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「ねぇ、晴子さん。あなた、もういっそ人間でいることに拘らないで、早いとこ、私と同じ『神』になりませんか?」
「えっ!?」
思わずビックリして、……。不敬にも、女神様のお顔をまじまじと見つめてしまった。
でも、女神様の麗しきスマイルに、いささかの曇りも見つけることができなかった。
「あぁ、そうですね。男神でも女神でも、どちらでも私は構いませんよ。『神』の一柱として、晴子さんが男女いずれであろうとも、私にとっては些細な問題に過ぎません。だって、晴子さんが私達の仲間に加わること、それこそが一番大事なことなのですから!」
幾分語気を強められてそう仰ると、女神様は頬をポッと赤く染められた。
むむむ。以前伺ったお話で、ただの冗談かと思っていたんだけど、……。
でもね、……まさか、本気でいらっしゃったとは!?
女神様のそんなご提案に、こちらとしては、どう応対するのが正解なのだろうか?
ちらりと女神様のお顔を窺うと、ニコリと極上のスマイルで返されてしまった。
なるほど。これまた全く隙のない笑顔だ。
この方の、私への思い入れの深さには全く以て頭が上がらない限りなのだけど、……。
でもさぁ。私がそんな重責を担うことなど、100億年早い気がするんだよねぇ、……。
だから、絶ぇ~っ対、断っちゃうよっ!
「いやいやいや。いくら何でも、そうはならんでしょ? 女神様、私は生まれ変わってまだ間もない11歳。元服前の、ただの男の子ですよっ!」
「あらぁっ、晴子さん! 私がこう申し上げると思って、先に予習でもされてこられたのですか?」
「してませんけどっ!」
「ふふっ、でもね、晴子さんが最後にはちゃ~んと仲間に加わって下さると、私は固く信じておりますからね!」
そう仰ってから、女神様は薄く目を細めてお笑いになられた。
その表情には、およそ人間には表現できそうもない深みが見受けられた。
なるほど、……女神様は、今後私に起こることを予めご存じだからこそ、いささかの迷いなくこう仰られているのだろうとワカった。
「私は、この異世界で人間の男の子に生まれ変わってからというもの、家族に恵まれ、友人も少なからずできました。多少の苦労こそありましたが、人生修養を積むことができたと思っております!」
「なら、私達の側にきて頂けますか?」
その問いに対し、私はもう既に覚悟を決めている。
後は、その意志を女神様にきちんとお伝えするのみだと、ハルコンは思った。