【≪アルミちゃん≫、依頼書の内容をよく見てください】
依頼書……黄色い毛並み、垂れた耳が特徴。
ああっ!
「もしかして依頼書にある猫獣人の人って、≪ニャンチル≫さんのことじゃないですか⁉」
「やっと気づいたのかにゃ。遅いにゃ!」
≪ニャンチル≫さんがニヤリと笑う。
わかっていてとぼけてましたねー! ひどいですよ!
「この街で黄色い猫獣人といえば、私のことにゃ! 覚えておくにゃ!」
垂れ耳を持ち上げて……たぶん≪ニャンチル≫さんのキメポーズ!
すっごくかわいいです!
「覚えました! じゃあ今度1狩り行こうぜ!」
かわいい≪ニャンチル≫さんに、今のうちに唾をつけておこう!
「にゃにゃ? 私とパーティーを組みたいのかにゃ? そ、それは……」
急に頬を赤らめてモジモジし出す≪ニャンチル≫さん。
わたし、なんか変なこと言ったかな?
【≪アルミちゃん≫、それは本気ですか?】
本気って何が?
≪ニャンチル≫さんって、『
狩りで引っ張ってもらうにはちょうど良いくらいのレベル差かなーって。お互いに経験値がおいしいと思うし。
「初対面でいきなり言われても……困るにゃ……。ちょっとだけ考えさせてほしいにゃ! にゃ~~~~!」
と、捨てゼリフ的なものを残し、≪ニャンチル≫さんは走り去ってしまった。
なんだったの……。
「軽い狩りのお誘いなのになんであんな反応を……?」
もしかしてこの『猫の眼』ギルドでは、レベルが低いほうから狩りの誘いをするのはご法度だったりする? あー、そういうルールはちゃんと事前に聞いておくんだったー。ギルド独自のローカルルールとかあるもんね……。
【≪アルミちゃん≫、それは違います】
もしかしてローカルルールじゃない?
AO2ってそういう暗黙のルールが存在する感じ?
ベテラン冒険者の人がやたらと声をかけてくるのって、そういう意味だったりするのかな。
【それも違います。≪アルミちゃん≫はさきほど……プロポーズをしたんですよ】
「プロポーズ⁉ どういうこと⁉」
わたし、狩りに誘っただけですけど⁉
【猫獣人にとって、「2人きりでパーティーを組もう」というのは、「生涯を共にしよう」という意味になるのです】
「そんなルール知らんわ!」
パーティー=結婚⁉
なんでそんなややこしい風習があるのさ⁉
【さきほどの≪ニャンチル≫さんの反応……まんざらでもなかったですね。いけるんじゃないですか?】
いってどうする……。
わたしたち女同士ですよ……。
【私は……そっちも見たいのでありだと思います!】
ありじゃないし。
≪サポちゃん≫が見たいものを提供するために冒険者をやっているわけじゃないんだよ……。
【ようやくモテ期がきましたね!】
絶対違う……。
今度会ったら謝っておかないと。ネコ缶でも差し入れよう。
と、通知音が鳴る。
【次の依頼書が届きましたね。確認してみましょう】
さっそく依頼書をインベントリーから取り出し、実体化させてみる。
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種族 :獣人族(猫獣人)
性別 :男
年齢 :52
職業 :
所属 :猫の眼ギルド
特徴 :毛の色は黒色。耳が小さい。
ヒント:ネコ缶が好き。
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「次も猫獣人さんだ。さっき≪ニャンチル≫さんが言っていたね。もう1人の猫獣人の人――≪ニャントリン≫さん! 52歳……けっこうおじさんなんだ。『
上位職だね。
黒い猫獣人の人を探すのが次の依頼、と。
【残り時間が増えて、5時間35分ですね。順調だと言えるのではないでしょうか】
ノーヒントのところから、思いのほか早く≪ニャンチル≫さんにたどり着けたもんね。ラッキーラッキー♪
【次の≪ニャントリン≫さんもギルド内にいると良いですね】
あー、そっか。
普通に冒険に出かけている可能性もあるよね。
誰か≪ニャントリン≫さんの予定を知っている人はいないかなあ。
ギルドハウスに残っている人を探して回らなきゃ。
なんなら≪ニャンチル≫さんを見つけて、謝りつつもう一度情報を訊くっていう手もあるね。
誰かいないかなー。みんなどこにいるかなー。
【冒険に出ない人がすることを想像してみれば良いのではないでしょうか】
冒険に出ないってことはおやすみ中?
つまりそれぞれの部屋で寝ているとか。あとは街で買い物をしているとか。
あ、もう1個あった!
訓練中かもしれない!
さっそく修練場へGOだ♪