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「とりあえず、親方。冷蔵庫を大中小それぞれ合計で10台ほどを2セット、直ぐに用意できますか?」
『おぉっ。いつでも用意できるぞぃ! 置き場に困っておったから、ドンドン坊の力で運んで貰えると大助かりじゃわいっ!』
「なるほど」
どうやら、ドワーフの親方はいつもの調子で冷蔵庫を作り過ぎてしまったようだと、ハルコンは直ぐに理解した。
まだプロトタイプなのになぁ。製品化前なのに、ちょっと作り過ぎなんじゃないの?
まぁ、冷蔵庫の気密性が高くなっているっていうし、それまでの試行錯誤でいろいろと作り過ぎてしまったんだろうなぁ。
『それで、坊。大体いつ頃搬出できそうじゃな?』
「そうですねぇ、……ファイルド国の王宮と隣国コリンドの宮殿に、それぞれ送りたいと思っているんです」
『なるほど。王宮か。お偉いさん達も直ぐに冷蔵庫が如何に素晴らしいかお認めになるじゃろうて!』
「えぇ、そうです。先ず上の方で利用して頂いて、その評判を聞いた下々の方にも徐々に提供していきたいなぁって」
『確か、坊の言っていたボトムダウン方式じゃったけか。冷蔵庫は、細部まで煮詰めてあるから、仕上がりには、ワシなりにかなり自信があるぞぃ!』
「ありがとうございます。とりあえず、一人用に作った小型の冷蔵庫を、一台引き取らせて下さい」
『おぉっ。こちらでどうじゃな?』
ハルコンは、親方のお薦めの小型の冷蔵庫をちらりと見た。
なるほど。仙薬エリクサー「タイプB」を収納しておくには、丁度いいかも。
「では、そちらを引き取ります。くれぐれも、冷蔵庫の作り過ぎはダメですからねっ!」
『ワハハッ。ワァ~っておるわいっ!』
親方はそう言って、小ぶりの冷蔵庫に両手をかけた。
ハルコンは「それでは!」と一声かけると、さっそくスキル「マジックハンド」でこちらの研究室に転送した。
「では、残りの分は後ほど。こちらが連絡するまで、作り過ぎはダメですからね!」
『ワッハッハ。坊、ワシはもう3日も寝てないから、しばらく休ませて貰おうかね』
念話を切った後、ハルコンはさっそく小ぶりの冷蔵庫を開けてみた。
すると、もう既に氷結魔石が仕込まれており、中はひんやりとしていた。
この冷蔵庫は、氷結魔石を半年に一回交換すればよい設計なので、とてもエコな仕上がりだ。
今回、二国の王室と皇室で利用されて評判を得られれば、この先世の中に普及することが大いに期待できる。
ハルコンは、ニコニコ笑顔で冷蔵庫の蓋を開ける。とりあえず、仙薬エリクサー「タイプB」の水溶液の入ったボトルを数本中に収納する。
女エルフに、さっそく追加の薬剤を用意できたことを念話で報せた。