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第79話◇涼花の親友◇

琴葉ことはと邂逅した翌日~


 数日間の努力が功を奏して、上手いこと飯倉琴葉ことはと接触することができた。


 本来ならそこで再び再会するまで待たないといけないが、思いがけず自宅にご招待とは。


 ゲームではなかった現象だ。


 どうやら運は俺に向いているらしい。


「よう涼花すずか。ちょっといいか?」

「また来たのあんた? 6人も恋人いるのにあたしにばっかり構ってていいのかしら?」


 そうは言いつつちょっと嬉しそうな顔になってるのを見逃さない。


 琴葉ことはと知り合う事ができたので、その話を涼花すずかにするために帰り道に彼女の家に寄ってみた。


「今日は舞佳まいかも一緒ですよーっ!」

小雪こゆきも、いる」

舞佳まいかちゃん、小雪こゆきちゃん。いらっしゃい」

「VTuberさんの現場見学してもいいですか?」

「もちろんいいわよ。可愛い女の子なら大歓迎だからね」

「ありがとうございます~」


「お、なんだよ。今日は同人誌の執筆活動か?」

「そうよ。夏の祭典に間に合わせないといけないからね」


 この世界にもコミケってあるんか。

 まあゲーム要素以外は普通の日本だし、あるのは当然か。


「今度はどんなの描くんだ?」

「そ、それは……やっぱりさ。その」

「ははぁ~ん。チャラ男にグチャグチャに染められるちっぱいちゃんシリーズか?」

「そ、そうよっ、悪いっ⁉」

「実体験たっぷり味わったもんなぁ」


「うるさいわねっ。邪魔しにきたんなら帰ってよっ」

「ごめんごめん。今日は小雪こゆき舞佳まいかがプロの現場を見学したいって言っててな。引率として付いてきた」


「確かに今日は小雪こゆきちゃんと約束してたけど……。そこにアンタが付いてくる可能性を忘れてた自分を殴ってやりたいわ」


「諦めろ。涼花すずかが可愛い限り俺はどこまでも付きまとうぞ」

「くそっ。嬉しいって思う自分が嫌いだわ」


「まあまあ亮二君のペースに乗っかるとドンドン呑まれちゃいますからその辺で。油断するとエッチに持ち込まれちゃいますよ」

「そ、そうなのっ」

「実体験だから説得力あるな、舞佳まいかの発言だと」


舞佳まいかちゃん、ウラヤマ……。小雪こゆきも、お兄ちゃんに追い詰められながらエッチに持ち込まれたい」


 小雪こゆきの場合は煽らなくても素直に応じるし、なんなら自分から誘ってくる。


 大人しい顔して内側に秘めた欲望は初音や優奈と肩を並べるくらい大きくて強いのが小雪こゆきだ。


 二人と違うのは、ご奉仕や積極性で尽くすのではなく、イノセントな魅力で俺の理性を溶かしてくる天然さで誘惑してくることだ。


「お兄ちゃん、だけだよ♡」


 俺の背中に隠れ、二人には聞こえないように囁きかけてくる。


 なんだか最近、小雪こゆきも俺の心を読むようになってきてるな。


 ともかく無言で頭をナデナデしてやる。


「う、羨ましい……」

「どうした涼花すずか。お前もナデナデしてほしいならこっちにこいよ」

「だ、誰かあんたにナデナデされて喜ぶっていうのよっ!」

「え~、亮二君のお手々って凄く大きくて温かいですよ。りょーじくーん。舞佳まいかもナデナデしてください」


「しゃーないな、ほれ」

「うにゃぁ♡ 舞佳まいかしあわせですぅ」


「あ、あんたらねぇ」


 さて、これ以上からかうと本当に怒ってしまいそうだからこのくらいにして、涼花すずかの所にきた目的を話すとしよう。


◇◇◇


「へっ⁉ そ、それってもしかして、飯倉琴葉ことはちゃんなんじゃ?」

「なんだ? 知ってるのか、彼女のこと?」


「知ってるもなにも、中学時代の親友よ。ナンパから助けたっていう女の子が私の昔の知り合いなんて。こんな偶然あるのかしら?」


「まあ世間って意外と狭いものだしな。こういう事もあるだろ」


 まずは早速本題。


 俺は舞佳まいかのアップテンポな話、小雪こゆきの相づちの力を借りて、涼花すずかに上手いこと先日の出来事の偶然性をアピールしながら話して聞かせた。


