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第84話◇飯倉家のメイドもあなたに◇

 琴葉の攻略は完了した。これで最後のヒロインである桜木美砂に繋がる道は完璧に整った事になる。


「本日は亮二様に献上したいものがありますの~♪」


 間延びするような喋り方でそんなことをいう琴葉に呼び出されたのは、そろそろ美砂のイベントが近づいてきたある日のことだった。


「献上したいものってか? いったい何が始まるんだ?」


 連絡をもらって出迎えのハイヤーをよこしてくれたのだが、いつもなら担当する筈の春風桃華とは違うメイドさんだった。


「こちらへどうぞぉ」


 到着して開口一番言われたのが献上うんぬんの下りなのだが、その内容が半端ないものであった。


「うおおおっ、こ、これはっ!」


 案内された部屋の扉を開けた瞬間、目に飛び込んできた光景に変な声が出てしまう。


「――ッ♡」

「――はぁ、はぁ……」

「――ぁあ、誰か、きたんですかぁ」

「お嬢様ぁ」


 尻、尻、尻。女の尻が並んでいる。


 しかも、壁に埋め込まれて……。


「こ、これはいったい……? 琴葉、どういうこと?」

「はい~、我が家のメイド達ですわぁ。全員私直属ですので、命令にはいくらでも従います。あ、もちろん全員処女ですので病気などの心配もございませんわ♡」


 そういうことを聞いているのではないのだが、その問答をすることに意味はないように思えた。


 以前に初音で経験したような妖精さん空間による壁尻ではなく、間違いなく人工的に作られた穴から出ている無数の尻だ。


 壁一面の女の尻は、生の尻ではなくスカートと下着が着用されている。


 生尻が並ぶよりもフェティシズムに溢れた光景が、よく分からない興奮を呼び起こした。


「こ、こいつらを俺に献上すると?」

「実はですね、そうしたい所なのですが、一人だけ躊躇している子がいるんですの」


 そりゃあな。いくら主人の命令だからって、こんなクレイジーなことを嬉々として受け入れる女がそう多いとは思えない……。


 ん? 一人だけ?


「一人だけなのか? 俺は嫌がってる子はいらんぞ」

「あ、いえいえ~。嫌がってる訳じゃないんですよぉ。希望者を募ってぇ、ちゃーんとお手当も増やしてぇ、私が亮二様に献上するのに相応しい子を厳選してあるんですぅ。でも、どーーーーしても一人だけ亮二様に献上したいけど、本人が躊躇しているんですよぉ」


 つまり、琴葉が個人的に俺に献上したメイドちゃんがいるものの、肝心の本人が煮え切らないらしい。


「だからって、なんでこうなるの?」

「それはですねぇ。夕べ、寝ている時に神様のお告げがあったんですぅ」


 いわく、琴葉の夢に神様が出てきた。


 いわく、神様は本人が躊躇しているなら、俺に選ばせればいいと言った。


 いわく、なんじ、壁尻を作って当てさせよ、と。


(間違いなく妖精さんじゃねぇか)


 夢の中に出てきてまでそんな変態的なお告げをする神様がいたら、間違いなく邪神だ。


 よこしまな神と書いて邪神だ。


 そして俺の知っている中でそんな頭のおかしいお告げをしそうな神様的存在は妖精さんしかいない。


 まさか俺以外の人間に直接声で干渉するとか、変化球にもほどがある。


『パワーアップしてできるようになりました~☆』


 話しかけてきやがった。

 だが妖精さんの仕業と分かれば乗っかるしかあるまい。


 混乱していた思考は一気にクリアになり、ようするに、その躊躇している誰かを俺が壁尻の中から引き当てれば、踏ん切りがついて俺の女として献上される事に承諾するだろうと。


「――という解釈であってるか?」

「ご名答ですわぁ。も――あの子もそれで踏ん切りが付くとおもいますぅ」


 いま「も」って言ったな。桃華じゃん。絶対桃華だ。


「それじゃあルール説明を始めます~。条件は三つ。においと、感触と、中の具合を確かめてもらいますぅ。それでぇ」


 琴葉の解説した(おそらく)桃華引き当て壁尻ゲームの概要はこうだ。


 俺はこの並んでいる壁尻軍団の中から、春風桃華のお尻を引き当てることを要求されている。


 桃華は俺に献上されることを躊躇しているが、琴葉いわく踏ん切りがつかないだけで拒否はしていない。


 だから嗅いで触って確かめて――このほぼ不可能と思われる状況から自分を引き当てることができたら、それはもう運命的と思って踏ん切りをつけるだろう、と。


 普通に考えたらまだ数回しか会ったことのない女の尻の特徴を判別しろというのも無茶な話だ。


 しかし俺には妖精さんスキルがついている。

 そして、【花咲く季節と桜色の乙女】というゲームの隅々まで知り尽くしている。


 まだ桃華のパスは繋がっていないが、心の声は大きいほどに聞こえやすい。


 嗅いで触って確かめて。つまりこの壁から飛び出しているお尻達を一つ一つ検証して心の声を聞いてやればいいのだ。


「あ、そうですわ。最後に一つ。答え合わせをするときにだけ、挿入なさってください。その一人を当てることができれば、彼女は亮二様のモノになると承諾しています」


「なるほど。これは外せないな」


「はい。もしその子が外れても、他の全員は例外なく亮二様にお仕えいたしますので、ゲームが終わった後に全員の処女を奪って頂いて結構ですわ。このまま壁尻でハメハメしても結構ですし、改めて全員でベッドのご奉仕でも構いません」


「なるほど。それじゃあ、その一人を引き当てて、全員例外なく処女を頂いてしまうとしよう」

「亮二様ならきっと引き当ててくださると信じておりますぅ♡」


 よーし、待ってろよ桃華ッ。すぐに見つけてぶち込んでやるからなっ!


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