「さっき≪アサダ≫さんが≪ニャンニャン姫≫は超資産家っていう話をしていたんですけど、それはホントですか⁉ ギルマスの執務室の金銀財宝は、もしかして≪ニャンニャン姫≫の私財だったり?」
「ふふふ。その通り、すべてわらわの私財じゃのぉ。じゃがこれは秘密にしておいてくれんかぇ。どこぞの悪い盗賊やらギルドやらが攻め入ってきたら面倒じゃからの」
「いやー、そういうことは先に言ってほしかったですねー。これ、生配信なので全世界に放送されちゃってます……」
もしかしてヤバい?
【問題なさそうです。『放送するな』というのも、声の波長から推測すると、冗談交じりでおっしゃっていると思われます】
なんだー。冗談かー。びっくりした。
ていうか、≪サポちゃん≫って声の波長からそんなことまでわかるの?
【配信の可否についてはこの≪サポちゃん≫にお任せを。最悪の事態に備えて、最終手段は用意してありますから、≪アルミちゃん≫は気にせずガンガン突っ走ってください】
最悪の事態? 最終手段?
【基本的には配信直前に映像を差し替えるか、音声をカットします。しかし、配信後に問題が発覚した場合……】
場合……?
【見てしまった人の記憶を消します】
えっ。怖い。そんなことができるの……?
【可能です。ですから安心してくださいね】
安心……できない……むしろ怖くなったんですが……。
えっ、この配信を見てくれている人の記憶消せるの? 遠隔で? そんな……。
≪アサダ≫さんの声で現実に引き戻される。
「≪アルミちゃん≫大事なことだから、ここは大々的に宣伝してくれよ」
「あ、はい、なんですか?」
「姫が私財を提供してくださっているおかげで、我々のギルドの運営費や設備投資費は他のギルドとは一線を画すんだよ」
「なんだ≪アサダ≫よ。そんなにわらわを持ち上げても……金しか出ぬぞ?」
「姫、今年のボーナスも期待しております」
≪ニャンニャン姫≫がニヤリと笑い、≪アサダ≫さんが悪い笑顔に揉み手ですり寄る。
これ絶対2人の持ちネタでしょ!
「そんなお金があるギルドだってわかっちゃったら、入会希望者が殺到するのでは? ホントに大丈夫ですか?」
≪サポちゃん≫に記憶消してもらう?
「紹介以外では応募を受け付けておらんからの。問題ないのじゃ」
「えっ、そうなんですか? わたし紹介状なんて持ってないですけど……」
何で入れたんだろ。
「≪アルミちゃん≫は特別じゃ」と言いたいところじゃが、実のところ紹介状はちゃんと受け取っておるのじゃ」
なぜだか≪ニャンニャン姫≫が、わたしの後ろ――≪サポちゃん≫に向かってウィンクをする。
「クエストの依頼を受け取っておるからの。問題ないのじゃ」
【はい。オーラムオンラインPhase.2から『迷子の子ネコ探し』のクエストを発注させていただきました】
「えっと、あれが紹介状代わりってこと?」
【そうです。もちろん『猫の眼』ギルドにたどり着けるかどうかは≪アルミちゃん≫次第でしたが、≪ピート≫くんを連れて、見事クエスト達成となりましたので、『猫の眼』ギルドへの加入条件もクリアできた、というわけです】
「見事な模擬戦闘で驚かされたのぉ」
うーん。
そっかあ。
連続クエストは仕組まれていたってことなのね……。
「なんだかなー。≪サポちゃん≫の思惑通りに事が進んだっていうが気に入らないなー」
【この優秀なサポートAIの≪サポちゃん≫のアシストがあったとはいえ、Lv.1でこのクエストを達成できたのは、≪アルミちゃん≫が機転を利かせて対応できたことと持ち前のかわいらしさを爆発させられたことによるものだと思います】
「そっかなあ。機転ねぇ。んー、かわいらしさってどこかで何か爆発したっけ?」
【今の同時接続数は55000を突破しています。これは≪アルミちゃん≫がかわいいので、みんな見に来てくださっているということではないでしょうか】
「絶対違うよね。≪ニャンニャン姫≫がかわいいからだよね? 初登場の時も急に同接伸びたし」
≪ニャンニャン姫≫って数字持っているなあ。わたしよりも『
「わらわのバックには、故郷の民100万人がついておるからのぉ」
「100万人⁉ どういうことです⁉」
なになに?
故郷ってどういうこと?
「それはじゃな――まだ秘密じゃ♡」
えー。
教えてほしいなー!
「知りたいかぇ?」
「知りたいです!」
「どうしようかのぉ」
いちいちウィンクがあざとい……。かわいい……。わたしもそういう技ほしい……。
「良いじゃろ。あい、わかった」
「教えてくれるんですか⁉」
「≪アルミちゃん≫に特別クエストを発注するのじゃ」
「特別クエスト、ですか?」
急に何?
故郷の民とやらの秘密を教えてほしいだけなんですけど?
「このクエストを達成できたら、わらわの秘密を好きなだけ語ってやるのじゃ」
なんとー!
やりますやります! そのクエスト受注します!