ハルコンはベッドの上で半ば微睡んだまま、……今日一日の出来事を振り返っていた。
それにしてもさぁ、……。ホンと今日一日、私の身の回りには、あまりにもいろんなことが多過ぎたよ。
とりあえず、朝から晩までに起こったことを思い起こしてみるとさ、……ホンとイベントに事欠くことがなかったと、私は思うね。
先ず、ルーティンワークの書類チェックをやっていたらさ、朝一番にサスパニア出張要請が入ったことから始まったんだよ。
そのあと直ぐ、王立療養所からのヘルプが入ってさ。現場では既に病性鑑定が終わっていて、昼前に療養所に出向いて確認するだけのお仕事だったかな。
まぁ、今回は療養所のスタッフらによる緊急の処置が功を奏していたからね。大事にならないで済んでよかったと思うよ。
私とカルソン教授で、療養所の医官らの適正な処置を確認したら、後は隔離現場に入って、サスパニアの隊商12名の緊急メディカルチェックを行ったよ。
当初の想定どおり、いずれも鳥インフルエンザの陽性だったんだけどさ。
その点は、看護助手のファルマさんに手伝って貰って、ウイルス単体と陽性者の喉粘膜などの細胞サンプルを入手できたからさ。今回も上手くいったと思うよ。
私はさ、……前回のフラワーインフルエンザのパンデミック以降、関係各所に検査キットと万能治療薬のハルコンAとBの両方を備蓄させておいたんだよね。
だから今回もまた、感染者12名全員の容態が悪化する前に、無事解決できたよ。
今回は処置の難しい鳥インフルエンザだったんだけど、こちらの当初の想定よりも毒性が弱かったからさ。
もしかすると、量産品の万能治療薬ハルコンBだけでも、除染できたかもしれないね。
とにかく、このサスパニアの隊商達からは、興味深い情報を入手することができたワケだし、……。
特に、彼ら12名が隊商で移動中、隣国コリンドの沼地で偶然獲得した金属製の小さな容器。しかも、渡り鳥の首に針金で巻き付けてあったそうなんだけどさ。
後で聞いた話では、この容器の細工はなかなか緻密なもので、組織的な関与が認められそうだということなんだよね。
私がファルマさんを使って容器内のサンプルを入手したら、その中身はフラワーインフルエンザだったんだよ。
つまり、そのギミックを行った者は、ある程度大規模な集団で、かつフラワーインフルエンザに感染した渡り鳥が、その体内で鳥インフルエンザに突然変異する仕組みを理解していたということ。
それは、かなりの科学力を有した者でないと、到底できないアイデアなんだよね。
とにかく、一筋縄ではいかないんだよなぁ、……と、ハルコンは半ば微睡みながら思った。