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「では、ハルコン殿。週明けにサスパニアに向われるとのことですが、ウチの隊商も同行してよろしいでしょうか?」
「はい。私としては構いませんよ! 大店の商人さん、……やはり、狙いは『コメ』ですか?」
「えぇ。他にも『メソ』や『ソイユ』にも興味がありますね!」
「えっ!? 『味噌』に『醤油』ですか?」
その言葉に、ハルコンは思わず問い返していた。
確かに「コメ」が「米」だとワカった時も驚かされたのだが、……。まさか、「味噌」や「醤油」までサスパニアにあるんだなんて、……。
「サスパニアには、我々の知らない美味しい食材が溢れているんだそうですよ! 機会があれば、一度現地に出向きたいと思っていたのです!」
「そ、そうでしたか」
すると、傍でこのやり取りを聞いていた他のメンバー達も、自分もいきたいと思ったのか、さりげなく手を上げ始めていた。
「うむ、ならば大店の商人殿、我を護衛に雇わんか? 我一人だが、10人分の働きをして進ぜようぞ!」
「おぉっ、剣士殿にそう言って頂けますと、大変心強い! ぜひ護衛の任、お願いいたしますぞ!」
「ふふふ、お任せあれ!」
「剣士殿、それではぬけがけじゃろう! ワシも雇って貰えんじゃろうか、大店の商人殿?」
「えぇ、ぜひ! 現地の製品を調査するために、鍛冶師の親方のあなたにも、お願いしたいところでしたよ!」
「ワハハ、やったぞぃ!」
ドワーフの親方も、両手を叩いて喜びのダンスを始めてしまった。
そうなると、残りは女子2人、……弓使いの女エルフと女占い師だ。
女占い師はサスパニアの情報をじかに確認したかったようで、護衛依頼を女エルフにすると、その契約も直ぐにまとまった様子。
これで、6人のNPC全員のサスパニア出張が、急遽決まってしまった。
「ふひひ、ハルコン殿、……アタイらだけでなく、いつものメンツになりやしたな?」
ニヤリと笑いながら、小さくため息を吐く女盗賊に、思わず相槌を打ってしまった。
とんとん拍子に話が進むので、正直驚いて、「わぁーっ!」と叫び出してしまいそうな気持ちになってしまったよ。
もちろん、そんな気持ちは悟られないように、……とにかく、顔には出さずニッコリ笑顔で皆さんの参加を歓迎することにしたんだ。