星夜の静けさ
深い夜空には、満天の星が広がっていた。翔は氷室の入り口で立ち止まり、過去の出来事を思い返す。八兵衛、三次、そして藩主たちとの日々が、脳裏を駆け巡る。「ここに来た意味は何だったのか?未来に戻るべきなのか?」迷いが胸を締め付ける。
藩主が言っていた「祈りの氷」の伝承を信じ、氷室の中央に祈りの灯りを設置する翔。空には流星群が現れ始め、星が降るように輝いている。八兵衛や三次、村の人々が遠くから見守る中、翔は静かに目を閉じた。
未来を願う声
翔は氷室の中心で両膝をつき、心の底から願いを込めた。「自分を育ててくれた未来の地に帰りたい。そして、江戸時代で学んだことを未来へ繋げたい」と。祈りを捧げると、氷が淡い青白い光を放ち始めた。
その瞬間、星の一つが急降下し、氷室を明るく照らす。周囲にいた八兵衛たちは目を丸くし、息を飲む。「翔、奇跡が起きたのか!」と八兵衛の声が響く。
別れの瞬間
氷の光は次第に翔を包み込み、空間が震えるような感覚が広がった。翔は振り返り、人々の姿を見つめる。「皆、ありがとう。君たちと過ごした時間は一生忘れない!」涙を浮かべながら叫ぶ翔に、八兵衛たちは手を振り続ける。「未来でも元気でな!」三次が声を張り上げ、藩主は静かにうなずいて見送った。
氷室の光が一気に強まり、翔の姿は霧のようにかき消えた。彼がいた場所には静寂だけが残り、氷室の温度が一瞬、ひんやりと冷え込んだ。