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「おはようございます、サリナ姉様、ミラ!」
「「おはよっ、ハルコン!」」
お互いニッコリと笑い合うと、姉達は、目の前の席にトレーを置いて座った。
「ホンっと、あなたみたいな優秀な弟を持って、私は幸せだわ!」
「何ですか、姉様。朝から褒めたって、何も出ませんよ!」
姉と弟、お互いに軽いジャブのように言葉を交わしたところ、……サリナ姉は、ここで改まって、姿勢をひとつ正してきた。
「今回の件、……大変世話になったわ。これで何とかウチのサークル、フラワーアレンジメントの展示に間に合うことが出来ました。ありがとう、ハルコン!」
そう言って、姉は深々と頭を下げてきた。それに伴うように、ミラも同じく頭を下げている。
「いいえ、姉弟なのですから、これくらい構いませんよ。それに、王都でもこの問題は大きく取り上げられていますから。姉様が仰らずとも、私はたぶん事態を収拾させるために動いていたと思います!」
ハルコンはそう言って、姉を慮って宥めるように声をかけた。
「いいえ。たとえそうであってもよ。私はハルコンから受けた恩義に、いつか必ず報いるからね!」
「そうですか。でしたら、これで『貸し』ひとつということで。よろしいですか?」
「えぇっ、十分。何かあったら10倍にして返して上げる!」
そう言って、サリナ姉は白い歯を見せてニヤリと笑った。
「それで、その、……実際、どうです? いい感じに仕上がりそうですか?」
「えぇ、ばっちし。皆さんのご期待に応えることが出来ると、確信しているわ!」
「へぇ~っ!」
不敵に笑う姉を見て、ハルコンも思わず笑みがこぼれる。
今回の花枯れの騒ぎの件。
とりあえず、大炎上する前にぼやで食い止めることが出来たけど。
でも、また次に起こることも十分考えられるんだよね。
今回は、サリナ姉様がごく初期の段階で気付かせてくれたから、ギリギリ間に合った。
ホンと、偶々。偶然もいいとこだよ。
とにかく、今日一日は発見の第一功労者である姉上に付き合って、フラワーアレンジメントのサークル見学を楽しもう。
私は子供の頃から、姉上には世話になりっ放しだ。
むしろ、……こちらこそ、姉上には恩義がある。
だから、こうして笑い話が出来て、とても良かったとハルコンは思った。