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23 王都の森_06

   *          *


「なぁハルコン。この花を煎じて飲むと、一時だがとても元気になるんだ。風邪をひいて高熱が出たときには、熱さましの効果もある。だが、飲み過ぎると腸が腫れてくるんだ」


「ホンと、ゾッとしますわね」


 ギルマスの言葉に、ミルコ女史も同調する。


 ハルコンは、花のがくの部分を弄りつつ、地球の紫陽花の場合、むしろ体温上昇、震え、眩暈といった症状が現れていたはずだよね、と思考を巡らせる。


 やはり、地球のそれとは単純に同じではないのだろうか?


「ありがとうございます。私はまだこの世界の自然物に詳しくありませんので、お二人から頂ける知識にとても感謝する次第です」


「なぁ~に、いいってことよ! 子供が大人に頼るのは当たり前だろっ! 遠慮せずにどんどんワシ達に訊いてくれっ!」


「そうよ、ハルコン君。私達もできるだけ力を貸しますから!」


「ありがとうございますっ!」


 信頼できる人物2人の助力が今後期待できそうで、自然とハルコンは笑みを浮かべた。


「ねぇー、ハルコン。そろそろ時間がもったいないから、サンプル集め始めない?」


「そだね。じゃぁミラ、こちらの花と葉を100ずつ、痛んでいないのを採取して貰えるかな?」


「OK!」


 ハルコンから指示を貰い、ミラはいつもの慣れた調子で、舟形のトレイの上に次々と採取していく。


 ミルコ女史がミラの手伝いを始めるので、「こちらを使って下さい!」と言って、女史にも薄い皮の手袋を渡した。


 おそらく、「回生の木」の花と葉が地球の紫陽花や夾竹桃に似て有毒性のため、ミラとミルコ女史は手袋をして丁寧に摘まんで集め始める。


 もちろん、サンプルを痛めないためにも、手袋を着用して貰っているのだが、……。


「ハルコン、ワシにも何か手伝わせてくれ!」


「では、土壌サンプルを回収しますので、手伝って下さい!」


「ワカった!」


 ハルコンは、「回生の木」の群生をざっと見て、大体20ヶ所の根元の土を採取しようと思った。


「右のあそこから中程のそこまで、計10ヶ所の土を、なるべく根元に近い位置、片手の深さ位まで掘って採取をお願いできますか?」


「おぉっ、任せろっ!」


 ギルマスには握り拳ひとつ分位の容量の番号入りの麻製の袋を10枚と、鉄製のハンドスコップ、手袋を渡して作業に入って貰う。


 ハルコンはギルマスの反対側から、同様に土壌サンプルの採取を始めた。

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