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27 隣国の姫君の回復_04

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『ハルコン様。早急の手配、誠にありがとうございます。こちらの皇室では、仙薬エリクサー「タイプB」の追加を、今か今かと大変心待ちにされているところでして、……』


 女エルフは、隣国コリンドの帝都にある宮殿で待機中だ。

 ハルコンとしては、今後隣国とのやり取りをする上で、女エルフに現地に留まって貰い、向こうとこちらのパイプ役をお願いしようと考えている。


「それは良かった。では、直ぐに送らせて頂きましょうかね」


『えっ!? ハルコン様、こちらに「マジックハンド」で転送されるおつもりですか?』


「何か問題でも?」


『そりゃぁそうですよ。ハルコン様のそんなスーパーチートスキルを、隣国のトップの方々にお示しになられたら、混乱するのが目に見えています!』


「なるほど、……でも、それで構わないと、私は考えています」


『と、仰いますと?』


「最初の理由として、今回は隣国コリンドの緊急事態と言えます。皇室の方々の早急な健康回復をしないと、頭を失った隣国が迷走し、最悪暴走することも考えられます!」


『確かに。十分あり得る話です』


「二つ目の理由として、両国のトップ同士のホットラインが開かれていることが重要です。その場合、私の持つスキルで大方解決できるでしょう!」


『なるほど、……』


「最後の理由として、私のスキル『マジックハンド』の危険性を正直に伝え、相手方にも理解して頂こうというのが、私の主旨です!」


『ハルコン様のスキルの危険性、……ですよね?』


「はい。例えば、両国の国境に跨るフォリア山ですが、その頂を丸ごと、私は隣国の宮殿の上空数百メートル(現地のスケール方式を、日本式に言い換えています)の高さに転送することが可能です!」


 それは十分可能だと、ハルコンは思っている。


 例えば、先ず私がフォリア山の山頂まで、「マジックハンド」のスキルで移動する。現地の鳥類か獣のNPCを利用すればいいのだから、とても簡単だ。


 次に、カラスかトンビ辺りのNPCに「フルダイブ」して、隣国の宮殿の上空を飛び回ればいい。そうすることで、充分「抑止力」になるだろうとハルコンは思った。


『なるほど。聞きしに勝る驚愕のスキルで、ハルコン様は隣国コリンドを「威圧」されるおつもりなのですね?』


「まぁ、……そういうことになります。でも、私はせっかくのスキルでこんな使い方、絶対しませんからねっ!」


『フフッ、はい。心穏やかなハルコン様が、そんなことを決して為さらないと十分心得ております』


 ハルコンは女エルフの言葉を聞いて、ホッとため息を吐いた。


 私は、どんなに心を乱される事態になっても、決してスキルで人を殺めたりしない!


 私の能力は、人と共にある。私は菅原道真公のように、亡くなった後に雷を落としたりしない。世を乱したりしない。

 だって、私は平和を愛する女薬学者、聖徳晴子の生まれ変わりなのだから、……。

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