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シルファー先輩にも、「タイプB」をお出しした。すると、先ず一口こくりとお飲みになると、「フルーティーで甘く、とても飲み易いですね!」とお褒めの言葉を頂いた。
「それは、良かったです!」
ハルコンがニッコリ微笑むと、シルファー先輩はもう何ら躊躇わずに、こくこくと飲み干してしまった。
どうやら、飲み口がとてもまろやかだったからかなぁと、ハルコンは分析する。
「ハルコン、これっ、凄くいいですねっ!」
先程とは打って変わって、シルファー先輩の血色のいい、元気溌溂とした笑顔。
どうやら「タイプB」が即効し、疲労回復につながったようだ。
シルファー先輩も激務だからさ。体質改善、体力増進を目的に常用して貰えるといいよね。
「ありがとうございます。今後、この薬剤を量産し、市場に流通できればと思います」
「えっ!? これ程効果の高い薬を、量産できるのですか?」
「十分、可能です!」
「いいですねぇ、いいですねぇ」
シルファー先輩は、輝く笑顔で頷いて下さる。
こちらの世界でも王宮のお墨付きを得て、「タイプB」の評価を高めておく。そして、市場に安く大量に流通できればベストかなぁ、とハルコンは思った。
すると、寮長がシルファー先輩に何やら耳打ちした。
シルファー先輩は、「ふむふむ」という感じで小さく頷くと、こちらにニコリと笑顔をお見せになられた。
「ねぇ、ハルコン。ちょっといいかしら?」
「はい?」
改まって、一体何だろうとハルコンは思った。
「この『タイプB』って、王都の森の『聖地』で採取したものよね?」
「えぇそうです」
「『聖地』内に自生する、『回生の木』の根元の土壌から採取した『放線菌』? が生み出した成分なのですよね?」
「えぇ、……まぁ、そうですね」
「でしたら、王都の森の『聖地』の管轄は、王宮になります。つまり、王宮の所有財産からこの『タイプB』が作られた、……ということになりますよね?」
ハルコンは、シルファー先輩が大体何を仰りたいのか、直ぐに察しが付いた。
でも、利に敏いシルファー先輩がこう仰るのは、既に想定済みだ。
「私としては、この『タイプB』が安価で広く市場に流通するのが、ベストだと考えています。そのために王宮で製造、販売の管理をして頂き、国内だけではなく、隣国諸国にも輸出できるようになることが私の希望です!」
「まぁっ!? それで、ハルコンはよろしいんですの?」
「とにかく安価で、市場に提供できれば、……それに越したことはございません!」
ハルコンがニッコリと笑うと、シルファー先輩は更に輝くような笑顔になられた。