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さて、……と。私には、他に伝えるべきことがあるとハルコンは思った。
「女エルフさん。まだいくつか問題点があるようです。この際ですから、一緒に解決しようと思うのですが、……」
『と、仰いますと? 姫殿下の体質改善だけでなく、まだ他に問題があるのですか?』
「えぇ。姫様の免疫改善の他、ご家族様も、多少体が弱っているようにお見受けしたものですから、……」
『なるほど、ワカりました。ここ最近の体調について、皇帝陛下やご家族様にもお訊ねした方がよろしいのですね?』
「はい。ムリのない範囲で、お願いします!」
『了解しました』
念話を終えるや直ぐに、女エルフは陛下にも緊急の話として、ご家族の体調についてお訊ねした。
すると、どうやらこちらの読みどおり、陛下や皇后様も姫殿下と同様の症状に悩んでいることが判明した。
ハルコンは、さっそく追加で仙薬エリクサー「タイプB」を送る手配を始めた。
あと、……そうだな。今回の件は、結局のところ秋になっても夏の暑さが連日続いたことも原因のひとつなんだよなぁ。
元々帝国は衛生環境が劣悪と言ってよく、この暑さで食べ物は急速に傷んでしまう。
そうなると、最悪食中毒の可能性だって十分あり得るんだよね。
だったら、とりあえず冷蔵庫の追加注文をして、隣国の宮殿までお届けするか。
ハルコンはそうと決めると、早朝にも拘わらずドワーフの親方に念話を送った。
『おぉ~っ、坊。朝早くから偉いな、全く!』
親方は、今日もまた腕を振るって徹夜をしていたようだ。
「親方もちゃんと寝ないとダメですよぉ!」
『わっはっは、面白いんだから、仕方ないじゃろ!』
訊くと、もう既に、こちらの承諾なく冷蔵庫を大中小、様々なサイズを製作していたようなのだ。
マジかよ!? まだ、こちらの研究室に一台だけ、サンプルでお試し期間のはずなのに。
「親方ぁ~っ、またフライングしちゃいましたね?」
『わっはっは、すまん、すまん!』
「もぉ~っ。それで、出来はどうでしょうか?」
『おぉっ。かなりいいぞ! 坊に渡した物よりも気密性が高く、冷気を逃がさない。正直かなりのお薦め品じゃな!」
「なるほど。でも、今度からフライングはなしですよ?」
『おぉっ。ワァ~ってるわいっ! わっはっは』
この人、自分では全然悪いとは思ってない感じだなぁと、……ハルコンは、思わず深いため息を漏らした。