4日目の夕方
僕とゼンとノンは
ノンと出会った森を
北西側から入り
遺跡へ続く道を進んでいる
道らしい道はないが
トメさんの旦那さんから
受け取った簡単な地図を
頼りにした道だ
これまで
魔物と遭遇してこなかった
ことを考えると
トメさんの旦那さんは
ただ遺跡に向かうための
最短ルートを描いた
というわけではなく
魔物の住処を避けるルートを
描いてくれていたことがわかる
トメさんの旦那さんは
口数こそ少なかったが
たいまつしかり
遺跡へのルートを描いた
地図しかり
僕たちのことを
さりげなくサポート
してくれていた
トメさんも
トメさんの旦那さんも
本当にいい人達だ
今度モリの村に
立ち寄ることがあったら
もう少し懐いてあげても
いいかなっと思った
「いてっ」
ゼンが
小さく声を上げる
だが
すぐに何事もなかった
かのように先へと進む
「それにしても、
南側とは違って
こっち側はかなり
ジャングル状態だな」
「ええ、
この地図がなければ
道を踏み外しても
おかしくはありません」
「トメさんの旦那さんには
本当に感謝しないと」
「そうですね。
とはいえ、足場も悪く
一歩進むだけでも
体力を奪われます」
「今日は、
遺跡の手前で休み、
明日本格的に遺跡に
入ることにしましょう」
「ああ、
それが良さそうだ」
「もし、
休めそうなところを
見つけたら教えてくれ」
ゼンは
僕とノンにそう伝えると
引き続き先頭に立ち
遺跡に向かって進んでいく
僕とノンへの
負担を減らせるように
目の前の草木を
踏み固めながら
しばらく歩いていると
休憩できそうな場所を見つけた
ゼンは
その場所の周辺にある
草木を踏み固めながら
休憩しやすいように
整備を始めた
「燃やせそうな
木を集めてくる」
ゼンはそう言うと
休憩ポイントから
離れすぎない範囲で動き回って
焚き火に使えそうな木片を集める
僕は近くにある
木に登り周囲を警戒し
ノンは
何やら近くに咲いてる
植物を集めている
各々が
誰に頼まれた訳でもなく
自分のやれることを
できる範囲で行動に移し
自主的に行動し
安心して休める場所を
協力して作る
これが
僕たちなりのチームワーク
といったところなのだろう
そして僕たちは
日暮れと同時に焚き火を囲い
ノンは食事を作りはじめた
「今朝トメさんから、
果物や玉ねぎ、
それに豚肉の燻製など
たくさん頂いたんです」
「明日は、
何が起こるか
わかりませんから」
「スタミナのつくものを
作ろうと思います」
「お!
それは楽しみだ!」
ノンは
トメさんからもらった
果物や玉ねぎをすり下ろし
塩と
オリーブという実から
製法された油を混ぜ
焚き火の火で
豚肉の燻製を軽く炙ってから
器に盛り付けると
混ぜて作ったタレをかけ
最後にその上から
香草を細かく刻んで
軽く振りかける
「はい、
お召し上がりください」
ノンはそう言うと
僕とゼンの目の前に
料理が盛り付けられた器を置く
「うおー!
すげーうまそー!
いただきます!」
ゼンは
勢いよく料理を食べ始める
ノンも
ゼンが美味しそうに
食べてくれる姿を
見守ってから食べ始めた
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
食事を終え
ゼンは満足そうな
顔でノンにお礼を伝える
そして
ノンは器を片付けると
ゼンの側に移動し
横に座った
「ゼン、
ちょっと失礼しますね」
ノンは
ゼンの横に座ると
そう断ってから
右腕を軽く掴む
「うっ...」
「やっぱり」
ノンが
ゼンの右腕を掴むと
ゼンは
苦痛の声を上げた
「さっき、
ここに向かう途中で
植物のトゲに
刺されたのではないですか?」
「あぁ、
そのうち治ると
思っていたんだが、
結構腫れてきてるな」
「見せてください」
ノンは
ゼンの正面に移動して
右腕の腫れている所を確認すると
何やら真剣な表情で
しばらく何かを考えた後
自身の道具袋から
薬草を取り出し調合を始めた
「これを飲んでください」
ノンは
調合した薬を
ゼンに飲ませる
「それから」
ノンは
続けて腫れた部分に
薬草を巻きつけ縛りつけた
「とりあえず、
今日はこれで安静に
してください」
「ああ、わかった。
心配してくれて
ありがとう」
ノンは
ゼンに笑顔を見せると
元いた場所に戻った
「ノンは
薬学の心得も
あるんだな」
「いえ。
この遺跡調査に
向かうことになった際」
「薬学の知識がある方に、
少し教えて頂いたんです」
「へぇ〜、
いい先生に
教えてもらったんだな。
おかげで助かったよ」
「ふふ。
どちらかというと
私の方が、
助けられてばかりですよ」
「さぁ、
明日に障るといけません。
その傷を癒すためにも、
今日は早めに
休むことにしましょう」
「そうだな。
じゃあノン、モネ
おやすみ」
「おやすみなさい」
僕もノンに続けて
尻尾を一振りし
あいさつを交わしてから
ノンを守るように眠りにつく
チュン...チュンチュン...
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
ノンは
ゼンが体を起こしたのを
確認すると
近くに座り腕を確認する
「よかった。
腫れは引いたみたいですね」
「ん?本当だ。
痛みもなくなってる」
「朝食は、
スープにしました」
「燻製とスパイス
それから
ローリエという香草で
香り付したスープに」
「昨日の薬草も
少し混ぜています」
「ありがとう」
ノンは、
僕とゼンに
スープが入った器を渡し
いつも通り
ゼンは嬉しそうな声を上げ
ノンの作った朝食を楽しむ
そして
遺跡に入るための
一通りの支度を整えた後
「では、
この先は何が起こるか
わかりません」
「周辺を警戒しつつ、
遺跡に向かいましょう」
僕たちは本格的に
遺跡の調査へと赴くのだった