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久しぶりに、6人のNPC達との会合を終えたハルコン。
その場で皆と別れた後、再び女盗賊と共に、光魔石を設えた街灯の照らす夜道を歩いて帰路に就いていた。
しばらくすると、王都の繁華街から少し離れたところに、ハルコンが寄宿する貴族寮が見えてきた。
「それでは、ハルコン殿。週明けの出張、心よりお楽しみ申し上げるでやす!」
「ふふっ、女盗賊さん。寮まで送って頂き、ありがとうございます。私も来週がとても待ち遠しいです!」
「では、これにて!」
寮の前の車止めで、お互い笑顔で再会を告げ合うと、いったんここで別れた。
ハルコンは、こちらに近寄ってきた守衛に事情を伝えてから学生寮の門をくぐると、一人、ほの暗い館内に入っていく。
館内はもう消灯時間に入っており、ひっそりと静まり返っている。
廊下を抜けてしばらくして裏庭に出ると、月光が周囲を青白く照らす中、庭の奥の離れにある居室兼研究室である自室のドアを開けた。
いつもと同じように光魔石のスイッチに触れると、室内がパッと明るくなった。
先ほどまで無人だった部屋だ。でも、もしもの場合もある。
ハルコンは注意深く部屋の隅々まで目を光らせて、何者かが侵入していないか、じっと観察した。
「まぁーっ、そんなワケないっか!」
以前、ノーマン・ロスシルドが部屋に侵入したことがあったけどさ、……。でも、あれ以降、こちらも用心しているからね。全く、抜かりはないよ! とハルコンは思った。
それから、いつものように水魔石の設置された洗面台で軽く手を洗ってからうがいをすると、外出着をパッパと脱いで、さっとたたむ。
魔石を内蔵した置時計にちらりと目をやると、既に22時を回っていた。
その時間だと、もう貴族寮の共同浴場はとっくに閉まっている。
ハルコンは下着姿で身軽になると、ふと、……自身の二の腕の匂いをスンスンと嗅いでみた。
すると、先ほどの飲食店で付いた焦げたニンニクの匂いと、女盗賊の付けていた香水の残り香が、ほんの少しだけ鼻先をかすめた。
特に汗臭くもべた付きも感じなかったが、寝る前に濡れタオルで身体を拭けばいいかと思い、そのままベッドの上にコロンと横になる。
そして、いつものように、……半ば微睡んだまま、今日一日の出来事を振り返った。