「≪アルミちゃん≫に特別クエストを発注するのじゃ」
「特別クエスト、ですか?」
急に何?
故郷の民とやらの秘密を教えてほしいだけなんですけど?
「このクエストを達成できたら、わらわの秘密を語ってやるのじゃ」
なんとー!
やりますやります! そのクエスト受注します!
【特別クエスト『≪ニャンニャンティア≫の依頼』を受注しました】
『≪ニャンニャンティア≫の依頼』かあ。クエストの内容がざっくりしていますね。やっぱり連続クエストでいろいろやらされるってことかな?
「そんな身構えなくても良いのじゃ。別に取って食おうというわけでもないしのぉ」
「ハハハ」
微妙な愛想笑いを返してしまう。
食われないにしても、マジで何をやらされるんでしょうか……。
「≪アサダ≫よ。例のものをこちらへ」
「かしこまりました~!」
≪アサダ≫さんが走ってどこかへ行ってしまった。
例のもの?
緊張するなあ。
「≪アサダ≫が戻ってくるまで雑談でもしようかのぉ」
「はい!」
と言っても何を話せばいいのやら。
「今も配信中なのじゃろ? わらわの姿は故郷の民たちに届いているのかのぉ」
【はい。現在同時接続数は90000。そのうち、87000は姫の故郷からの接続となっています】
えっ、すごい。
やっぱりほとんどの人が≪ニャンニャン姫≫を見たくてわたしの配信を……。
「87000か。ずいぶん少ないのぉ。宣伝が足りておらんのかぇ?」
【大変申し訳ございません。まだ新設したばかりのチャンネルでして……。姫の故郷には特別予算を投下して宣伝をかけさせて――】
「良い良い。それはわらわのほうで手配しておくでのぉ。≪アルミちゃん≫は『猫の眼』ギルドの一員じゃ。わらわの家族も同然なのじゃ」
【ありがとうございます。姫のお心遣い、感謝いたします】
「それよりも、じゃ。お主は≪アルミちゃん≫を鍛えてもっと活躍させるのじゃ。わらわの見立てでは、厳しく叩けばそれだけ成長するタイプのようじゃからのぉ」
【承知いたしました。厳しく指導いたします】
なんか……≪ニャンニャン姫≫と≪サポちゃん≫の間でめっちゃ話が進んでいるんですけど。疎外感がすごいのに、わたしのことを厳しく鍛えることだけが決まっているんですけど? わたしは褒められて甘やかされて伸びるタイプですよ?
「それと配信の仕組みをもそっと詳しく教えるのじゃ。わらわにできることがあるやもしれぬ」
【まさに姫にお願いしたいことがこざいます。資産と人材を豊富にお持ちの姫にうってつけの役割がございます】
≪サポちゃん≫の目が怪しく光った。
あれは……お金のニオイを嗅ぎつけた時の目!
「ほぅ、わらわにうってつけの役割とな? 詳しく話してみぃ」
【それはですね――≪アサダ≫さんが戻られたようですので、その件に関しては別で話しましょう】
廊下の向こうから走って戻ってくる≪アサダ≫さんが見える。
手に何か持って……書類の束かなあ?
「あいわかった。後ほど話すのじゃ」
「姫、例のものをお持ちしました!」
「≪アサダ≫よ。ご苦労じゃった」
≪アサダ≫さんはわりと全力で走ってきたように見えたけれど、息1つ切れていなかった。さすがサブマス。
「≪アルミちゃん≫よ。まずはこれを見るのじゃ」
≪ニャンニャン姫≫が束の中から1枚の紙を抜き取ってわたしに見せてくる。
「なんでしょうか。えーと……人のプロフィールが書かれている……?」
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種族 :獣人族(猫獣人)
性別 :女
年齢 :15
職業 :
所属 :猫の眼ギルド
特徴 :毛の色は黄色。耳は垂れている。
ヒント:ネコ缶が好き。
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なんだろ、これ。
『猫の眼』ギルドの人物紹介的な?
猫獣人ってことは、≪ニャンニャン姫≫と同じなのかな。猫獣人って人なのにネコ缶好きなんだ……。
「人捜しクエストじゃ。1名につき3時間の時限クエストを発注したのじゃ。合計5名の人探しをするのじゃ」
「人探しですね。わかりましたー。3時間……まあいけるのかな?」
同じ『猫の眼』ギルドのメンバーなら、この辺りにいるってことだもんね。かくれんぼ的な感覚に近いかも?
「依頼書の人物の名前を調べ、その人物と会話するのじゃ。依頼書を見せて本人確認ができればクリアなのじゃ」
なるほどなるほど。
まずは特徴を基に聞き込みをするところからなのかなー。
「先に忠告しておくとじゃ、人を追うごとにだんだんと難易度が上がっていくから気をつけるのじゃぞ。1人につき3時間の時限式じゃが、余った時間は累積していくから、最初のほうはさっさとすませていくのがおすすめじゃ」
「そういうことか! だんだん難しくなる……。5人だから合計で15時間ですね。後ろの人を探すのに時間がかかりそうってこともわかりました。がんばります!」
「今からクエストスタートじゃ!」
よーし、まずは1人目の猫獣人の人を探しちゃうぞー!