清楚ビッチこと山本絵美と過ごすことひと晩。
「やっぱり、あなたとは……もう関わるの……やめるわ」
息を乱しながらベッドに突っ伏し、ヨダレを垂らしながらそんなことを呟く。
「俺のセックスはお気に召さなかったかい?」
そんなことはあるはずない。清楚ビッチは途中から俺のことをご主人様と呼び始めた。
自ら跪き、自分が本当はドMであることを何度も告白してセックスを懇願した。
気に入らなかったなんてことはないはずだ。いやむしろ、気に入りすぎたのか?
「あなたのセックス、普通じゃないもの。これ以上ハマったら後戻りできなくなる。あなた以外の事考えられなくなる……。あなたは亮二じゃないのに……私の中の亮二が消えてしまう……それでもいいから、なんて考えてしまうんだもの」
なるほど。やっぱり亮二のこと好きだったのか。
「そうかい。俺としてはどちらでも構わねぇよ。俺はお前の考えを否定しない。好きにすればいいさ」
「少しは執着してくれてもいいんじゃ、ないの……ふぅ」
気怠げに身を起こし、寂しそうにそう呟く。
「俺がお前の知ってる霧島亮二じゃないって分かってるんだろ。それを寂しいって思ってるならやめておいたらいいんじゃないか」
「はぁ、そうね。あんたとこれ以上関わると引き返せなくなりそう。それに、あなたのハーレムに入るには私はちょっと汚れ過ぎちゃったかな」
「は? 別にお前が汚れてるなんて思ってねぇよ。まあ男食い過ぎてるとは思うが」
「そこはもうちょっと気の利いたセリフ言いなさいよね。あなた転生前はモテなかったでしょ」
「余計なお世話だ」
そこまで非モテではなかったわい。
段々と調子が戻ってきたのか、ベッドから起き上がってシャワーを浴びに行ってしまった。
彼女はそのまま俺に何も言うことなく帰っていったのである。
◇◇◇
「もう1回抱いて」
数日後、清楚ビッチがもう一度会いたいと連絡してきた。妖精さんスキルでパスは繋がったままになっており、彼女の本心がハーレムの女の子達と同じレベルで伝わってくるので、受け入れることにした。
「もういいんじゃなかったのか?」
「無理よ。もう引き返せない。あなたが亮二じゃないって分かっていても、もう他の男じゃ満足できなくなってしまった」
「そうか。ならお望み通りにしてやるよ」
そうして俺は何度も何度も、次の日の朝になるまで彼女を抱いた。
朝になる頃にはすっかり従順になり、清楚ビッチはなりを潜めて消え失せていた。
◇◇◇
清楚ビッチこと山本絵美は堕ちた。
すっかり俺の虜になって夢中になってくれた。
絵美は主人公をしっかり押さえてくれると約束し、これで一安心といったところか。
ただ、もうアイツとはセックスしたくなくなってしまったらしいので、コントロールが難しそうと嘆いていた。
もともと俺が自分でやるべきことではあるし、こうなった以上解放してやってもいいかもしれない。
「すっかりあなたの虜だわ……。亮二は、もう本当にいないのよね」
「ああ。あいつは死んだ。なんの因果かアイツが死んで俺が入れ替わった訳だ」
「そう」
「寂しいか?」
「まあ、知ってる奴がいなくなるのは寂しいものよ……普通はね。私にはそんな感情ないわ」
そうは言ってもパスで繋がった心はそれを否定している。だがこいつの場合、俺を代用品にしようとは思っていないらしい。
良くも悪くもドライな奴で助かるな。
「ねえ、あの子と別れてもいい? まあ元々付き合ってたつもりもないけど、向こうはそう思ってなさそうだし」
「ああいいよ。もともと俺の都合を押し付けて面倒ごとを頼んでいたんだ。俺が寝取った訳だから、責任はとるさ」
「ああ~、いいよそういうのは。別の女の子紹介しておく。私と同じように男を手玉にとるの好きな子いるから、最初にアメを与えておけば簡単に乗り換えると思う」
「いいのかそれで? 別に気を遣わなくて良いぞ」
「あはは。あんたって律儀ね。前世じゃクソ真面目って言われない?」
「……言われたことあるな」
「ほらねやっぱり。いいから任せておいて。自分の始末は自分で付けるわよ。私がそういう女だって知ってるでしょ?」
「分かったよ。じゃあ任せる」
絵美はそう言ってスマホを取り出してメールを打つ。
1分もしないうちに「はい、終わり」とあっさりと主人公に別れを告げた。
「わお。もう鬼電が始まったわ」
「そりゃそうなるだろ」
あとは自分でなんとかするからと、絵美はそのまま帰っていった。