まずはヒロイン達と仲良しデート。
俺は後ろから付いていくだけの付き添いだ。
妖精さんパワーがあってもシステムに支配されていては意味が無い。
そういえば、俺は今までどうやったらシステムを出し抜けるかばかり考えてきたが、アレが有る限り抜け道ばかり探さないといけない。
できればシステムからの解放の方法を模索したいところだ。
「うふふ、お友達と一緒のお出かけ、とっても楽しかったですわ」
「いやぁ、後輩達のキャッキャウフフは見てて微笑ましかったねぇ。お姉さん感激」
「
記憶が蘇った時に蘭華との繋がりを持っておきたい俺の思惑を読んだ
ムードメーカーの
感情の起伏が少ない
そう、記憶を失った
だがそれはゼロというわけではなく、表に出す手段を忘れているというだけ。
蘭華の記憶を取り戻すには、こうした感情の問いかけを繰り返し行なってことでフラグが成立していく。
ゲーム本編では主人公とデートし、
最後の仕上げとして、俺が主人公の代わりに彼女の感情の受け皿となる。
「
「こちらこそ。
「うん。
そこで
「ねえ
「いい、の? 嬉しい……。これは、嬉しい、感情?」
「うん。嬉しいんだよ。誰かと一緒に食べる御飯は美味しい。美味しいに楽しいが加われば、それは幸せって言うんじゃないんかな」
「幸せ……。そう。幸せ」
これで俺が彼女の家に行っても不自然ではなくなった。
住んでいる場所を知れるというのは途轍もなく大きいのだ。
今までは場所が分からなかった為に探す事はできなかった。後をつける事もシステムに邪魔されてできなかったのだ。
合法的に
◇◇◇
来た。ようやく来たぞ。
隠しヒロインである桜木
ゲーム内でも自宅に招かれるというイベントは存在せず、デートはもっぱら外。
途中記憶を取り戻すためのきっかけイベントが存在するが、いずれも外デートの最中だ。
「出来たよーッ」
「
カレーを楽しむ
これは良い兆候だ。本来はルートに入ってから数ヶ月かけて行なう感情の蘇生を、わずか数時間で完了させてしまった。
「カレー、美味しかった。これが、幸せ?」
「そうだ。美味しいもの食べて、みんなでお喋りして、楽しい気持ちを共有する。それが幸せなんだよ」
「そう……。これが、幸せ。……知ってる気がする。忘れてた、気がする」
これだ。これがゲーム内における
『取り戻した笑顔』イベントの特別CGで見せる微笑みだ。
微かに微笑む
「あなた……、凄く心地良い。みんなが、好きの気持ち、向けてる」
「え?」
「ああ。俺は皆が大好きだし、皆も同じだと信じてる」
「先輩が好きなんて当たり前ですよっ!」
「そうですよーっ!
「私だってっ!」
「少し、相談、ある」
「なんだい?」
ここにきて急に相談事。話が脈絡ないように見えても、
俺はそれをゲームでよく知っている。彼女の言葉に耳を傾け、何を欲しているのか理解しなければ。
◇◇◇
「ふむ……それは由々しき問題だ」
「何やってるのよあのバカ」
「好摩君のやっかいぶりは健在ですねぇ。キモッ」
つまり、最近学園内でしょっちゅう話しかけてくる好摩楽人のしつこさに困っている、という内容だった。
先ほどの内容と少し矛盾するように見えるが、本心を打ち明けてくれたという意味で進展している。
「それなら心配ないよ。私達が学園内で守ってあげる。それに、ここにいる先輩がやっつけてくれるから」
「先輩、なんとかなりませんか?」
「そうだな……。あいつが絡んでるとなると、少々面倒だ」
「っていうか、あの子、付き合ってる人いるんじゃなかったっけ? ほら、なんか大人の女性と」
恵美の事だな。そういえば、恵美から自分が俺に抱かれたことは伝えないでほしいと言われている。
気にする必要もないと思うが、色々と複雑な人生を歩んでいる分だけ、若い学園生の女の子が眩しすぎるんだとか言っていた。
つまり、彼女は今の所ハーレムに合流する気はないらしい。
無理強いする理由もないのでアイツの意見を尊重しているが、いずれは合流する未来も考えてやりたいところだ。
主に俺が尻を並べたいという意味で。
「それはともかく、彼の性格を考えるといい事は考えてなさそうですね」
話題がずれそうなので話を戻す。
そうして聞き出していくと、学園内と帰り際で好摩楽人は
そこまでなら良いのだが、このところは誰かと一緒に居るところを咎められ、自分以外とは話さないように諭してくるらしい。
これもさっき聞いた通りだ。
「うわ、なによそれ。キモいって」
恵美に調教されて少しは更生したかと思っていたのに、まあ調教されたのは性癖だけだろうけど。
「ともかく彼はちょっと危ない思考の持ち主ですから、関わるのはやめた方がいいですよ
「……。明日、お出かけの約束、してる」
「えっ⁉ 好摩君とっ⁉」
「そう…。だから、少し、困ってる」
「断りましょう。嫌なら行く必要はないよ」
「うん、そう、かもしれないけど……」
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
「なに?」
俺はちょっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「彼は、桜木さんをどこに誘ったんだい?」
「楽しい所って……」
「楽しい所?」
「えっと、大っきなプールがあって」
「プール? 隣町のレジャープール?」
「綺麗なネオンがいっぱいの所って」
「ラブホじゃんっ!!」
あの野郎。
「らぶ、ほ?」
「あのね
「セクス? それは、なに?」
「じゃあ男の人と女の人が、ベッドの上ですることって分かる?」
「分からない……」
「それなら、好摩君がいきなり裸になったり、
「……。ちょっと、嫌かも」
「あなたが連れて行かれるのはそういうことをする所よ」
正に間一髪。アホ主人公は全ての過程をすっ飛ばして
ともかく俺達はぼんやりする
『そんなあなたにラッキーちゃ~んすっ☆!!』
「ぬあっ⁉」
「ど、どうしたの亮君」
「あ、いやなんでもない」
いきなり大声出しやがって。安心した瞬間を狙ってやがったな。相変わらず人の不意を突くのが好きだな。
『【セックス知らないなら先に覚え込ませちゃえばよくね? 無知ッ子にイケないことを教えちゃおう大作戦っ!】』
またぞろ昭和のバラエティみたいな事を言い出しやがったな。
だがラッキーちゃ~んす☆が来た以上、俺の勝ちは確定したようなもんだ。
この勝負もらったぞっ。