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「それで、……サリナ姉様。サークルの決勝展示会は、何時からですか?」
「10時からよ!」
「なら、兄様達のサークルの演武会決勝と被りませんね?」
ハルコンは斜め上を見ながら、指折り数えてみる。
え~と。確か兄様達の決勝は、13時からだったかなぁと思い出す。
「なら、私とミラちゃんも展示会が終わったら、兄様達の決勝観にいこうかしら?」
そう言って、サリナ姉は隣りで笑顔を浮かべているミラに、「ねぇ~っ!」といった調子で首を少しだけ傾げてみせると、ミラも「はいっ!」といって、白い歯を見せて笑った。
「ワカりました。なら、ステラ殿下をお連れして、10時に姉様のサークルの会場に向かおうと思います」
ハルコンは、漸く今日の予定がまとまったため、笑顔を浮かべて見せたところ、……。
サリナ姉とミラは2人揃って、「そうじゃないんだよなぁ」といった表情で、やれやれのポーズをしてきた。
「2人とも、……どうされましたか?」
さすがに、その態度はないでしょと、ハルコンは怪訝に思って訊ねてみた。
「ほらぁっ! 肝心な子がいらっしゃるでしょ? この鈍感っ! このハルコンッ!」
「えぇっ!?」
「もうっ、シルファー先輩のこと放ったらかしていいの? 絶対、ハルコンが迎えにくると思って、待っていらっしゃるよ!」
「ええぇーっ!?」
サリナ姉だけでなく、ミラまでこちらの胸元を小突いてきた。
「ですが、先輩は学校祭の運営委員会のオブザーバーで、本部に待機してないといけないのでは、……?」
「あぁ~っ、我が弟ながら、こうも融通が利かないとは思わなかったわ! あの子は先日まで地方に出張にいってて、戻ったばかりなのよ。根が真面目な子だから、疲れを厭わず働き詰めで、ず~っと、気を張っているに決まってるじゃないっ!」
「えぇっ!? そんなの、ハルコンBを飲めば、24時間働けますよ!」
「こらぁーっ! ハルコンは、女心知らな過ぎっ!!」
「ええぇーっ!?」
「もうっ、私達のことはいいから、これを食べたら、直ぐに本部に顔を出しなさいっ! あの子には、休養や娯楽が必要なのっ!」
「はぁ~いっ」
「いいっ、ハルコンッ! あなたはシルファーちゃんを、精一杯もてなしなさいっ!!」
「そうだよ、ハルコン!」
サリナ姉とミラ、2人がかりで責められてしまい、ハルコンは思わず頷かざるを得なかった。