。っていうかたまに話しかけてくるな妖精さん。
久しぶりにラッキーちゃーんす☆でも起こしてくれよ。
……
ちっ。ダメか。
いや、油断できんぞ。妖精さんってば俺をドッキリにかけるの大好きっぽいし、油断している所にどかーんっと大声を出すことも考えられる。
「それじゃあさゆちゃん、今日は私の家で夕食なんてどう?」
「え、いいんですか?」
「うん。今日はシチューを作る予定だから、よかったら食べに来て」
「いきますーっ!」
そうして
「ああっ、霧島先輩ッ! シチューのお肉入れすぎですよっ。私の分がなくなるじゃないですかっ」
「バカめっ。
「公序良俗に反する行いですねっ!
「言葉が矛盾しているのに気が付かんのかね後輩っ。よかろうっ。肉はくれてやる。だが俺は
「な、なんという卑劣なッ! くっ、肉よりも貴重な
「ふふん。甘いな後輩。肉も
「お、おのれぇ。やはりあなたは信用なりませんっ! 私は
「ならばこうしようっ。初音が盛り付けたシチューを俺が君に食べさせてあげようじゃないか。これで妥協したまえっ」
「妥協ラインになってないって気が付きませんかねぇそれっ。どんだけ自分の価値が高いと思ってるんですかっ」
俺と
そんなこんなで食事を終え、食後のティータイムで引き続き仲睦まじい口げんかを続け、時間は夜の七時を越えようとしていた。
「あ、そろそろ帰らなくっちゃ。お二人とも、今日は凄く楽しかったです。ありがとうございました」
「なに。俺も楽しかったよ。駅まで送っていこう。もう少しお喋りしたいしな」
「じゃあ私は後片づけしておくね」
「頼むよ
「い、いえ。一人で帰れますよ」
「女の子を夜に歩かせる訳にはいかないな」
「これでも剣道有段者ですから。痴漢なんかに負けません」
「それでも君は女の子だからな。男にはエスコートする義務がある」
「せ、先輩って不良なのかおふざけなのか紳士なのか、訳わかんないですね」
「女の子に優しいだけさ」
「そういうのスケコマシっていうのでは?」
「ははは、否定はしない」
「しないんですか?」
「本当のことだからな」
「あうぅ……」
パスがつながり、こうして会話をするだけでどんどん俺との距離が近づいている。
……
「それじゃあ
「うん、また学園でね」
「はい」
「それじゃあ駅まで送っていこう」
今日はエッチな展開にはならなかったな。
まあ慌てる事はない。美砂との第一イベントまではまだ時間がある。
「先輩って本当によく分からない人ですよね。不良なのに真面目に学園来てるっぽいし、猫にはモテるし、
「ま、人生いろいろあるのさ。バカばっかりやってた過去を反省して真面目に生きていくって決めたんだよ」
「ふーん。そんなもんですか」
駅に到着する頃には
明日辺り図書室でハメてやるのもいいかもしれない。
そろそろ決めてやるぜ。覚悟しておけよ
「それじゃあ先輩。今日はありがとうございました」
「ああ。また遊びに行こうぜ」
「はいっ!」
手を振る
妖精さんは結局あれからまったく喋らなかったが、まあ気まぐれな奴だしこういう事もあるだろう。
『と油断したところで時限式ラッキーちゃーんす☆!! 明日の図書館でいい事が起こりまーすっ。楽しみにしててくださいねーっ!』
俺がずっこけたのは言うまでもない。妖精さんめ。不意打ちにもほどがあるだろ。
◇◇◇
不意打ちで訪れた妖精さんのラッキーちゃーんす☆。
一体どんな事が起こるのか。
変化は、次の日に学園に登校する時に現われたのである。
「なんじゃこりゃ……」
「あ、おはよう亮君♡」
「おはようございます亮二さん」
「亮二お兄ちゃん、おはよう」
「亮二く~ん、おはようございます!」
「おはようございます亮二先輩♡」
学園に到着した瞬間、その変化は訪れた。
「お前ら、その耳と尻尾は……?」
「え? 何か変ですか?」
妖精さんパワー恐るべし。
ケモミミ、尻尾。犬、猫、キツネ、多種多様な獣娘達。
学園はいつの間にかファンタジー学園に変貌していた。
女子学生全員にケモミミが生えていたのである。