無知で無垢な桜木美砂。
そんな男女の性も知らない彼女に、男女の色々を寄ってたかって教え込んじゃおうって作戦だ。
「ねえ美砂ちゃん。セックスを知らないなら、体験してみない?」
「体験……? どう、やって?」
「私達が教えてあげる。亮二さんの体、すっごく素敵だよ。あなたも知ればきっと好きになるから」
「そう……私も、気になる。どうしてか……気になる」
美砂は俺の目を真っ直ぐに見つめ、透明な水晶のような瞳に光を宿らせる。
「私は、あなたを探していたような気がする」
それは本来主人公の筈だった。だが、その条件を満たしたのが俺ならこのゲームのシステムを乗っ取れる可能性が出てきた。
実は、美砂の攻略に関してはずっと封印してきた禁じ手を使おうと考えていた。
舞佳を攻略した時に使ったアレだ。
美砂に俺を主人公と認識させ、そのまま舞佳のように攻略してしまう作戦だ。
だがあれは舞佳が主人公に懸想していたから使えた手段だ。
ここにきて発覚した彼女の被っている迷惑具合を考えると、使わなくてよかった。
「美砂ちゃん、まずは触ってみよっか」
「触る……まずは、触る」
「優奈ちゃん、まずは私達で見本見せないと」
「そうだね♪ 美砂ちゃん見てて」
優奈の手が慣れた手つきで上着とズボンを脱がし始める。
「におい嗅いでみたらいいと思うよ。相性が良かったら抵抗もなくなるから」
よし、ここで妖精さんスキルの出番だ。
エロい気分にさせる為には五感に訴えるのが一番。数あるセックス経験の中で視覚、触覚、嗅覚、味覚、聴覚。
その全てに欲情の種を植え付けるスキル構成を育ててきた俺に死角はない。
「スンスン……。これ、好き……。におい、好き……。そう、あなた、声も好き」
「亮二だ。霧島亮二。好きに呼んでくれれば良いが、できれば名前で呼んでくれ」
「じゃあ、リョージ。あなたのにおい、好き……スンスン。声も、好き……」
「本能で相性がいいって分かるっていうのは、凄くいいことだな」
「そう……。とても、いい。リョージ、もっと、早く、会いたかった」
良い感じだ。どうやらスキル無しでもかなり相性が良さそうだ。
だがこのラッキーちゃ~んす☆を十全に活かす為には、実験やお試しなんてしているヒマはない。
「リョージ、これ、知ってる。私は、このにおい、知ってる……」
スンスンと鼻を鳴らしながら首筋、胸板、肩、おへそ……。
エロい事も重要だが、女の子との睦み合いには気分の盛り上げが一番重要だ。
俺は美砂の体を抱きしめ、ぬくもりを感じられるようにギュッと密着する。
「んっ……あったかい……。良い匂い、リョージの匂い、心がポカポカする……。不思議」
「どうだい美砂。キスしてみないか」
「キス? お口、チュッチュするの?」
「ああそうだ。どうだ?」
「する……。あなたのこと、気になる。確かめたい。この気持ち、この記憶……。心の声、聞こえる」
断片的に紡がれる言葉には一見意味が通っていないものもある。
だが、俺はその言葉の意味。彼女が求めている言葉の答えを知っている。
「美砂、君の求めているものはここにあるよ」
彼女の求めているもの。それは失われた記憶だ。それを呼び起こすのは主人公の声のはずだった。
だが、……っと、解説はまた今度。今は美砂を徹底的に俺色に染め上げてしまおう。
「はみゅ……これ、気持ち良い……」
「それじゃあ美砂ちゃんと先輩は凄く相性がいいってことだね♪ キスしただけでそれが分かるなんてよっぽどだよ」
「そう? 気持ち良い。嬉しい」
「さて、先に進むとしよう」
ゆっくりゆっくりと距離を縮めながら、さあいよいよ衣服を脱がせていこう。
「美砂、そこに立ってみて」
「こう?」
スックと立ち上がる美砂。
夏らしいノースリーブの白ブラウスにチェック柄のプリーツミニスカート。
シンプルだが、記憶を失っていてもアイドルである美砂は、それを見事に着こなしている。
肩は華奢なのに胸は大きく、腰はくびれてお尻はむっちりと大きい。
桜木蘭華というアイドルは、グラビア写真集がベストセラーになるほど豊満な体つきをしているむっちり系でもある。
それでいて太っているという印象もない。ぽっちゃりしている部分もない。
豊満なのは胸と、尻と、太ももと……女を感じやすい部分にだけ肉が乗っかり、くびれや足首、ふくらはぎといった細さに美しさを感じる部分はしっかりと細い。
千差万別、十人十色。人の好みは数あれど、ファンクラブ500万人を抱える桜木蘭華に感じる魅力は多くの人が感じている共通の認識だ。
もちろん体だけではないだろうが、その片鱗は記憶が消えても隠しきれないようだ。
立ち姿だけで女という生き物の魅力を十全に体現している。
「綺麗だ」
「嬉しい……。どうしてだか、嬉しい」
「本当に綺麗~。あれ……?」
「どうした優奈?」
「蘭華ちゃん……?」
「……ッ……その、名前」
美砂は何かに反応し始める。いいぞ、これはゲーム内イベントと同じ流れだ。
「ら、ん、か……私は……美砂……でも、らん、か?」
「美砂ちゃん……? どうしたの?」
「優奈、少し待て」
「蘭華……私は、蘭華……。リョージ、私、なにか」
「いいぞ美砂。苦しいなら無理はしなくていい」
今はまだ無理をするフェーズじゃない。
記憶はゆっくりと取り戻せば良い。まずは記憶のない無垢な美砂をたっぷりと堪能するとしよう。
「さて、それじゃあ次の段階に進もう」
せっかくのラッキーちゃ~んす☆なんだ。妖精さんが満足するように、もっともっとドスケベに仕立てないとな。
俺達と彼女の絆を確かなものにしておかなければ。
ここで処女を頂いてしまおう。
◇◇◇
【side美砂】
それはとても良い匂いだった。
心地良い感触で、手に馴染んだ。
唇で触れた感触を、私は求めてやまなかった気がする。
「よーし美砂、まずは優奈たちと一緒に練習してみようか」
彼がそういうと、優奈、彩葉、琴葉、舞佳の四人は衣服を脱いでいく。
普通は、恥ずかしい。
でも、彼の前でなら、できる。
質素な家具だけが鎮座するマンションの一室で、裸の男女が情熱を燃やそうとしている。
私は、この行為の意味するところを知らない。
だけど、本能が知ってる気がする。
これは、きっと嬉しいこと。私の感情は、このぬくもりを求めていた。