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第102話◇死んでよかったぞこのアホは◇

~時間は少し遡る~


「ぐはっ、ごっ」

「カハッ……つ、つぇえ」

「ひぃい、か、勘弁してくれっ。あんたの強さはもう分かったからっ!」


 繁華街の路地裏で、本物の霧島亮二に取り憑かれた好摩楽人は新たに目覚めた自分の能力に全能感にも近い昂揚を覚えていた。


『どうだよ。圧倒的な力でねじ伏せるのは気持ち良いだろ』


「ああ、最高だ。最高だよこれ。身体中から力が漲ってくるぜっ。今ならあの野郎にも絶対負けねぇ」


 精霊に取り憑かれたことで身体能力は超絶強化され、普段の好摩なら絶対に避けたであろう強面のチンピラ達相手に無双する。


『それに加えて女を屈服させる能力も与えてやるよ。どうだ、適当な女を捕まえてやっちまえよ』


「いや、そうだな。どうせなら山本恵美にしよう。あのクソブス女をボコボコにしてたたき伏せてやろうぜ」


『いいねいいねっ。俺が力を貸してやるよ。グチャグチャに犯して泣き土下座させてやろうぜ』


「それがいい。こんなに強くなれるなんてな。なるほどな。霧島の野郎はお前と同じ力を使って優奈を俺から奪い取ったんだな。やっぱり卑怯な手段を使ってたんだ。俺と結ばれる筈だった優奈を奪いやがって。絶対復讐して、優奈の目も覚まさせてやる」


『けけけ。幼馴染みがお前のこと好きじゃねぇのは初めからだろうが。それにいいのか? あいつのお下がりの中古品になっちまうぞ』


「はんっ。いらねぇよあんなブス共は。他人の手垢が付いた女なんて肉便器で十分だ。だがこのまま放置するのは俺の気が収まらねぇ。散々犯し尽くして最後はゴミみたいに捨ててやる。どっかのAV会社にでも売り飛ばせばいいだろ。スカッとするぜ」


『腐ってるねぇ。病的な処女厨じゃねぇか。そういうのユニコーンっていうんだろ?』


「うるせぇよ。そんな力を持ってるなら初めから教えてくれればよかったんだ。なんでこの間優奈に会った時にさっさと操らなかったんだ?」


『物事には順番があるんだ。あっちの霧島が完全に優奈を攻略しちまってる以上、その洗脳を解くにはそうとう厄介な手順が必要らしいな』


「チッ、案外使えねぇんだな」


『敵は手強いぜ? 俺の言うこと聞かねぇで勝つつもりかよ。そのせいで幼馴染み全員アイツに奪われてるってこと忘れるなよ』


「……クソがっ。分かったよ」


『さあとにかくまずは恵美の所へ行くぞ』


「そうだな。でも犯した後はどうするんだ?」


『まだ利用価値はあるんだよ。俺にはそれが分かる。精霊さんの超能力って奴だ。とにかくいくぞ』


 そうして亮二に操られた楽人は、恵美の元に向かって超能力を駆使して操っていた。


 ◇◇◇


「チィッ! イッテぇなクソ女がっ!」


 恵美を操り、マンションから美砂を連れ出すことに成功した楽人。


 調子に乗った彼はそのまま恵美に復讐セックスを仕掛けようとした。


 だがまだ能力を使いこなせていない楽人の詰めの甘さが災いし、正気を取り戻した恵美に股間を強打されて逃げ出していた。


 精霊も主人公も知らないことであるが、恵美の危機を救ったのは亮二転生者であり、パスで繋がった女性を無意識に守るスキルが働いている。


『ぎゃははははっ!! やべぇえ、腹痛ぇww』


「笑いすぎだクソッタレッ。だが美砂を連れ出すことに成功したぞ。どうするんだ? このままホテルにでも連れ込むのか?」


『バーカ。人形みてぇな女を抱いても意味ねぇだろうが。そいつは桜木蘭華が記憶を失った姿だ。手順を踏めば記憶が蘇るんだよ』


「マジかよ。行方不明になってた蘭華ちゃんが、美砂の正体?」


『そうだ。いちいち説明するのも面倒だ。俺に体を貸せ。今日一日かけて全部のイベント回れば記憶は蘇るだろ』


 そうしてまずは美砂の意識を操り、最初のイベントである大型ビジョンに向かったのだった。


◇◇◇


~そして現在に戻る~


「霧島亮二……。そうか。テメェも転生したってことかよ」


「そうだよぉっ! 向こうの世界じゃやりたくもねぇゲームしかやることなくて大変だったぜ。おかげで色々知れた。この世界がゲームであることもな。まったく、自分がゲーム世界の住人だって知った時はショックだったぜ」


「そんなことはどうだっていい。美砂を離せ」


「なんだよぉ。せっかくここに至るまでの苦労話をしてやろうと思ってたのに」


「興味ねぇよ。テメェの目的がなんであろうが、それに美砂を巻き込むな」


「いいじゃねぇか。お前はヒロインコンプリートしたんだろ? 隠しヒロインくらい譲ってくれたってよぉ」


「テメェがまともな人間ならそうするつもりだったさ。だがそんな未来はまったく期待できそうもないからな」


「そんなこと言わずに譲ってくれよぉ。このアイドル隠しヒロイン、俺も好きだったんだよなぁ。まああの幼馴染みとか、デカパイのピンク髪とかも美味うまそうだったから惜しいけどな。もう手を付けてるならそれはいいや。こいつだけでも俺によこせ」


 こいつ、ホントに何言ってるんだ? 吐き気すらしてくるほど醜悪な男だ。


 自己愛満載の主人公が可愛く見えてくるレベルだ。


 こんな奴がこの体の持ち主だったのかよ。気持ち悪くなってくるな。本当に死んでよかったぞコイツ。


 だが、こいつが何かの能力を使って美砂を操っているのなら……。


「美砂ッ! 俺の声が聞こえるかっ。こっちに来いッ」


「ッ!!」


 俺の声に美砂の体がビクンと痙攣し、虚ろだった瞳に光りが宿る。


「やっ、はな、してっ、離してッ!」


「うおっ⁉ なんだっ、催眠解けたのかよっ」


 急に暴れ出した美砂に驚いてよろけた隙を突いて体を前に乗り出した。


 こいつやっぱり俺の妖精さんスキルみたいなことができるらしい。


 厄介だぞこの野郎。

 同じ能力を持った最強の敵なんてテンプレ野郎は俺のハーレム物語には必要ねぇんだぞクソが。


 本来の霧島亮二。なんて迷惑な野郎だ……。



 だが、問題無い。既に対策はしてあるんだ。



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