「……、というワケなんです。この件について、父上は如何お考えになられますか?」
「ふむ。なかなか、込み入った問題ではあるな。さて、ローレル卿もミラ嬢の件で、この問題に深く関わっておられるのだが、……。貴殿は如何にお考えか?」
「さて、……私から申しますと、ミラの件はハルコン君に全てお任せしてもいい、と考えております!」
そう仰って、ローレル卿がニコリと笑いかけて下さるので、こちらとしても正直ホッとした。
今から半刻ほどさか上る。
朝の6時半過ぎ。場所は王都の貴族街にある、セイントーク別邸だ。
昨晩の女神様とのやり取りの件で、一度思慮深い父カイルズに相談したいと思い、早朝からアポなしでハルコンは王都の実家に訪ねたのだ。
すると、王都別邸を束ねる副家令に案内されて客間に向かうと、ミラの父君ローレル卿と面会中だった。
「お久しぶりです、ローレル卿。お元気でいらっしゃいましたか?」
「おぉっ、ハルコン卿。貴殿の活躍を日々耳にしているよ。私は元気です。貴殿は如何か?」
「い、いいえ、恐れ多いです。以前と同じく、ミラの父親として接して頂ければ嬉しいです!」
こちらから意識的に笑顔を作って応対すると、ローレル卿も笑顔でうんうんと頷かれた。
実を言うと、もうセイントーク家とシルウィット家の両家は姻戚関係になっている。
それは、私ハルコンとミラが婚約をしたからというワケではなく、……。ローレル卿の従弟がセイントーク家に婿入りしたことでこうなったのだ。
ローレル卿ことローレル・シルウィット子爵は、ミラの父親だ。若さに溢れ、温厚で柔軟な発想を持つ美丈夫でもある。
最近は彼の領地経営も軌道に乗り、そろそろ子爵から伯爵に陞爵(しょうしゃく・爵位が上がること)するのでは、と貴族達の間で噂に上がっている人物だ。
「ハハハ、お陰様で。ハルコン君、キミこそ最近目覚ましい活躍だと、私は伺っているよ!」
そう言って、お互いにニッコリと笑い合う。
「ハルコン。オマエがここを訪ねてくるのは珍しいな。そう言えば、来週早々サスパニアまで出張旅行に就くと聞いているのだが、……。大方、その件についてかね?」
おもむろに、父カイルズが訊ねてきた。
ハルコンはひとつ頷くと、「えぇ、実はですね、……」といって話を振りつつ、父カイルズの方に向き直った。