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「ハルコン殿、……私は今回のサスパニア出張に、大いに賭けているのですよ!」
大店の商人は、急遽決まった週明け早々の出張に、今から意気揚々の様子だ。
ハルコンもまた、これから始まるであろうビッグビジネスへの抱負を聞いていたら、サスパニアに段々と強い興味や関心を抱き始めていた。
すると、……そろそろ宴もたけなわのようで、……。
「店員さん、酒じゃ! じゃんじゃん酒を持ってこぉんかぁーっ!」
「「「あはは、持ってこぉーいっ!」」」
席の女子メンバー達も、すっかり出来上がってしまっている。皆さん顔を赤らめて親方の掛け声に同調すると、明るく楽しそうに叫び出した。
こうなってしまったら、もう手の付けようがない。
とにかく、メンバーの皆さんの酒が、急ピッチでどんどん進んでいくんだ。
あらら。皆さん、かなり酔っぱらってしまったなぁ。
ホンと、……羨ましい。
ハルコンはそんなことを思いながら、一人ウーラン茶をちびちびと飲む。
「わはは、ハルコン殿。そんなつまらんものを飲まずに、こちらを飲むがよいぞ!」
すると、こちらを見かねたのか、一級剣士がジョッキのエールを勧めてきた。
さて、……と。どうすっかなぁ。まだ私は元服前なんだけどさ。
まぁ、実際この国では子供でもワインを普通に飲むし、こちらとしても、異世界の酒にはかなり興味があるんだよねぇ。
そう思ったので、一級剣士からジョッキを受け取って、いざ口を着けようとしたところ、……。
「ほら、ハルコン殿、……子供ば酒飲みはなしでやすよ!」
満面の笑顔でこちらの手からジョッキを受け取ると、女盗賊は、勢いよく一気に呷って飲み干してしまった。
「プゥハァ~ッ! うぅ~ん、ンマァ~いっ、もう一杯ぃ!」
「わはは、女盗賊殿! いい飲みっぷりじゃな! ワシも酒が進むわぃ!」
ドワーフの親方も、触発されたように一気に呷った。
「私は、こうしてまた皆さんと一緒に行動できて、とても嬉しいですな!」
「ホンとホンと。こんなに週明けが待ち遠しいのなんて、久しぶりっ!」
大店の商人や女占い師は、そんなことを言いつつ、ジョッキを片手に談笑している。
まぁ、こんな具合で、……。今回の会合は、週明けのサスパニア出張旅行を前に、大いに盛り上がったのだった。