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ロイヤルファミリー向けの白い馬車の中、ハルコンやステラ殿下、ミラの3人は、年齢の近い者同士で興味や関心が共通するのか、どの話題でも大いに盛り上がることができた。
ハルコンとミラは、とてもお美しくて気さくな性格の持ち主でいらっしゃるステラ殿下と、直ぐに仲良くなれた。
殿下は殿下で、大変好奇心旺盛な方のように見受けられた。
ハルコンやミラの語る王都での最新の知識や情報、……更には2人のこれまで行ってきた冒険譚の一部を聞くや、大変目を輝かせていらっしゃるのだから。
そんな具合で3人共に意気投合していたところ、ステラ殿下が、スゥ―ッと、……居住まいを正されなさった。
ハルコンとミラは勘も良く、とても察しがいい。お互い無言で頷き合うと、2人も直ぐに姿勢を正してステラ殿下に向き合った。
「ハルコン様、ミラ様、……これまでファイルド国の皆様が、多くの知識や技術、物資を我が国に送って頂き、何とかここまで持ち堪えることができました。我が国を代表して、大変感謝申し上げますわ!」
そう仰って、深々と頭をお下げになるステラ殿下。
「「頭をお上げ下さい、殿下っ!!」」
思わず、身を前に乗り出して応じるハルコン。
すると、……殿下はハルコンの耳元にするりと口を寄せて、こう囁きなされたのだ。
「ハルコン様。あなた様が、『神の御使い』であらせられることを、ファイルド国ではお隠しになられていらっしゃるのですね?」
「……」
ハルコンが少しだけ返答に窮したところ、殿下は更にこうお話を続けられた。
「えぇ、私どもも、その辺りの事情は重々存じ上げております。ハルコン様のスキルのひとつである『マジックハンド』の詳細について、王宮で訊かれても、もちろんちゃんと伏せておきますので」
「……、助かります」
ニッコリとステラ殿下が微笑まれるので、ハルコンも笑顔を作って応じた。
そろそろ、王都を囲む長大な外壁が見えてきた。
「もう直ぐ到着ですよ、殿下!」
ミラが明朗な調子で声をかけた。
「まぁっ! 今から待ち遠しくて、とても楽しみです!」
そう仰ると、ステラ殿下は表情を先程よりも更に明るく輝かせていらっしゃった。