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33 姫君ステラ・コリンドの留学 その2_01

「おぉっ、ステラ第三皇女殿下。遠路はるばるようこそお出で下さった! 我々ファイルド国は、貴殿の『留学』を心より歓迎いたしますぞ!」


「勿体なきお言葉。陛下より賜りましたことを、心よりお礼申し上げます」


 ラスキン国王陛下のお言葉に、笑顔で返事をされるステラ殿下。


 今回の晩餐の席、王宮のいつものプライベートルームではなく、地球のモジュール換算で80㎡程の部屋で執り行われていた。


 その部屋には、ハルコンとミラも両国の「関係者」として席に着く。護衛の任務を終えた後、そのまま王宮内でフォーマルウェアに着替えて参加していた。


 シルファー先輩に聞いたところによると、外国の来賓を招く際、その相手国の重要度、「格」に合わせて、王宮は部屋をいくつも用意しているらしい。


 そして、今回の部屋は重要度で言うと「上の下」くらい。

 本来なら、これまで戦争の相手だった国のVIPを招いての晩餐会のため、扱いは「上の上」となる。


 だが、ステラ殿下はまだ11歳と幼く、第三皇女という身分で若干「格」が落ちるため、今回のように「上の下」に落ち着いたようだ。


 それに、ステラ殿下の側としても、自身のファイルド国への入国目的が「留学」の範囲のため、お付きの人間は側仕えの女性が一人だけ。


 交渉事のできる役人を伴っていないため、両国の行く末を決めるような重大な役割を演じることはできないのだ。


 あくまで両国の間で交渉事は控え、勉学に励みたいという意思を尊重する形に収まったようだ。


 室内には、ファイルド国王家からはラスキン国王陛下とお妃様。それと第二王女殿下のシルファー先輩の3名がいらっしゃる。


 そして、宰相の他、両国での交渉事に関わる主だった役人が数名。東方3領の貴族家当主とその奥方、子の数名が席に着いているのを、ハルコンは末席からじっと見た。


 ハルコンは既に子爵位であるが、今回はカイルズ・セイントークの子息の一人として、兄や姉達と共に参加。母ソフィアはセイントーク領の留守を預かるため、今回は不参加。


 ロスシルド家は、当主のジョルナムと奥方、そして長男のノーマンと長女のイメルダの4名全員で参加。おそらく、この席に招かれることを重視した結果かなぁと、ハルコンは思った。


 一方、シルウィット家は当主のローレルと長女のミラだけの参加。昨年長男が生まれ、もう直ぐ次の子が生まれるらしい。そのため、奥方は不参加だ。


 ハルコンが王宮詰めの役人から聞いた話では、現在成人を迎えられている第一王子、第二王子、第一王女殿下の3名は、近隣諸国に頻繁に出向いては、仙薬エリクサー「ハルコンタイプB」の営業活動に忙しいらしい。


 その結果、シルファー先輩の役割が、主に内政面で高まっているようだ。

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