「なんかね、≪アサダ≫さん目当てでたくさんの人が配信を見てくれているみたいです! せっかくなので挨拶をしてもらっても良いですか⁉」
年齢不詳のさわやかイケメンで視聴者数を稼ごう♪
「おう、挨拶か……。目の前に誰もいないのに話すっていうのは……なかなか緊張するな……」
急に背筋を伸ばし、何度も咳ばらいをする。
緊張しすぎてるおじさんってちょっとかわいいかも♡
「≪サポちゃん≫の構えるカメラのレンズに向かって視線を合わせてくださーい」
あれはダミーカメラだろうけど、キョドっていろんなところを見られるより、視線が安定したほうが良い感じに撮れるでしょう。
「えー、あー、わ、私は『猫の眼』ギルドでサブマスターを拝命している、≪アサダ≫と申します!」
「ちょっとちょっと、1回ストップ! めっちゃ硬いですってー。面接じゃないんだからー」
声が裏返っていておもしろいですけど、そういうのじゃなくてね?
「じゃあこうしましょう。わたしが質問しますから、それに答えてもらう形式でも良いですか?」
「お、おう……頼むわ」
汗かきすぎ。
カメラをそんなに意識しないでくださいよー。
もっと自然にね?
【≪アルミちゃん≫だってカメラを意識せずにしゃべれるようになるまでにけっこうかかりましたよね?】
それは……ほら……≪サポちゃん≫がプレッシャーかけてくるからだよ? 視聴者を増やさないと広告費が赤字でーとか、日々食べるものに困るからさっさとギフトを稼げーとか。
【≪アサダ≫さんが待っていますよ。早く質問をしてあげてください】
自分から話を振っておいて……。
ホントそういうところだよ?
「じゃあ1つ目の質問です。お名前と年齢、JOBを教えてください」
「おう。≪アサダ≫だ。年齢は26、この間27になったな。自分の年齢はすぐ忘れちまう……。JOBは一応『
「え、27歳だったんですか⁉ 意外と若い! もっと上かと思ってました!」
まさか年下とはね!
「なんだよ、おっさんくさいってか?」
「えーとまあ、そうですね……へへへ」
正直、おっさんくさいと思ってました!
「そこは否定しろよ!」
「すんません。あー、ちなみにですけど、結婚してます?」
「ああ。妻と娘がいる。もうすぐ2歳になる」
「そうですかー。じゃあ次の質問です」
【≪アルミちゃん≫露骨すぎます。もうちょっと興味があるふりをしてください】
だってー、結婚しているんじゃ意味ないし。
次に行かないと!
【ここは≪アルミちゃん≫の結婚相手を探す場所ではないですからね?】
知ってるけどー。ずっとここで暮らしていくならさー、せっかくだし良い人も見つけたいじゃない?
【それがメインにならないでくださいね。『
へいへいわかってまーす。
「最近やらかした大失敗について教えてくださーい」
「大失敗か……。半年ほど前のあれはなかなかひやひやしたな……」
≪アサダ≫さんが目を閉じて……何かを思い出しているみたい。あ、めっちゃ苦しそうな顔。気になるなー。
「とある遠方の商会から、
「おお!『
「理由は知らんが、
大規模討伐の予定でもあったのかな。
それか……戦争かも。
「注文が1万入ったんだが、いろいろ手違いがあってな……」
「手違い?」
「個数ではなく、ダースと勘違いしてだな……」
「えっ、1万個じゃなくて1万ダース……
「ああ、そうだ……やってしまった……」
当時を思い出したのか、頭を抱える≪アサダ≫さん。
12倍の量は……ヤバいですね。
「材料費だってバカにならないですよね……。11万個も
「いや、それは問題ないんだ。ギルマスの姫は超資産家だからな。
≪ニャンニャン姫≫何者なの……。
そんなに資産があるなら
「ああ、勘違いしてそうだから伝えておくが、ギルドの看板を背負って
「えっ、そうなんですか?」
「ほかのギルドはどうかしらんが、それが姫のお考えでな。『自分で稼ぎ、自分の力で楽しく暮らせるようになるのが1番なのじゃ』とな」
うわー、得意げな顔なのにモノマネ似てなさすぎ……。
超資産家っていうくらいだから、≪ニャンニャン姫≫自身は、これ以上稼ぐ必要ないってことなのかなー。だからギルドメンバーに還元しているとか?
「≪ニャンニャン姫≫のお考えはとってもステキですね! でもだったらなんでそんなにやらかしたことになっているんです? そんなに≪ニャンニャン姫≫に資産があるなら、11万個の
「姫に借りを作りたくなかったんだよ……。姫に借りなんて作ったらどうなるか……」
えっ、そんなにヤバいんですか?
≪ニャンニャン姫≫って怖い人なの?
ちょっとその話を詳しく!