王立学校祭2日目。
長かった梅雨が明け、本日もまた、初日に引き続き晴天が訪れた。
世間では3連休の中日なので、学校祭はより多くの客で賑わうことが十分予想された。
貴族寮の離れにある居室兼研究分室で、いつもどおりに目覚めたハルコン。
「ふわぁ~っ」
大きく伸びをすると、外部から窓ガラスを通して朝の黄色い陽光が差し込むのを、寝ぼけ眼で見る。
「……」
何だか、本日もまた、素晴らしい一日を迎えられそうな予感がする。
寝間着を脱いで下着姿のまま顔を洗うと、頭をスッキリさせてからサッと軽装服に着替え、食堂に向かった。
食堂には、通常のピーク時間よりも30分程早くいく。
まだそれ程混んではいないものの、学校祭の準備で早起きした学生達が、仲間ウチで固まって食事を摂っている様子が窺えた。
学校祭2日目の目玉のイベントは、サリナ姉率いるフラワーアレンジメントサークル主催の決勝展示会と、マルコム兄とイメルダの両サークル合同の演武トーナメントだ。
朝食の学生達の話題もそれが中心で、どれだけ集客の中心であるメインサークルから客を奪うことが出来るか、あれこれ知恵を絞っているようだ。
ふふふっ。何だか学生の頃に戻ったみたい。
実際、ハルコンはまだ10歳の少年で、王立学校の現役の学生なのだが、……。
でも、前世の晴子の記憶を継続して持っているハルコンからしてみたら、学生達の学校祭にかける熱意とか本気とかに触れた途端、こっちの気分まで盛り上がってしまうのだ。
やっぱり、……いいよねぇ、お祭り。
ハルコンは、朝定食の載ったトレーをテーブルに置きながら席に着くと、うっとりした表情を浮かべ、学生達の活気のある様子を眺めていた。
その視線は、大の大人が、子供達の頑張りを応援する時に見せる余裕のようなものに溢れていて、……ハルコンとしても、特にそれを隠すつもりもなかった。
すると、向こうからトレーを持った姉サリナとミラが2人でやってきた。
その際、食堂のあちこちに点在する小サークルにも軽く挨拶して回っていた。
2人は相部屋のため、寮内では行動を共にすることが多い。
姉サリナとしては、将来弟の嫁さん第一候補であるミラを、今のウチから手なずけておこうと思っているのだろう。
社交的な彼女は、少しだけ人見知りするミラをあちこちに連れ出して、世間を広くさせているのだ。
これはもしかすると、……義姉心というものなのだろうか?
そんなことを、ハルコンは何とはなしに思った。