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第88話◇大人だから、感情は隠したい◇

 清楚ビッチこと山本絵美と過ごすことひと晩。


「やっぱり、あなたとは……もう関わるの……やめるわ」


 息を乱しながらベッドに突っ伏し、ヨダレを垂らしながらそんなことを呟く。


「俺のセックスはお気に召さなかったかい?」


 そんなことはあるはずない。清楚ビッチは途中から俺のことをご主人様と呼び始めた。


 自ら跪き、自分が本当はドMであることを何度も告白してセックスを懇願した。


 気に入らなかったなんてことはないはずだ。いやむしろ、気に入りすぎたのか?


「あなたのセックス、普通じゃないもの。これ以上ハマったら後戻りできなくなる。あなた以外の事考えられなくなる……。あなたは亮二じゃないのに……私の中の亮二が消えてしまう……それでもいいから、なんて考えてしまうんだもの」


 なるほど。やっぱり亮二のこと好きだったのか。


「そうかい。俺としてはどちらでも構わねぇよ。俺はお前の考えを否定しない。好きにすればいいさ」


「少しは執着してくれてもいいんじゃ、ないの……ふぅ」


 気怠げに身を起こし、寂しそうにそう呟く。


「俺がお前の知ってる霧島亮二じゃないって分かってるんだろ。それを寂しいって思ってるならやめておいたらいいんじゃないか」


「はぁ、そうね。あんたとこれ以上関わると引き返せなくなりそう。それに、あなたのハーレムに入るには私はちょっと汚れ過ぎちゃったかな」


「は? 別にお前が汚れてるなんて思ってねぇよ。まあ男食い過ぎてるとは思うが」


「そこはもうちょっと気の利いたセリフ言いなさいよね。あなた転生前はモテなかったでしょ」


「余計なお世話だ」


 そこまで非モテではなかったわい。


 段々と調子が戻ってきたのか、ベッドから起き上がってシャワーを浴びに行ってしまった。


 彼女はそのまま俺に何も言うことなく帰っていったのである。


◇◇◇


「もう1回抱いて」




 数日後、清楚ビッチがもう一度会いたいと連絡してきた。妖精さんスキルでパスは繋がったままになっており、彼女の本心がハーレムの女の子達と同じレベルで伝わってくるので、受け入れることにした。


「もういいんじゃなかったのか?」

「無理よ。もう引き返せない。あなたが亮二じゃないって分かっていても、もう他の男じゃ満足できなくなってしまった」


「そうか。ならお望み通りにしてやるよ」


 そうして俺は何度も何度も、次の日の朝になるまで彼女を抱いた。


 朝になる頃にはすっかり従順になり、清楚ビッチはなりを潜めて消え失せていた。



◇◇◇


 清楚ビッチこと山本絵美は堕ちた。


 すっかり俺の虜になって夢中になってくれた。


 絵美は主人公をしっかり押さえてくれると約束し、これで一安心といったところか。


 ただ、もうアイツとはセックスしたくなくなってしまったらしいので、コントロールが難しそうと嘆いていた。


 もともと俺が自分でやるべきことではあるし、こうなった以上解放してやってもいいかもしれない。


「すっかりあなたの虜だわ……。亮二は、もう本当にいないのよね」


「ああ。あいつは死んだ。なんの因果かアイツが死んで俺が入れ替わった訳だ」


「そう」


「寂しいか?」


「まあ、知ってる奴がいなくなるのは寂しいものよ……普通はね。私にはそんな感情ないわ」


 そうは言ってもパスで繋がった心はそれを否定している。だがこいつの場合、俺を代用品にしようとは思っていないらしい。



 良くも悪くもドライな奴で助かるな。



「ねえ、あの子と別れてもいい? まあ元々付き合ってたつもりもないけど、向こうはそう思ってなさそうだし」


「ああいいよ。もともと俺の都合を押し付けて面倒ごとを頼んでいたんだ。俺が寝取った訳だから、責任はとるさ」


「ああ~、いいよそういうのは。別の女の子紹介しておく。私と同じように男を手玉にとるの好きな子いるから、最初にアメを与えておけば簡単に乗り換えると思う」


「いいのかそれで? 別に気を遣わなくて良いぞ」


「あはは。あんたって律儀ね。前世じゃクソ真面目って言われない?」


「……言われたことあるな」


「ほらねやっぱり。いいから任せておいて。自分の始末は自分で付けるわよ。私がそういう女だって知ってるでしょ?」


「分かったよ。じゃあ任せる」


 絵美はそう言ってスマホを取り出してメールを打つ。

 1分もしないうちに「はい、終わり」とあっさりと主人公に別れを告げた。


「わお。もう鬼電が始まったわ」


「そりゃそうなるだろ」


 あとは自分でなんとかするからと、絵美はそのまま帰っていった。


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