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第48話 私がネコの極意を教えて差し上げましょう

 猫獣人の人はどこかなー。

 その前に特徴のおさらい、と。


 クエストの依頼書を開いて確認してみる。


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 種族 :獣人族(猫獣人)

 性別 :女

 年齢 :15

 職業 :騎士ナイト/Lv.15

 所属 :猫の眼ギルド

 特徴 :毛の色は黄色。耳は垂れている。

 ヒント:ネコ缶が好き。

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 毛並みが黄色っぽい猫獣人を探せばいいってことね。

 とりあえずギルドハウスの中を探してみようかな。


「ネコさーん、ネコさーん、黄色い毛並みで耳が垂れている猫獣人さんはいらっしゃいますかー?」


 んー、もう朝食が終わってからだいぶ時間が経っているし、みんな出払っちゃっているかなー。ぜんぜん人がいない。


「ネコさーん、ネコさーん」


【にゃ~ん】


 ≪サポちゃん≫さー、紛らわしいからネコっぽい鳴き声を出さないで。


【私は由緒正しいサポートAIネコなので、ネコっぽく鳴いても問題ないと思いますが】


 普段鳴かないじゃん。

 流暢に言葉をしゃべっておいて、由緒正しいとか言われてもなー。


【最初のクエストは順調ですか?】


 逆に訊くけど、今順調に進んでいるように見える?


【ネコ探しだなんて、とても楽しそうだなと思いまして】


 なんで他人事なの?

 まあでも、そんなに楽しくはない、かな……。今のところなんの手掛かりも見つかっていないし。


【まだ10分くらいですからね。あと2時間50分は残っています】


 1人目だから30分くらいで見つけたいんだけどなー。

 このあとどれくらい難易度が上がるかわからないし、序盤はできるだけマージンを稼いでおきたいの。


 つまり≪サポちゃん≫と無駄話をしている時間はないってわけ!

 静かに撮影だけしていて!


【詰まっていそうだったのでアドバイスをと思ったのですが、黙っておきます】


 えっ、アドバイス⁉

 それはちょうだい!


【にゃ~ん】


 あーもう、ごめんって。

 はいはい、≪サポちゃん≫は立派なネコだって思ってますって。

 アドバイスほしいなー。


【仕方ありませんね。私がネコの極意を教えて差し上げましょう】


 ネコの極意?


【ネコは束縛を嫌います。ですから、いざ探そうとしても素直に出てくることはありません】


 あー、ネコは気まぐれって言うもんね。

 猫獣人も同じなのかな?


【加えてこれは特別クエストです。依頼書に名前のある方々には、≪アルミちゃん≫がクエスト受注した瞬間に、自分たちが探されているという通知が送られていると思います】


 え、そうなんだ?

 通知かあ。

 じゃあわたしが今猫獣人の人を探しているってことも伝わっていて……ネコだから隠れているってこと?


【おそらくそうだと思われます】


 まだ1人目なのにけっこう難易度高いじゃん……。

 どうしよう。


【それでもクエストなので、絶対見つからないということはないはずです。まずは落ち着いて情報集めをしましょう】


 情報集め……どうやって?


【情報を持っている人物と接触する必要があるでしょう】


 情報を持っている人物……でもギルドハウスにぜんぜん人がいなくて。


【ギルド内が完全に無人になることはそうそうありえませんよね? 必ず人が待機している場所に行くのはどうでしょうか】


 そんな場所なんて……あ、受付!

 受付のお姉さんならこの時間は絶対いるはず!


「よーし、受付のお姉さーん!」


 ダッシュだ、バビューン!



* * *


 超特急でギルドハウスの入り口に到着!

 受付のお姉さんに食い気味に猫獣人の人の所在を確認するのだ!


「お姉さーん!」


 でも――。


「ごめんなさいね。この特別クエストについて、私は何も答えてはいけないことになっているの」


「ガーン」


 せっかく情報を求めてやってきたのに、まさかのかん口令が敷かれている、だとー⁉


「でもまだ1人目の依頼なら、私、ギルマス、サブマス以外のギルド員からは情報が得られるんじゃないかしら」


「なるほど! ほかの人にはかん口令が敷かれていないんですね! 貴重な情報ありがとうございます!」


 お礼を言ってから受付を後にする。

 誰かほかの人を見つけられれば、何かしらの情報が聴きだせるってことだ!



 誰かいないかなー⁉


 お、都合よく廊下の向こうから誰かが歩いてくる!


「すみませーん。ちょっとお話を聴かせてくださーい!」


 このチャンスを逃すまい!

 猛ダッシュで歩いてくるギルド員の人を捕まえる。


「なんにゃ? お前は新人の≪アルミちゃん≫にゃ? 初めましてにゃ」


「初めまして! わたし、新人『配信者ストリーマー』の≪アルミちゃん≫です! 高評価とチャンネル登録よろしくー♪」


「元気が良いにゃ。私は≪ニャンチル≫にゃ。JOBは『騎士ナイト』にゃ」


 おおー、≪ニャンチル≫さん!

 ネコミミがかわいい♡


【≪アルミちゃん≫】


 わかってるって!

 すぐに情報を聞き出しちゃうよ!


「ところで、今、≪ニャンニャン姫≫からの特別クエストの最中なんですけどー、こういう人物に心当たりはありませんか?」


 依頼書を見せる。


「猫獣人で『騎士ナイト』で毛が黄色で垂れ耳のギルド員かにゃ……。私以外にそんなやついたかにゃ?」


 ≪ニャンチル≫さんが依頼書を片手に首をひねる。


「えー、同じ猫獣人の≪ニャンチル≫さんがわからないとなるとちょっと困りましたね……。ちなみに、この『猫の眼』ギルドに、猫獣人の人って何人くらいいるんですか?」


【≪アルミちゃん≫】


 今情報を聞き出しているから、ちょっと待って!


「私と、ギルマスの姫とあともう1人にゃ」


「おお、3人! ということは! もう1人の方のお名前を伺っても⁉」


 きっとその人がこの依頼書の人物に違いない!


「≪ニャントリン≫にゃ。でも、毛並みは黒いし、そもそも男だし、おっさんにゃ」


 えー!

 じゃあこの依頼書の内容とぜんぜん合わない……。

 いったいどういうことなの……。


【≪アルミちゃん≫】


 だからさっきから何よ⁉

 あとちょっとでたどり着けそうだったのに手詰まりになっちゃった……。


【≪ニャンチル≫さんのことをよく見てください】


 よく見る?

 たぶんわたしと同じくらいの年齢で、黄色い毛並み、垂れた耳がすっごいかわいい……お持ち帰りする?


【依頼書の内容をよく見てください】


 依頼書……黄色い毛並み、垂れた耳が特徴。


 ああっ!


「もしかして依頼書にある猫獣人の人って、≪ニャンチル≫さんのことじゃないですか⁉」


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