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薬缶に火を点けると、ハルコンは女神様とテーブルの席に向かい合って座った。
「女神様、紅茶でよろしかったでしょうか?」
「はい。あまりお構いなく」
ニコリと、柔和に微笑まれる女神様。
ハルコンは、この際いろいろお訊ねしてみようと思った。
「私は先日、『聖地』に調査にいって参りました。そこで『回生の木』が地球の夾竹桃と同じ役割をするという仮説を立てて、調査を行ったのです。するとやはり、類似性があるとワカりました!」
「さすが晴子さん。目の付けどころが、なかなかいいですね!」
そう仰って、ニッコリと微笑まれる女神様。
「私は仙薬エリクサーの『試薬A』に、『回生の木』の花と葉を試そうと思っています」
「いいですね!」
「『回生の木』は、女神様が植樹されたのでしたよね? 意図をお訊ねしてもよろしいでしょうか?」
「プーキン(ファイルド国建国の父)さんに強くお願いされましてね。騒乱の地を平定するために、どうしても『力』が必要だと仰るものですから!」
「なるほど」
「でも、プーキンさんは私の忠告を全く聞き容れず、『回生の木』の葉と花の成分を過剰摂取してしまいましてね」
「それで腸をやられて、早くに亡くなってしまったと?」
「そうです。それが、何代にもわたって続きました」
寂しそうに、ため息を吐かれる女神様。
すると、薬缶の笛が鳴り出したので、ハルコンは一度席を立った。
「女神様、……さすがに今の王族は、もうそのような過剰摂取はしないようですよ?」
「そのようですね」
ハルコンが話しながら茶葉に湯を注ぐと、いい香りがふわりと辺りに広がる。
「ミルクもお入れになりますか?」
「えぇ。お願いしますね」
「はい」
ハルコンは席を立って、冷蔵庫に取りにいった。
その際、ミルクの瓶と共に、コルクで栓をした試験管もひとつ持ってきた。
「晴子さん。それは?」
女神様はミルクをカップに注ぎながら、柔和な声でお訊ねになられた。
「『回生の木』の根元の土壌から採取した、アイウィルビンです」
「まぁっ!」
「『試薬A』の確認が出来次第、仙薬エリクサーの開発を進めようと思っています!」
「なるほど、……もう、後少しなのですね」
女神様は感慨深げにそう仰って、カップに口をお付けになられた。