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第62話◇素直でカワイイ後輩◇



「ふにゃぁ♪ 可愛かったですねぇ」

「ホントだね♪」


 猫カフェは案外悪くなかったな。動物好きなつもりもなかったのだが……。


「霧島先輩が猫ちゃんにあんなにモテモテなのはちょっと嫉妬しちゃいましたよ」

「俺も予想外だったよ」


 どういうわけかカフェ内の猫ちゃん達がこぞって俺の元に集まってしまい、猫カフェ内は俺の独壇場ハーレムとなってしまった。


 ただし猫相手だが。


「猫にモテるというのも案外悪くないものだ」

「ズルいですよぉ」


 これも妖精さんのスキルのおかげなんだろうか?


『いいえ~。亮二さん本来の性質ですよー』


 違うんかいッ。っていうかたまに話しかけてくるな妖精さん。

 久しぶりにラッキーちゃーんす☆でも起こしてくれよ。


 初音はつね桜結美さゆみの飛びきりエッチな姿見せてやるからよ。


……


 ちっ。ダメか。


 いや、油断できんぞ。妖精さんってば俺をドッキリにかけるの大好きっぽいし、油断している所にどかーんっと大声を出すことも考えられる。


「それじゃあさゆちゃん、今日は私の家で夕食なんてどう?」

「え、いいんですか?」

「うん。今日はシチューを作る予定だから、よかったら食べに来て」

「いきますーっ!」


 そうして初音はつねの家で夕食会を開くことになり、俺達は更に親睦を深めていった。


 初音はつねの作ったシチューは絶品で、お替わりを桜結美さゆみと取り合いをする場面も起こった。


「ああっ、霧島先輩ッ! シチューのお肉入れすぎですよっ。私の分がなくなるじゃないですかっ」

「バカめっ。初音はつねのシチューは俺に独占権があるのだよっ。初音はつねも彼氏である俺を優先して肉をいれてくれるに決まっておろうが」

「公序良俗に反する行いですねっ! 初音はつね先輩のシチューは全人類で平等に分けるべきですっ。取り分け私は可愛がっている後輩ですからぁ! 優先順位が高くなるのは必定っ!」

「言葉が矛盾しているのに気が付かんのかね後輩っ。よかろうっ。肉はくれてやる。だが俺は初音はつねに食べさせてもらう特権を発動しよう」

「な、なんという卑劣なッ! くっ、肉よりも貴重な初音はつね先輩の『はい、あーん♡』の強権を発動するとは。後生ですっ。肉は諦めますので先輩の食べさせてもらえる権利を譲ってくださいませっ」

「ふふん。甘いな後輩。肉も初音はつねのご奉仕も元々俺のものだ。そなたには始めから交渉する権利すらないのだよ」

「お、おのれぇ。やはりあなたは信用なりませんっ! 私は初音はつね先輩との交際は認めませんよっ」


「ならばこうしようっ。初音が盛り付けたシチューを俺が君に食べさせてあげようじゃないか。これで妥協したまえっ」

「妥協ラインになってないって気が付きませんかねぇそれっ。どんだけ自分の価値が高いと思ってるんですかっ」


 俺と桜結美さゆみはいつの間にか喧嘩仲間のように言い合いを始めていた。


 初音はつねはそんな俺達をニコニコと見守っており、俺と彼女が仲良くなったのがよほど嬉しいようだ。


 そんなこんなで食事を終え、食後のティータイムで引き続き仲睦まじい口げんかを続け、時間は夜の七時を越えようとしていた。


「あ、そろそろ帰らなくっちゃ。お二人とも、今日は凄く楽しかったです。ありがとうございました」

「なに。俺も楽しかったよ。駅まで送っていこう。もう少しお喋りしたいしな」

「じゃあ私は後片づけしておくね」

「頼むよ初音はつね。それじゃあ行こうか」

「い、いえ。一人で帰れますよ」

「女の子を夜に歩かせる訳にはいかないな」

「これでも剣道有段者ですから。痴漢なんかに負けません」

「それでも君は女の子だからな。男にはエスコートする義務がある」


「せ、先輩って不良なのかおふざけなのか紳士なのか、訳わかんないですね」

「女の子に優しいだけさ」

「そういうのスケコマシっていうのでは?」

「ははは、否定はしない」

「しないんですか?」

「本当のことだからな」

「あうぅ……」


 桜結美さゆみをからかうのはちょっと楽しい。

 パスがつながり、こうして会話をするだけでどんどん俺との距離が近づいている。


……


「それじゃあ初音はつね先輩、お邪魔しました」

「うん、また学園でね」

「はい」

「それじゃあ駅まで送っていこう」


 今日はエッチな展開にはならなかったな。

 まあ慌てる事はない。美砂との第一イベントまではまだ時間がある。


「先輩って本当によく分からない人ですよね。不良なのに真面目に学園来てるっぽいし、猫にはモテるし、初音はつね先輩の彼氏だし」


「ま、人生いろいろあるのさ。バカばっかりやってた過去を反省して真面目に生きていくって決めたんだよ」

「ふーん。そんなもんですか」


 駅に到着する頃には桜結美さゆみの俺に対する警戒はすっかり解けており、繋がったパスを通じて好意的な感情が流れ込んでくるようになった。


 明日辺り図書室でハメてやるのもいいかもしれない。


 そろそろ決めてやるぜ。覚悟しておけよ桜結美さゆみ


「それじゃあ先輩。今日はありがとうございました」

「ああ。また遊びに行こうぜ」

「はいっ!」


 手を振る桜結美さゆみを駅のホームで見送り、手を振る彼女の後ろ姿に思いを馳せる。


 妖精さんは結局あれからまったく喋らなかったが、まあ気まぐれな奴だしこういう事もあるだろう。


『と油断したところで時限式ラッキーちゃーんす☆!! 明日の図書館でいい事が起こりまーすっ。楽しみにしててくださいねーっ!』


 俺がずっこけたのは言うまでもない。妖精さんめ。不意打ちにもほどがあるだろ。


◇◇◇


 不意打ちで訪れた妖精さんのラッキーちゃーんす☆。

 桜結美さゆみとの別れ際に発動されたこのひと言は、俺の次なる攻略の楽しみを増大させてくれた。


 一体どんな事が起こるのか。

 変化は、次の日に学園に登校する時に現われたのである。


「なんじゃこりゃ……」


「あ、おはよう亮君♡」

「おはようございます亮二さん」

「亮二お兄ちゃん、おはよう」

「亮二く~ん、おはようございます!」

「おはようございます亮二先輩♡」


 学園に到着した瞬間、その変化は訪れた。


「お前ら、その耳と尻尾は……?」

「え? 何か変ですか?」


 妖精さんパワー恐るべし。

 ケモミミ、尻尾。犬、猫、キツネ、多種多様な獣娘達。


 学園はいつの間にかファンタジー学園に変貌していた。


 女子学生全員にケモミミが生えていたのである。


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