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第68話 視聴してくださっている方に、媚び媚びのメッセージでギフトをねだるんですよ

【それでは行きます。『騎士ナイト』スキル『Wish List KN』をアンロックします】


「おー、スキルリスト! えーと……もしかしてギフトが必要?」


【『騎士ナイト』スキル『Wish List KN』をアンロックしました。ギフト受領数0。現在使用できるスキルはありません】


「うわー、やっぱりだー! どうしようどうしよう⁉ けっこうたくさんの人が見てくれているんだよね? なんとかならない、かな……?」


 誰かギフトちょうだいよー! このままだと長槍を構えただけのコスプレ女子になっちゃうー!


【戦闘時における応援コメント閲覧機能を解放します】


「えっ、何それ?」


【普段、私のほうで処理をしている視聴者からの応援コメントですが、戦闘時に限り閲覧できるようにしました。ある程度仕分けをし、表示可能な応援コメントを自動翻訳しました。テキスト、及び音声で≪アルミちゃん≫に届けます】


「おお! とうとう視聴者の人と触れ合うことができるってこと⁉ やったね! みんなヤッホー! わたしの声聞こえてるー?」


“お? コメント見えるようになったのか?”

“サポちゃんとの専用チャットじゃなくなったのかw”

“<姫はいつ出演されますか>”

“アルミちゃん見てる~?”

“<姫はまだかね>”

“<わらわはここじゃ>”

“<姫様ご機嫌麗しゅうございます>”

“姫?”

“新参か?姫だよ姫w”

“ひめねぇさま~!”


「なんかすごい……。Vtuberになった気分……。ホントにわたしの配信を見てくれている人がいたんだ」


【現在の同時接続数は80000です。たくさんの方が視聴してくださっていますので、気を引き締めていきましょう】


「う、うん……。あれ? わらわって、もしかして≪ニャンニャン姫≫?」


 見ていてくれているってこと?

 ホントに本物⁉


“<わらわはわらわじゃ。≪アルミちゃん≫、そっちにいるわらわのかわいい部下たちを頼ってしっかりクエストをクリアするのじゃ>”


「うわー、本物の≪ニャンニャン姫≫だー! えー、見ていてくれているんだ! 姫ー! うぉぉぉぉぉ! わたしがんばりますよー!」


“わらうw”

“爆レス”

“ギルマスの姫か”

“あのネコミミの?”

“推せる”

“<姫様が声で出演なされました>”

“<みなを呼んでまいります>”

“<姫様じゃ>”

“<姫姉様>”

“<姫様が出演なされたと聞いて>”

“なんか姫の関係者多くない?w”


「≪アルミちゃん≫は姫のお気に入りでうらやましいぜ」


“≪アルミちゃん≫は姫のお気に入りでうらやましいぜ”


 あれ? ≪アサダ≫さんの声が二重に聞こえて、コメントにも≪アサダ≫さんがしゃべった内容がテキスト表示に?


【失礼しました。同空間内の視聴者については、肉声を優先し、コメントをカットするように調整しました】


「ん、同空間内の視聴者? もしかして、≪アサダ≫さんはわたしの配信を見ていてくれているんですか?」


 まさかね?

 配信のことはぜんぜん知らない感じだったし、そもそも視聴用の端末なんて持っていなそうだし。


「おう、もちろん見ているぞ。今は俺も出ているしな」


 そう言って≪アサダ≫さんが笑う。


「え、ホントに見てるんですか⁉ でもどうやって? 何もデバイスは持っていないですよね?」


 見てるふり?

 でも声は拾っているし……?


「個人のステータス画面の脇に常時映っているんだわ。姫の指示でチャンネル登録した日からな」


「ステータス画面で配信が見られるんですか⁉ なんかすごい……。え、じゃあもしかして、わたしの昼寝配信もずっと見ていたの……≪アサダ≫さんってストーカー?」


 なんか怖い。

 まさかサブマスにストーカーされているなんて!


「人聞きの悪いこと言うな! 誰がストーカーだ! 姫に言われたから見ているだけだからな。普段は音声も切っているし、映像もオフにしているから見てないし」


「ちょっと! ちゃんと見てくださいよ!≪アサダ≫さんがそんなことするから同接が減っちゃうんでしょ!」


「見るなって言ったり見ろって言ったり忙しいな……」


「見ろっ!」


 ずっと見ろっ!


「へいへい、わかりましたよ。かわいいギルメンのためにも視聴者の1人になってやりますよ」


「むー、言い方ー。でもまさか≪アサダ≫さんがわたしの視聴者だったなんて驚きですよー。ちょっとうれしいな♡」


 握手くらいはしてあげますよ? でもでもぉ、お触りはダメぇ♡


「おい、お前らなごんでいる場合じゃね~ぞ? いい加減行動してくれ!」


 相変わらず巨大な盾を構えたままの≪クロッシーダイク≫さんが叫ぶ。


「あー、ごめんなさい! 今から……って、わたし、ギフトがないと何もできないんでした……」


 まさかの堂々巡り!

 ≪アルミちゃん≫ピンチです! 誰か助けてー!


【視聴してくださっているみなさんと会話できるようになったのですから、ここは1つ、かわいくお願いしてみたらどうでしょうか?】


「お願いしてみる?」


【視聴してくださっている方に、媚び媚びのメッセージでギフトをねだるんですよ】


 媚び媚びのメッセージで……。


「誰が?」


【≪アルミちゃん≫が】


「誰に?」


【見てくださっている方に】


「……マジで?」


【マジです】


 マジかぁ。

 媚びるの? わたしが? えー。それはちょっと恥ずかしくない?


【さっさとやりなさい。初陣の戦闘が始められないでしょう】


“<良いのぉ。≪アルミちゃん≫のお願いを聴こうかの>”

“<ひめのおかんがえにさんせいします>”

“みんな空気読めよw”

“まだだぞw”

“(おう、任せろ)”

“ギフト?”

“ギフトが贈れる視聴環境を用意しろ”

“ギフト機能はまだロックされているけどな”

“そんなの見当たらないぞ”

”お前何から繋いでるのw”

“簡易デバイスは?”

“脳にチップ入ってねぇの?”

“念写”

“がんばれば見える”

“<ええい、うるさい! 皆の者、≪アルミちゃん≫の話を聴くのじゃ!>”


 見てくれている人たち同士で何か揉めているけど……えー、わたし媚びないとダメなの……?


【≪アルミちゃん≫早くしてください】


「おい、お前ら、まだか⁉」


「≪アルミちゃん≫、かわいくお願いできたら俺もギフトを贈ってやろう」


 何この羞恥プレイ……。

 知り合いに媚びるのとかマジきついんですけど……。しかも目の前で見られているとか超絶きついんですけど?


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