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Episode3 - 次に繋げてみよう


『サブタスク【ゾンビを討伐せよ】を達成しました。報酬を受け取りますか?』

「ッ、よし今日はここまでにしようか!アインス、他の子に聞こえるように合図よろしく」

「ワンッ!」


 同じ手法で2級ゾンビを倒していると。

 突如頭の中にA.S.Sの声が響き、肩を震わせてしまいながらも軽く頷いた。

 倒す事が出来たのは凡そ6体。他のわんこ達が倒しているであろう数も考えると、その数は二桁に軽く届いているだろう。

……タスク達成出来たのは嬉しいけど……流石に多いな。どういう事だろ。

 嬉しい反面、少しばかり2級ゾンビの数の増加にきな臭いものを感じてしまう。

 過去の記憶を考えると……こうして2級などのゾンビが増える時は大抵、それらよりも上位の存在が近場に居るか、レギオンからはぐれた奴を見つけた時くらいなのだが。


「五十嵐お疲れ様。最後の方は全然ムラなく発動出来てたじゃん」

「お疲れ様です。柊先輩が毎回アドバイスをくれてたので当然ですよ。ありがとうございました!」

「そんなそんな。でもまだ気を抜かない事。2級を延々倒してたけど、普通にこの辺には他のゾンビも居るんだから」

「確かにそうですね……了解です」


 アインスの遠吠えが響き、他のわんこ達への指示が伝わったであろう頃。

 私達は周囲を警戒しつつも、拠点へと向かって動き出す。サブタスクを達成した今、無理してゾンビを狩る必要はない。却って怪我をしてしまうリスクもあるのだから。

……っとと、確認しとかないと。

 私は周囲にウィンドウを出現させ、ポイント交換システムを確認していく。

 今回達成したサブタスクの報酬は、それのアップデートだったのだから。


「ッ、ふぅー……」

「?どうしました?」

「いや……ちょっと唾が気管に入りそうになっただけだよ、大丈夫」

「そうですか」


 その内容を見て思わず息を呑んでしまい、近くを歩いていた五十嵐に何事かと視線を向けられたものの。適当な言い訳をして、私は再度目の前のウィンドウへと視線を戻す。

 そこに表示されていたのは……アップデート以前には表示されていなかった武装の数々だ。安く粗雑なモノで10ポイントから交換でき、クオリティが上がるにつれて必要ポイントが際限なく上がっていくのを見て、軽く戦慄してしまう。

……これ、今私のポイントが……大体、コツコツ貯めて10万くらいだから……うわ、普通に銃とか交換できちゃうじゃん……。

 過去では異能を自覚できる形で持っていなかった為に、最終的に体術から銃へと武器を変えていた為、扱い方は分かっている。しかしながら、銃という武装はこの終末世界においてあまり信用出来るとは言い難いものだ。

 絶大な攻撃力という、分かりやすいメリットの代わりに技術面での知識が無いと全く使い物にならないという多大なデメリットが付属しているのだから。

 とは言え、そのデメリットに関しては私が扱う分には無視出来る……のだが。


「……んー、でも無いかなぁ……」


 五十嵐に聞こえない様に呟きつつも、頭で考えていた内容を振り払う。

……とはいえ。私もそろそろ武器くらいは持った方がいいよねぇ。

 思い返せば、私が今世でゾンビに使った武器という武器はホテルのバターナイフくらいだった事を思い出す。それ以外はその場にあったモノを利用している為、武器に頼ったような戦い方をしてこなかったのも大きいだろう。


「五十嵐はさぁ」

「はい?」

「私が持ってたら良いなぁって思う武器とかあったりする?」

「武器、ですか?ゲーム的な?」

「いや、普通にゾンビと戦う用の武器。体術で戦うのも良いんだけど、そろそろ武器も使おうかと思ってね。物資の中に色々と武器があるのを思い出したから、この際に使ってみようかなって」


 適当な事を言いながら、五十嵐に意見を聞いてみると。

 彼女は少しばかり悩むように虚空を見つめた後、


「日本刀とかどうです?アニメとかだとゾンビ相手に使ってるのを見たりしますし……柊先輩が刀もって戦ってる姿を見てみたいですし」

「それ、後半がメインでしょ。意見としては」

「そりゃそうですよ?」

「……欲望に忠実だなぁ。まぁいいや……うん、ありがと。参考にするよ」


 日本刀。追加されたラインナップの中に存在しているし、何より私も多少なりとも扱える武装であるのが良い。

……剣道の要領で使える……よね?多分。

 後の問題は、異能と組み合わせた時の立ち回り方くらいだろうか。

 【液体操作】だけならば十二分に活用する術はあるだろうが、今後更にコピー出来る異能が増えないとは限らないのだから。

 どうせ使うのであれば見栄え良く、それらしい使い方をしたいではないか。


「暫くは素振りの練習かなぁ」

「ふふ、手伝いますよ。こう見えても私、剣道やってたんです」

「それは良い事を聞いちゃったなぁ。よろしく頼むよ」

「はいっ!」


 一応、私もやってはいたがすぐにやめてしまったが故に型や振り方くらいしか覚えていない。

 その為、五十嵐が教えてくれるというのであれば大分有難い。

……あとは、と。次に達成したいサブタスクを探そうかな。

 自分の中での目標……日本刀を使えるようになる事が定まった所で、次の行動目標をどうするかを考え始める。

 暫くサブタスクを消化する方向で動くのは決定事項ではあるが、今回の【ゾンビを討伐せよ】の様な何も考えずに出来るようなモノも少ないのが事実だ。

 現在発行されているタスクの一覧を流し見しながら、どれにするかを吟味していると。


「おっ」


 小さく声を発してしまう程度には良いサブタスクを見つける事が出来た。

 特に制約も付いておらず、その上で必要ではあるが面倒臭いと感じていた事をこなせる内容。

 そのサブタスクの名前は――【領地を一定範囲以上広げよ】。

 内容は――領地を規定の範囲以上に所有する事で達成する事が出来、報酬としてまたもポイント交換システムにアップデートがされるというモノ。

……良いじゃん良いじゃん。今度はどんなのが追加されるのか気になるし、丁度良いし。

 山の領地化は終わっていない。

 周囲の地域の清掃活動等がまだ終わっていないからだ。だが、それをサブタスクの達成の為に行えるのであれば……本当に丁度良いと言わざるを得ない。


「よし、五十嵐も多分ここでの生活に慣れてきたと思うし……ちょっとだけ一緒に遠征しようか」

「遠征ですか?物資の回収に?……必要です?」

「まぁ物資の回収は必要ないね。でもまた五十嵐達みたいな人達を見つける可能性もあるからね。定期的に行く事にしてるんだ」


 尤もらしい理由を付け、ある程度日本刀が使えるようになったら行く事を約束して。

 私達は拠点へと辿り着く。そこには既に他のわんこ達が集まっていた為、それぞれを労った後に今日の活動を終了し休む事にした。

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