さて、いよいよ桜木
ゲームシステムに支配されていた今までだと接触するチャンスがなかった。
だが主人公が彼女を攻略するために必要なフラグである三人のサブヒロインが必要だった。
彼女達は既に俺の手中だ。あれから幾度となく中出し洗脳を決めて、三人とも完全に俺に逆らえなくなっている。
それどころか俺のハーレムを拡充する為に、それぞれ程度の違いはあれど協力してくれている。
琴葉に至っては毎回のように新しい美少女メイドをどこかから見繕っては俺に献上しようとしてくるほどだ。
そんな感じで桜木
主人公が俺とフラグを立てるのは不可能である筈。
だが、俺は未だに桜木
舞佳や優奈にそれとなく奴の動向を監視してもらっているが、最近はほとんどの時間を
このままではマズい。フラグは立たなくても、ゲームとは関係なく奴と
◇◇◇
そうして過ごす事数日後。
だからまずは一番最初のイベントが起こる場所に絞ってデートを敢行することにした。
「先輩と二人きりって幸せ~。でもなんでここなんですか? デートスポットにはちょっと季節外れですけど」
今日は優奈を伴って町の外れにある一本桜の丘に来ている。
ここはゲームにおいて重要なイベントが起こる場所でもある。
小高い丘の上に一本だけ佇んでいる桜の木。それは春の季節、つまりゲームで言えばエンディング付近でのみ花を咲かせるスポットだ。
オフシーズンでも静かな場所なのでデートスポットにはそれなりに需要がある。
今は夏に入りかけている季節なので、涼しい場所として東屋でのんびりするイベントもヒロイン共通で起こったりもする。
「今日はのんびりしたい気分でな。そこの東屋でゆっくりしよう」
「はい♪」
「弁当は持ってきてくれたか」
「もちろんです先輩。腕によりをかけて作りました」
のんびりした時間に女の子の手作り弁当。それだけで値千金の価値があるデートだ。
「おお、いいね。優奈の料理は美味いからな」
卵焼きに唐揚げ、おにぎりにほうれん草のおひたし。
シンプルだが外れのないオーソドックスなお弁当の数々。
好きな女の子の手作りって付加価値が付いて高級品よりも美味さがある。
「はい先輩、あーんしてください♡」
「あーん」
「ふふ、先輩がお口開けてるの、凄く可愛いです」
「ちょっと恥ずかしいな。でも美味い」
優奈のお弁当は絶品だ。作り手のこだわりと俺への愛情がたっぷりと詰まって一層美味い。
心地良いそよ風を浴びながら美味しいお弁当で舌鼓。
最高の時間だ。今日は攻略の為にここに来たことを忘れそうになる。
だがイベント開始は昼下がりの筈だから、もう少しのんびりしてもいいな。
「優奈、膝枕」
「はい先輩♡ どうぞ」
東屋のベンチに横たわってその時を待つことにしよう。
それにしても優奈の膝は柔らかくて気持ち良い。エロい気持ちにならない。
「はぁ……気持ち良いな。目的を忘れそうになる……」
「私は幸せです」
桜色の長い髪がそよ風になびいて幻想的なプリズムを作り出している。
メインヒロインはさすがだな。この美しさは、申し訳ないが他の子達に出す事は不可能だろう。
「綺麗だな、優奈は」
「えへへ、嬉しいです」
「こういうのんびりした時間も悪くないな。このところ慌ただしかったし」
「幸せです先輩。桜の木の神秘に包まれてのんびり過ごすのっていいですね」
「桜の木の神秘か。この町の伝説だよな」
「はい。私、先輩って桜の木の精霊なんじゃないかって思う事があるんです」
「俺が精霊ってツラかよ」
「あはは。それもそうですね」
この町にはちょっとした伝説がある。ゲームの舞台となるこの町には、小高い丘に生えた一本の桜の木がある。
今目の前にあるアレだ。
不思議なことに、この桜の木には花びらが付かないのだ。
そしてゲームのエンディングにて、ヒロインと結ばれたことを祝福するように花びらが舞うようになる。
伝説によれば、桜の木には精霊が宿っており、男女の幸せを祝福してくれるらしい。
物語の根幹に関わる設定なんだろうが、実際のゲーム内では大きく取り上げられることはない。
オープニングに軽い説明があり、エンディング付近になると思い出したように桜の木関連のイベントが始まる。
「桜の木の精霊か……」
まさかとは思うが、あの妖精さんがソレじゃあるまいな。
そうじゃないと願いたいところだ。
今日ここに来たのは、
だからあるイベントで彼女が一人になるチャンスを待つしかなかった。
その理由とは……。
「あ……先輩」
「ん……? お、来たな」
桜の木の麓に、いつの間にか一人の少女が立っていた。
丘の上から一望できる町を見下ろし、ぼんやりと物憂げな表所を浮かべて佇んでいる。
「桜木
「……だ、れ?」
ヒロインと一緒にこの桜の丘に来る。それが彼女との邂逅条件だ。
今まではゲームシステムのせいで接触できなかったが、ついに誰にも邪魔される事なく彼女と会うことができた。