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『『『『『オォ~ッ!』』』』』
ファイルド国各地にいる5人のNPC達から、賞賛の声と拍手がこちらまで届いてきた。
女占い師は、感極まった様子で私に抱き付いたまんまだし。
軽く頬ずりしてこられるのは、何だかくすぐったい気分になってしまいそうだと、ハルコンは思った。
「女占い師さん、そろそろ実験を再開したいのですが、……」
「はっ!? そうでしたっ! 次は私が大店の商人さんの許に送られるワケですね?」
「はい。やっぱり、止めときます?」
「いぃえっ、トンでもないっ! ぜひ、私にやらせて下さいっ!」
そう言って、ふんすと胸を張る女占い師。
なら、……予定どおり、お願いしちゃおっかぁとハルコンは思った。
「大店の商人さん、……そちらの準備は如何でしょうか?」
『はいっ! いつでも構いませんっ!』
その言葉に、女占い師もグッと力を込めて頷いた。
「ではっ、先程と同様に、……商人さん、両手を椅子かソファーに突いて頂けますか?」
『了解ですっ! どうぞっ!』
次の瞬間、ハルコンに抱き付いていた女占い師が、スッと音もなく消失した。
シンと静まる居室。ハルコンの頬を、冷たい汗が伝う、……。
『ハルコン様っ! 私も転送に成功しましたっ!』
『凄いですなっ! 誠に以て、凄いっ!?』
すると、大店の商人のいる向こうで、女占い師と商人、2人がお互いに感極まって喜び合う様子をハルコンは確認した。
『『『『オォ~ッ!』』』』
他の4人のNPC達から、歓声と拍手がこちらまで届いてくる。
なるほど、……凄いね。この場に私一人だったら、思わず「フハハハハハッッ!」と笑い叫んでしまうところだったよ。
次に女占い師を予定どおりこちらに戻そうと思ったら、『私も、ぜひ一緒に転送して頂けますか?』と大店の商人からお願いされてしまった。
今後のビジネスに役立てたいと考えての発言だろう。ハルコンは直ぐにOKの返事をした。
女占い師と大店の商人にお互いに両手を握らせると、2人一緒になって、女占い師の居室に戻ってきた。
まさに実験は大成功。本日の定例会を終えると、ハルコンと大店の商人は夜の王都の街を一緒に歩いて帰路に就いた。
王都のメインストリートは、夜でもそこそこ明るく、治安もいい。
ハルコンと大店の商人は、お互いに本日の実験の成功を喜び合いながら、今後のビジネスについて、じっくりと話し合った。