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「それでは女神様。私は、これからどうすべきとお考えですか?」
せっかく、女神様がこうしていらっしゃったのだ。
だったら、こちらとしても遠慮などせず、現在抱えている疑問や難問のヒントを授かってもよろしかろうと、ハルコンは思った。
「そうですねぇ、……。晴子さんの所属するファイルド国は、現在『善隣外交』をされていらっしゃるのでしょ? なら、晴子さんもその方針に従うべきではないかしら?」
「なるほど。確かに、そうですね」
「それに、サスパニアに送ったあの子達には、特にスキルを持たせておりません。何しろ、彼らは地球で得た知識を基に、こちらで活動を再開しただけなのですから、……」
「そうでしたか、……。なら、私が頂いたチートスキルを使っても、……構いませんか?」
「はい、どうぞどうぞ。でもね、晴子さん。『皆、仲良く!』、……ですよ!」
「了解いたしましたっ!」
女神様のお話を伺ったら、今後どうすべきかといった方向性が漸く見えてきたと思った。
すると、つい、……こちらの強張った頬も緩んでくる。
「ふふっ、晴子さん。やっと笑顔になられましたね?」
女神様はそう仰ると、両手の人差し指でそれぞれ口角を上に押し上げてから、極上のスマイルをお見せになられたのだ。
そのご尊顔の、知的なのにとても愛らしくて、かわいらしくて、……。
一瞬、言葉を失ってしまいそうになった程だ。
「おっ、お美しい、……です」
思わず赤面しつつ本音を漏らしてしまうと、女神様も「あらっ!」と小さく呟いて、少しだけ表情を赤らめていらっしゃった。
「たはは、……。私は立場を忘れてはしゃいでしまいましたっ!」
「女神様、私もです!」
「「ふふふっ、あぁーっ、楽しい!」」
こうしてしばしの間、……お互いに相手を思いやるように笑い合った。
それから、……女神様はどこかくすぐったそうに、こう仰った。
「うふふっ、晴子さん、……以前よりも少しだけ大人びてきましたね? この後で元服したら、もう直ぐ結婚ですね?」
「私が結婚、……ですか? まだ、実感が沸きませんね」
「ほらぁ晴子さん! 私、以前にも申しましたよね? もっと恋愛を楽しみなさいって!」
「えぇ、……そう仰ってました。でも、……私は昔から色恋とやらに疎いものでして、……」
その言葉をお聞きになられた女神様は、笑顔のまま、深く長いため息を漏らされた。
すると、先ほどまでの笑顔とは打って変わって、眉間に少しだけ皺を寄せながら、そのご尊顔をズズイと近づけてこられたのだ。
「ダメよ、晴子さんっ! あなたには甘ぁ~い誘惑がなさ過ぎて、まるで隙がないのよっ!」
「は、はぁ、……」
「いいですかっ! これから晴子さんに課題を出しますっ! 今度のサスパニア出張旅行には、必ずシルファー・ファイルド、ステラ・コリンド、ミラ・シルウィットの3名を連れてゆきなさいっ! いいですねっ!」
「はっ、はいっ!!」
女神様の剣幕に、思わず同意せざるを得ないハルコンだった。