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38 サスパニア出張旅行 その1_10

   *          *


「ハルコン殿、……私は今回のサスパニア出張に、大いに賭けているのですよ!」


 大店の商人は、急遽決まった週明け早々の出張に、今から意気揚々の様子だ。

 ハルコンもまた、これから始まるであろうビッグビジネスへの抱負を聞いていたら、サスパニアに段々と強い興味や関心を抱き始めていた。


 すると、……そろそろ宴もたけなわのようで、……。


「店員さん、酒じゃ! じゃんじゃん酒を持ってこぉんかぁーっ!」


「「「あはは、持ってこぉーいっ!」」」


 席の女子メンバー達も、すっかり出来上がってしまっている。皆さん顔を赤らめて親方の掛け声に同調すると、明るく楽しそうに叫び出した。


 こうなってしまったら、もう手の付けようがない。

 とにかく、メンバーの皆さんの酒が、急ピッチでどんどん進んでいくんだ。


 あらら。皆さん、かなり酔っぱらってしまったなぁ。

 ホンと、……羨ましい。


 ハルコンはそんなことを思いながら、一人ウーラン茶をちびちびと飲む。


「わはは、ハルコン殿。そんなつまらんものを飲まずに、こちらを飲むがよいぞ!」


 すると、こちらを見かねたのか、一級剣士がジョッキのエールを勧めてきた。

 さて、……と。どうすっかなぁ。まだ私は元服前なんだけどさ。


 まぁ、実際この国では子供でもワインを普通に飲むし、こちらとしても、異世界の酒にはかなり興味があるんだよねぇ。


 そう思ったので、一級剣士からジョッキを受け取って、いざ口を着けようとしたところ、……。


「ほら、ハルコン殿、……子供ば酒飲みはなしでやすよ!」


 満面の笑顔でこちらの手からジョッキを受け取ると、女盗賊は、勢いよく一気に呷って飲み干してしまった。


「プゥハァ~ッ! うぅ~ん、ンマァ~いっ、もう一杯ぃ!」


「わはは、女盗賊殿! いい飲みっぷりじゃな! ワシも酒が進むわぃ!」


 ドワーフの親方も、触発されたように一気に呷った。


「私は、こうしてまた皆さんと一緒に行動できて、とても嬉しいですな!」


「ホンとホンと。こんなに週明けが待ち遠しいのなんて、久しぶりっ!」


 大店の商人や女占い師は、そんなことを言いつつ、ジョッキを片手に談笑している。


 まぁ、こんな具合で、……。今回の会合は、週明けのサスパニア出張旅行を前に、大いに盛り上がったのだった。

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