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すると、女占い師が何かに懸念したような表情を浮かべながら、横から更に付け加えるように、こう伝えてきた。
「ハルコン様。私どもの得ている情報ではですね、……サスパニアの現首相は、イッシャラー・カァーンズィと名乗っているのだそうですよ!」
「イッシャラー・カァーンズィ、……ですかっ!?」
ハルコンは、彼女に思わずそう訊き返していた。
だって、……このファルコニアの世界において、一風変わった名前だよなぁと思ったからだ。
「はい。現地でも、大変珍しい名前のようですよ」
「……、なるほど」
そう言って相槌を打ちながら、一方では全く別の考えが思い浮かんでいた。
それは、以前ファイルド国の現国王陛下ラスキンから、直接伺った話に結び付いているんだけどね。
つまり、イッシャラー・カァーンズィなる人物は、かなりの確度で異世界転生者か転移者ではないかということだ。
ファイルド国の建国の父プーキンを始め、王家の歴代君主の中に、転生者達の血が混じっていたという衝撃の事実。
そんな国の超極秘情報が、思わずハルコンの脳裏を過ぎっていたのだ。
「そう、……ですね。私は一度その人物に会って、じっくりと話をしてみたいなぁと思っております!」
「ほぉう、……なるほどのぅ」
こちらの正直な気持ちを伝えると、ドワーフの親方も顎の豊かな髭をいじりながら、ひとつ頷いてみせた。
まぁ、とにかく一度会ってみて、どんな人物か確かめてみないことには何も始まらないんだよねぇと、ハルコンは強く思っていた。
前世の晴子の頃より、その研究活動においてず~っと実践してきていることがある。
それはつまり、フィールドワークを重視すべし、……ということだ。
そして、今回の場合は事象を調査する時と同様に、これからその未知なる人物に会って話をしてみたいと思ったのだ。
とにかく、ハルコン・セイントークになった今でも、……先ず知ったら、現地にいってみる。
そして現地に着いたところで、よく相手の様子を見た後で、改めて会って話を聞いてみる、……ということを実践したいと思ったのだ。
一事が万事、フィールドワーク第一主義がモットーの私だよ!
とにかく、そんな具合にフィールドワークに励んだおかげで、仙薬エリクサーを開発できたワケだしね。
だから、……私、ハルコンが子爵になった今でも、その本質は全く同じ行動原理で進めているワケだし、何も変わっていないんだ。