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第69話 全国魔刑部大会、決勝大会初日


〇東京ドームシティ、駅前広場



全国魔刑部大会は今年で13年目を迎える、全国の地区大会を勝ち抜いた、選りすぐりの12校が栄光の決勝大会の開かれる、この東京ドームへと集結した


俺たちの高校「東光高校」は、前回大会のAランク戦で圧倒的な力を示し、大会MVPとなった可憐と、Bランク戦で、白熱した戦いを見せ善戦したBランク準優勝の小百合等の活躍で最優秀高校に選ばれ、2028年のシード校として、決勝大会の12校へ名を連ねている


当然下馬評でも圧倒的で、今年の夏大会でもダントツの最優秀高校有力校だ


対抗馬として、前回Bランク戦で小百合相手に完封して見せた京都の古豪、試衛学園...その魔刑部をい率いるのは、小百合を下し見事今大会からAランクとして出場する3年の土方 翼ひじかた つばさ


土方家は京都に本店を構える「つち方」という老舗呉服屋で、全国の一流商業施設に店を構える高級和服店を経営している


ちなみに以前、天音が出場した博覧会で池上家の3名が着ていた物も、可憐が着ていた物も全て、「つち方」呉服店のオーダーメイドである


そんな、老舗高級呉服屋の一人娘である翼は、呉服屋の娘に恥じない器量良しで大和撫子という言葉がぴったりの完璧な黒髪美女、だが一方で時折妖艶な雰囲気を漂わし男を惑わす魔性の女の一面も見せる


翼は木花之佐久夜毘売コノハナノサクヤヒメと契約しており、神衣を習得している...しかし都東京1999では描かれていたのはBランク戦決勝で初めて神衣を纏い、小百合に圧勝する描写のみだ、Aランクに参戦する話はどのルートにも無かった事だ


そして、これも重要な事だが、土方 翼も恋愛ヒロイン対象キャラなのだ、その初登場の状況が知ってる状況と違ってる...これは...


俺は、そんな思考を巡らしながら他の部員を待って居ると...


「良かったぁ...ここで待ってたら北野さんに会えると聞いて、待ってました!」


「先日は勝手に職場に押しかけしてしまい申し訳ございませんでした」


俺と真白の前に駆け寄って来て頭を下げるのは、宝蔵院さんと柳生さんだった


「お、お二人ともこんな所で!?」


二人は少し苦笑いして紙袋を俺へと手渡す


「これを北野様へ渡したくて」「気に入って頂けると有難いのですが」


首を傾げながら俺は二人から手渡された紙袋から中身を取り出す


「これは!?破魔十兵衛の書と胤舜の珠!?...こんな貴重な物を!?」


二人は顔を見合わせ笑顔で頷き


「はい、古く旦那の家に伝わる物らしいのですが、旦那が是非、北野様の役に立ててもらおう!と」


「家もです、旦那に相談して木の実の数珠に興味が有りそうだったと言うと、恩人に持って貰える方がいいって持たせてくれました」


俺はふと足下のトラに視線を向けると、無言で頷いた


「有難う御座います、実は先日のお礼についてお言葉に甘えだせて頂けたら此方の品を頼もうと思っていたので、本当に有難う御座います」


二人は俺が頭を下げると自分も慌てて頭を下げて...はたから見たら滑稽だったろう


「ところで、北野様はDランクとお聞きしました、だったら3日目ですね、私達応援にこさせて頂こうとおもってます」



俺は、紙袋と一緒に可愛らしい折り紙で作った便箋を二つ受け取った


『じょうじおにちゃんへ』『じょうちゃんへ』


2つの便箋の裏には夫々「小春より」「洋子より」と送り主の名が描かれてあった


「これは?僕宛ですか?」


柳生さんと宝蔵院さんは、笑顔で頷く...断りを入れ二人の目の前でハートのキラキラしたシールをはがし便箋の中の手紙を開く


『じょうじおにちゃん、小春をくるまから助けてくれてありがとう、おにちゃんのしあいおうえん行くよ:小春』


『じょうちゃん、洋子だよ、ようこはじょうちゃんが好きになりました、洋子が大きくなったら、およめさんにしてね:みらいの花よめ洋子』


手紙は何度も消しゴムで書き直した痕跡が有り、二人が一生懸命俺宛に気持ちを込めて書いてくれている姿が目に浮かんだ


俺の横から手紙を一緒に見ていた真白も、内容を何度も読み返し優しく微笑んでいる


「小夏さん、海子さん、小春ちゃんと洋子ちゃんにお手紙有難うとお伝え下さい、この手紙で勇気100倍です」


「フフフ、わかりましたでは、試合楽しみにしてます」「頑張って下さい」


二人は何度も頭を下げながら、駅の方へと去っていった


俺が大事に手紙を折りたたみ鞄にしまっていると、トラに話しかけられる


『城二、それがお前の言う隠しアイテムという奴か?』


「あ、あぁ...破魔十兵衛の書と胤舜の珠な」


手紙を仕舞ったあと、手渡された紙袋の中から包装されてる中身を取り出すと、古びた古書と年季の入った数珠が出て来た


「これが...」


古書をペラペラと捲り中を確認してみたり、数珠を腕に巻き付けてみたりするが...


(全然効果が有る様に思えないな...?)


「あっ城二君お待たせぇ~早いねぇ~」


前方から声がし、此方に手を振りながら駆けて来る天草先輩の姿が見えたので、俺は鞄に古書と数珠を仕舞い


「いえいえ、俺達も少し前に来たところですよ」


天草先輩は他の部員を引き連れ、駅の改札から現れた


「やっほぉ~城二っちもマシロンも、カフェぶりぃ~今日も暑いねぇ~」


と、同時に横のバス停からは、天音さんが夏の暑さもふっとぶ陽気さを振りまき到着した


「それじゃ行こうか」


天草先輩は、「大会出場校関係者専用」と書かれた立札の有るゲートへと歩きだす


「あれ?九鬼先輩は、一緒に合流しないんですか?」


「可憐はAランクだしね、無差別級になるから、ボクら学生以外も出場するし色々と手続きが有るんだよ」


...やはり、俺の知ってる魔刑部大会とは違うのか?魔都東京1999では、そんな設定入れて無かった、あくまで高校生だけを対象とした大会だったはず...


そんな事を考えながら選手控室へと向かっていると、急に天草先輩が立ち止まる


「あら、久しぶりやね、小百合さん」


「試衛学園選手控え室」と掲げられた部屋に入ろうとしていた一団に声をかけられた様だ


「...翼」


天草先輩の視線の先には、ハーフアップの黒髪に藤の花をあしらった髪留めを付けた、色白の美女が不敵な笑みを浮かべていた...


(彼女が土方 翼...試衛学園魔刑部部長にして九鬼先輩と同じAランカー...そして)


天衣無縫の所有者か...






















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