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第2話 転生前はブラック企業勤めの34歳独身男だった件

目が覚めると、ゲームの世界に転生しておりその中でも印象の薄い序盤の退場悪役キャラ 主人公の兄 北野 城二だった


「北野 城二かよ...主人公とは言わないけど、仲間の友人キャラとかあったじゃないか...」


腕を組み部屋をウロウロしながら思案する...


「不味い...不味いぞ...このままだと婚約破棄イベントを経て主人公との決闘イベントへ序盤のチュートリアル一直線だ...」


「北野 城二は嫌いなキャラだから、主人公の見事なザマぁを序盤に楽しんでたけど、自分の身に起こる事となれば話は別だ...なんとか回避する方法を...」



🔶


俺が、この先に起こる展開に詳しいのには訳がある


転生してくる前の俺の名は 南原 譲二(なんばら じょうじ)34歳独身のしがない中年サラリーマンだ


勤めてる企業はゲーム開発関係の会社...の孫請け会社だ


従業員数も10名足らずの中小企業、社長は時代の兆児とか自分で名乗って遊び回る放蕩者


創業者でる前任の社長が病気で長期離脱する際に、息子である2代目社長に会社を任せた訳だ


代替わりすると、業績は下降の一途...しかし仕事量は膨大...薄給な上の長時間残業...しかも残業時間は44時間超えると勝手に切り捨てされる


元々は従業員も30名近く居たのだが、社長に嫌気がさしたり過酷な労働で精神が参ったりして次々と辞めてしまっていた


正にブラック中のブラックだ


そんな問題だらけの会社だが前任の社長が健在の頃は業績も順調で、5年前には大手ゲームメーカーからゲーム開発を委託されたりしていた


そこで俺がメインで担当させてもらって作ったのが「魔都東京1999」という訳だ


しかし「魔都東京1999」を始め大手に開発を委託されたゲームはどれもメガヒットとは行かず会社を躍進する切っ掛けにはならなかった


俺は前任の社長と自分が携わった「魔都東京1999」に思い入れが有り辞めると言う思考にはならない

そんな俺は、今日も今日でデスクに噛り付いて顧客から送られてきたゲームのデバックをしている


「おお、南原君頑張ってるねぇ~俺は今から知り合いの商社の営業事務の女の子達と飲み会だから先に失礼するよぉ~」


「...はい、社長お疲れ様です...」


「なんだなんだぁ~覇気の無い、あぁそう言えば君前に付き合っていた彼女に捨てられたとか言ってたねぇ~女性は大事にしなきゃいけないよぉ~それじゃお仕事頑張ってぇ~」


若社長は派手なスーツ姿で今時あまり見かけないサイドバックを抱え会社を出て行った...閉まるドアを血走った目で睨み付ける従業員達・・・


「アイツ!!なんなんですか!、南原さんが彼女さんと別れたのだってアイツがちゃんと仕事せずに遊び回ってばっかりだから、南原さんがフォーローに回る羽目になって、そのせいで二人の時間が無くなって」


「...いや...良いよもう3年も前の話しだ...それより仕事、仕事...」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・


結局おれが一番最後か...なんとか駆け込んで終電には間に合った


家に帰り電子レンジに買って帰ったコンビニ弁当を入れタイマーをセットする


手早く着替えを済ませ、温まった弁当をキッチンに立ったまま食べ容器をキチンと分別してから、浴室に行きシャワーで軽く体を洗う、時計を見ると既に23時を回ってた


テレビの電源を入れ番組を見る事もなくゲーム画面を起動する...

「魔都東京1999」とタイトルが表示されコンティニューで続きのファイルを選択する



『尊・・・やっと此処まで来たのね、至高の神の力を得た貴方は大和の国の勇者...ヤマトタケル』


『私はきっと貴方との未来を掴み取るわ』


メインキャラの会話の後でエンディングのテロップが流れる


「あぁぁ良いなぁぁ藍瑠エンディングは、癒しだよなぁ...他にも雨宮も良いし、九鬼も天草も土方も良い...後、皆川先生も良いよなぁ~...立花もまぁ良いかも...」


俺は仕事が辛くても、彼女が居なくても、この魔都東京1999の中のヒロイン達に日々癒されて幸せだった


ガコンとお湯を沸かしていたケトルのスイッチの音がした


「コーヒー飲んでから、雨宮ヒロインルートでニューゲームするか...」


睡眠時間を削ってまで、やり込んでいるので精神は癒されても体の方は限界だった様だ...立ち上がってキッチンに向かってる所で視界がグニャグニャと歪み、その直後後頭部に激しい痛みを感じ意識が消える...





🔶


改めて自分の顔を見て北野 城二の記憶を辿るが、思い出すのは南原 譲二だった時の記憶だけだ


ふとテーブルの上に置いてあるスマホを確認すると1通のメール、親指の指紋で認証するとロックが解除される


「おおおって当たり前か...城二のスマホだもんな」


メールのアイコンをタップすると、親父と書かれた宛先からだった


メールの内容をスクロールしながら確認する


『城二、今回の秘境テスト結果を残せなかったら...解かっているな...儂も母さんも良い報告を待っているぞ』


「そうか...秘境チュートリアルのイベントか、でも城二はこのイベント前に退場するからな...まずは藍瑠からの婚約破棄イベントを乗り切らんとな」


そう考えていた時ふと目に入った日にち...4月21日





「マジか...婚約破棄イベント...明日じゃんか」












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