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第62話 デーモンのドロップ品はしょぼい。とにかくしょぼい

 街を出て、2人(+空中の≪サポちゃん≫)で走ること約10分ほど。

 ≪アサダ≫さんが突然立ち止まった。


「よし、新しくできたダンジョンはここだ」


 ≪アサダ≫さんが指し示した先は、何もない草原?

 ちょっと暗くてあまりよく見えないけれど、ぜんぜん山脈でもないし、ダンジョンの入り口っぽさもない……。


「えっ、ここですか? もう着いたの……?」


「ああ、一応な。初心者避けのために、簡単な結界が張ってあるんだよ」


 そう言って≪アサダ≫さんが何もない空間に向けて手をかざすと、「バチバチ」という音ともに、草原の向こうに何かが見えてきた。洞窟の入り口なのかな? これが偽装結界ってやつかあ。


「一定レベル以上の人間でないと、素通りしてしまう結界だ」


「そうなんですね。あ、ホントだ。わたしが手を伸ばしても何も起こらない」


 レベル1だから当然と言えば当然かな。

 AO2にはそんな便利なものがあるんですねー。これなら初心者の人が間違って迷い込むこともない……あれ?


「こんな結界があるんだったら、別にダンジョンコアを破壊して閉鎖しなくても大丈夫なんじゃ?」


 一定レベル以上の人だけが入れる修行の場として残せますよね?


「こんなものはあくまで一時的なその場しのぎに過ぎない。本格的にダンジョンを運用するなら、有人管理をしなきゃいけなくなる。このダンジョンにそれほどの価値はないと判断されただけだよ」


 近場のギルドが持ち回りで管理をしないといけないかあ。

 適正レベルにないパーティーが入って全滅したりするのもまずいし、誰もダンジョンに入らな過ぎて、中でモンスターが増えちゃって外に溢れ出してきても困るし、意外とダンジョン管理って大変ですよね。


「良さげな素材でも手に入れば話は別なんでしょうけどね」


「調査報告によると、出現モンスターのレベルのわりに、見返りが少なすぎるらしい。レイドボスもデーモンだし」


「あー、デーモン。いろいろ察しました……」


 デーモンのドロップ品はしょぼい。

 とにかくしょぼい。

 レイドボスでも大きな魔石が1個手に入ればラッキーな部類だ。

 デーモンがボスの場合、ダンジョン内のモンスターはもれなくデーモンの複製体で溢れかえる。


 つまり、道中の敵(デーモン)をいくら倒してもドロップ品はしょぼい……。


「うーん、たしかに! こんなゴミみたいなダンジョンはさっさと潰しちゃいましょう」


 レベル上げだけ見れば優秀なんだけど、それだけだと赤字になっちゃうからね。やはり適度なドロップ品、適度なレベル帯のモンスター。ダンジョンはこの2つがセットになっているのが望ましいってわけ!



 立ち話をしている時間もないので、急いで洞窟の入り口からダンジョンの中に入る。

 ≪アサダ≫さんに結界を開いて通してもらったので、レベル1のわたしでも中に入ることはできました。あと≪サポちゃん≫もね。


「事前調査によると、このダンジョンは地下15階層まである。≪ダイ≫たちが潜ってからすでに3日経つ。隠し部屋などないか、しらみつぶしに調査しながら進んでいても、おそらくそろそろ最深部の15階付近まで到達していると思う」


「ゆっくり進んでもそんなもんでしょうね。それにデーモンのダンジョンでこの感じなら――」


「レイドボス戦が始まっているだろうな。各フロアのデーモンは再出現リポップしないから助かる」


「ですね」


 つまりこの、一切モンスターがいない1階層の状況からして、きっと≪クロッシーダイク≫さんたちはすでに15階層に到達していて、レイドボスと戦闘中なのかなと思われますね。下手すると、わたしたちが着く前に戦闘が終わってダンジョンが閉じちゃうなんてことも……。


「考えていても仕方ないさ。敵が出ないなら、さっさと走り抜けるだけだ。マップはないが、走るだけなら何とかなるだろう。ライティング!」


 ≪アサダ≫さんが辺りを照らす光魔法スキルを発動した。

『ライティング』は初心者でも使える光魔法スキルで、一度発動すると、使用者が気絶するか消滅の呪文を唱えるまで、頭の上から使用者を照らし続けてくれる。


 ちなみに今の状態のわたしは『ライティング』すら使えない。

 なんていったって、モンスターがいない今は戦闘中とカウントされていないらしく、まだ、『他職への変身システムトランスフォーメーション』を試すことすらできていない。早く戦いたいなあ。


【急ぎましょう。≪サポちゃん≫が案内します】


「≪サポちゃん≫ここのマップ、持ってるの? それなら早く言ってよー」


【残念ながらマップは持っていません。しかし、戦闘の痕跡を追えば、なんとなく階段の位置がわかる気がするので、ついてきてください】


「おお、それは助かる!」


 戦闘の跡を追う、かあ。

 たしかにそれは有効かも! 考えたこともなかったなあ。



 と、≪サポちゃん≫の機転により、わりと最短ルートで次々と階下への階段を見つけて、わたしたちは走り続けたのだった。


 そして戦闘らしい戦闘もせず、15階へ到達――。


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