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30 火薬_03

   *          *


 王宮で陛下と面会してから、早くも数日ほど経過した。


 夕方辺りが薄暗くなった頃、ハルコン達は貴族寮の庭で、寮の学生達だけのちょっとしたイベントを開催する。

 なんと、納涼花火大会だ。


 ここ最近、もう既に秋の季節だというのに、真夏のように暑い日が続いている。

 それならば、暑気払いに軽くイベントで楽しもう!


 既に、王宮には「火薬」について詳細な報告を行っている。

 ハルコンは、「火薬」の用途である「娯楽から戦争まで」のウチ、娯楽としての「火薬」をお披露目しようと、このイベントを思い立ったのだ。


 ハルコンはミラとサリナ姉、マルコム兄、ケイザン兄、それと寮長の数名に協力を仰いで、花火を作ることにした。


 すると、姉と兄のそれぞれのサークルメンバー達が、手伝いを申し出てくれた。

 そのおかげで、ホンの数日で、たくさんの花火を作ることができたんだ。


 もちろんハルコンは、前世の晴子の時代においても花火づくりをしたことがない。

 だって、危険物取扱いの資格を持っていないからね。


 だが、インターネットの動画投稿サイトで、花火のメイキング動画を視聴していた。


 打ち上げ花火や手提げ花火、線香花火、ねずみ花火やへび花火を、視聴した記憶を頼りに作り上げてしまったのだ。


 そして、その協力者の中から、花火の噂が学校中に大いに広まっている。


 当初、関係者数名で花火のお披露目をする予定だったのが、蓋を開けてみると、今回100名以上集まる、ちょっとしたイベントにまで発展してしまったのだ。


「ハルコン、先程手提げ花火を配りながら人数を確認したら、なんと122名の参加だ。オマエの作った花火は、相当に注目を集めているな?」


「ハハハッ、そうですね。寮長、今回もご助力頂き、誠に感謝します」


「まぁ、そう言うな。私も火薬を扱うことができて、大変貴重な体験をすることができたと喜んでいるのだからな」


 寮長はそう言って、嬉しそうに笑った。

 この寮長という人物は、身分は学生とはいえ、王宮が学校に派遣した役人の一人だ。


 主な仕事は、王立学校の学生達の間の様々な情報を収集すること。

 第二王女殿下であらせられるシルファー先輩の、学校でのサポートをすること。


 そして最新の役割は、……私ことハルコン・セイントークの監視を傍で行うことだ。


 おそらく、今回の花火づくりの様子も、これから開催する花火大会のイベントについても、後日王宮に報告されることになるのだろう。


 とにかく私としては、こういった有能な人物がいろいろなことで手伝ってくれるのだから、願ったり叶ったりだ。


 向こうでは、貴族寮を訪れたシルファー先輩を囲んで、ミラやサリナ姉達が談笑していた。


「皆さ~ん。各自ひとつ、花火をお持ちですかぁ~っ?」


 すると、参加者達は全員、気さくに手提げ花火を振って応じてくれた。

 どうやら、今回参加した学生達全てに、手提げ花火が行き渡った様子だね。


 さて、……そろそろかな?

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