 舞佳まいかが丁度良く「実は昨日こんな事がありましてー」なんて話始めれば、女の子トークの中で興味を持つのは当然だ。


 案の定、涼花すずか舞佳まいかがナンパから助けた少女の話に食いついた。


 そしてメイドが追いかけてきた、の辺りでひょっとしてと言い始め、完全に確信を持った。


「飯倉さんだったか。連絡はとってるのか?」

「ううん。中学卒業で連絡取れなくなっちゃって。もう2年くらい会ってないわ」

「連絡先くらい交換してなかったのか?」

「もちろんしてたわよ。でもしばらくして既読がつかなくなって、そのままアカウントも消えちゃった。多分、嫌われたのかも」

「なんかしたの?」


「ううん。覚えがない」


 嫌いになった? それは違う。琴葉ことはは学園進学と同時に父親から上層階級の教育を強いられており、その際にそれまでの友人関係を断たせている。


 琴葉ことはとしても、恐らく断腸の思いだったはずだ。

 設定資料にも情報があまり載っていなかったが、無二の親友である涼花すずかと連絡を絶つなんて、彼女の性格からいうと考えにくい。


「一方的に嫌いになるとか、そういうことをする子には見えなかったぞ。何か事情があるんじゃないか?」

「そ、そうかな……でも、知らないうちに何かしちゃったのかも」


 涼花すずかはコミュ障を拗らせて学園を中退している。

 もともと人見知りが激しくて好きなこと以外の日常生活がダメダメな彼女にとって、同じく変わり者で周りから浮いていた琴葉ことはは唯一無二といっていい気の合う友人である。


「だったら今度招待されてる飯倉家への訪問、一緒に来るか?」

「えっ、そ、それは……いいわよ。向こうにとっても迷惑だし……」

「そんなの行ってみないと分からないだろ。本人に直接嫌いだって言われてないなら、何か事情があるだろうさ。決めつけないで聞いてみたらいいじゃないか」


「簡単に言わないでよ。そんなのできてたらとっくにやってる。コミュ障ナメないでよ……。琴葉ことはにまで決定的に嫌われたら、あたし、もう立ち直れない」


「ふむ。それなら俺に任せておけ」

「ま、任せるって、どうするの?」

「自分で確かめるのが怖いなら、俺を頼れよ。いや、頼まれなくても勝手に仲を取り持つぞ」

「ど、どうしてそこまでしてくれるの?」


「え、だって自分の女の幸せの為に動くのは当たり前だろうが」


「あ、あんたってやっぱりよく分かんないわ……」


「それがお兄ちゃんクオリティ。自分の女にはいつも全力。小雪こゆき、それが格好いいと、思う」

舞佳まいかも~、亮二君のそういう所って格好いいと思うんですけどぉ。やっぱりその先にある目的がエッチな事だからですねぇ……」


「や、やっぱりそうなんだ」

「ははは、否定はしねぇな」


「ぐぬぬ……なんか素直に頼るのが悔しい」


「よーしっ。そんなに素直に頼るのが忍びないならエッチなご奉仕で見返りを要求しちゃおっかなぁ」

「や、やっぱりそういうこという~っ!」


『そんな亮二さんにお助けターイムッ! 【ケモミミVTuberのエッチな配信♡ マイクロビキニでお兄ちゃんを誘惑プレイ】はっじまるよー♪』


 おっふっ。さすが妖精さん。エッチな空気にはすかさず入り込んでくる抜け目のなさ。流石ですなっ!


涼花すずかちゃん、小雪こゆき、いいもの持ってきた。これでお兄ちゃんを誘惑する」

「え、な、何を持ってきたって?」


 小雪こゆきがカバンの中から取りだしたビニール袋。

 その中には更に小さなビニールにパッケージングされた細い紐状の布きれが入っている。


「こ、これはなんなの小雪こゆきちゃん?」

「見ての通りエッチな水着。一緒にエッチするためにもってきた。小雪こゆきと、一緒にしよ♡」


「んぁああああっ! がわい゛い゛~~~~っ! 逆らえない~~」

「そんじゃあ舞佳まいかも便乗してエッチな水着で亮二君誘惑しちゃいますよー」


 ノリノリの舞佳まいか。ゴリ押しする小雪こゆき。その誘惑に抗えない涼花すずか


 三人いっぺんのエッチなVTuber配信プレイが始まる。

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