「お~い、≪アルミちゃん≫、ホントにどうしたんだ~?」
そんな頬っぺたを叩かなくても生きてます!
大丈夫です!
「はい! ちょっとこっちのあれこれで手間取ってました! すみません!」
「お~、良かった。急に寝ちゃったのかと思ったよ」
と、≪メグ姉≫が豪快に笑う。
目の前で≪メグ姉≫の胸がすごい揺れてらっしゃる……。神官服ってわりとダブっとした服だから体形が目立ちにくいはずなのに主張が激しい……。同じ元『
はっ、まさかこの胸を取り合って三角関係に⁉
【≪アルミちゃん≫、また脱線しています。どうせなら妄想だけではなくて実際にハプニングを起こしてください】
ハプニング?
【足元が滑ったふりをして、豪快に≪メグリア≫さんの胸を揉むのはどうですか?】
モーニングスターで殴られそう。
≪サポちゃん≫がやれば良いじゃない。
【私がやっても「ネコちゃんかわいいね」としかならないのでハプニングとしては弱いです】
ネコちゃんの立場ずるいな。
わたしもネコちゃんになりたい!
【私と代わりますか?】
えっ、そんなことできるの⁉
【できるわけないじゃないですか。何を言っているんですか?】
ぐっ……このネコ……。
どうしてくれようか……。
【にゃ~ん】
「お、どうした、猫助。お~、何だ急に甘えてきて」
【にゃ~んにゃ~ん】
わざとらしくネコっぽく鳴いて、ナチュラルに≪メグ姉≫の胸に……。
「ネコいいな。俺にも抱っこさせてくれよ!」
「オレも撫でたい」
≪マオ兄≫、≪カル兄≫にも大人気だ。
やっぱりネコって癒されるよね!
って違う違う!
「あー、そのネコを撫でたままで良いのでわたしの話を聞いてください!」
急がないと……ああっ、ここにきて10分も無駄な時間を過ごしてしまっている!
早く2つ目の依頼を終わらせて次に行かないといけないのに!
「わたし今、≪ニャンニャン姫≫の特別クエストをやっていて、≪ニャントリン≫さんを探しているんですよ!」
「≪ニャントリン≫さん? 黒ネコのおっさんか」
≪メグ姉≫が≪サポちゃん≫を胸に抱いたまま首を傾げる。
【おっと】
滑り落ちそうになる≪サポちゃん≫。神官服に爪を引っかけて上乳をよじ登っている。何その夢のロッククライミング!
って違う違う。そんなことはどうでも良いの!
えーと、≪ニャントリン≫さんの特徴はー。
第2の依頼書を開いて、念のためもう一度を確認っと。
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種族 :獣人族(猫獣人)
性別 :男
年齢 :52
職業 :
所属 :猫の眼ギルド
特徴 :毛の色は黒色。耳が小さい。
ヒント:ネコ缶が好き。
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「そうです。黒ネコの猫獣人さんですね! ≪ニャントリン≫さんが今の時間、どこにいらっしゃるか見当ついたりしませんか?」
この修練場にそれっぽい人はいないなー。
となると冒険に出ちゃっているのかな。レベルもまあまあ高めだし。
「あの黒ネコのおっさんなら、超朝型だから、もうこの時間には狩りは終わっているな。酒場で1杯引っかけているんじゃないか?」
えっ、まだ昼をちょっと回ったところですけど⁉
「オレたちも夕方酒場には行くけどさ、いつもちょうどおっさんと入れ替わりのタイミングなんだよな」
「そうそう。俺と≪カル≫はだいたい日が暮れた辺りに酒場に行んだけど、その時ネコのおっさんはもう完全に出来上がっていて、ちょうど千鳥足で帰って行くんだよね。いつもそんな感じだよ」
「へ、へぇ……。じゃあ、今酒場に行くと≪ニャントリン≫さんに会える、ってことですよね?」
「今日もたぶん酒場だと思うよ。行ってみなよ」
≪サポちゃん≫が≪メグ姉≫の胸の上からポヨンとジャンプ。
空中を駆け、わたしのもとへと戻ってくる。
「ありがとうございます! ちょっと行ってみますね!」
「お役に立てたなら良かったよ~。また今度一緒に訓練しよう」
≪マオ兄≫が手を振って送り出してくれた。
「≪メグ姉≫も≪カル兄≫もありがとうございます! また今度ー!」
3人に手を振って修練場を後にする。
残り時間は――。
【5時間10分です】
まあまあのタイムロスだなー。
でもわりとピンポイントな情報をゲットできたから良かったのかな?
【毎日昼過ぎから酒場にいる。これは確度の高い情報だと言えますね】
だよね。
持つべきものは気軽に話しかけられる先輩、かな?
【今度3人にはネコ缶を奢ってあげましょう】
うーん。
人間はネコ缶をもらっても喜ばないと思うよ。