わたしにはまだちゃんとした視聴者……というかファンの人がついていない。
だから、戦闘をするための土台が整っていないんだ。
それでもモンスターと戦うなら、十分に安全マージンを取って、仮にスキルが使用できなくてボコボコにやられても死なずに逃げられるくらいのレベル帯を狙うべき。
つまり今回のようなレイドボス戦に乱入するのは――。
「やっぱり厳しいかな……」
ここでクエストを断念するしかないってことかあ。
悔しい……。
「まあ、待て。話はわからんが、話はわかった」
≪アサダ≫さん……まだいたんですか?
【≪アルミちゃん≫の目がこう言っています。「≪アサダ≫さん……まだいたんですか?」と】
ちょー! 心の声を代わりに言うのは反則ぅ!
「まったく……失礼なヤツだな。その『
「危ないからやめろって言うんでしょ……」
そんなのわかっていますよ……。
「違う」
ん、じゃあなんですか?
「サブマスとして見過ごせないから護衛として同行してやると言っている」
「……は?」
「えっ?」
≪アサダ≫さんがついてくるんですか?
えー。
頼りない……。
「なんだその目は! ここは『サブマスが一緒にいれば安心ですね。ありがとうございます。よろしくお願いします』と、涙を流しながら喜ぶ場面だろ?」
えー。
だって≪アサダ≫さんって頼りないし……。
「サブマスって言っても、非戦闘職じゃないですかー。JOBも『
正直、戦闘には役に立たないんじゃ……。
非戦闘職の2人で行っても、正直共倒れになりますって。
「お前な……勉強不足過ぎるぞ……」
≪アサダ≫さんが大きなため息を吐いた。
「『
「えー、知らなかったぁ。AOでは『
物理職のほうは知識が薄いから……。それに2次職の『
「『
「期待されているんですね。よっ、サブマス!」
ポーション系の作成では、一般生産スキルと比べると格段に質の良いものになるし、1家に1台『
でもサブマスにするほどかなー。≪アサダ≫さんは顔が良いからそばに置いておきたい気持ちはわかる。……でも結婚しているしなー。
「お前、なんかまた失礼なことを考えているだろう……?」
「いいえ? ぜんぜん? サブマスがついてきてくれるなら助かるなーって思ってました! ありがとうございます! よろしくお願いします!」
「……まあいい。時間がないんだろ。すぐに行くぞ」
「えっ、あ、はい! でも家族でお食事中だったんじゃ?」
席はどこです?
せめてご挨拶とお詫びだけでも……。
「俺は『猫の眼』ギルドのサブマスターだ。リアルな家族も大事だが、ギルドメンバーも同じくらい大切な家族なんだよ。新人の≪アルミちゃん≫が困っているのに、飯なんて食っている場合じゃないだろう?」
ちょっと……かっこつけるのはやめてくださいます?
感動しちゃうじゃないですか。
【NTRいきますか?】
だからいかないって言ってんでしょ!
わたしの王子様は、わたしだけを見てくれる人が良いの! 他人のしあわせを壊してまで手に入れるしあわせなんて必要ないの!
【そう言い続けて早30年……】
まだ29歳だから!
って、ここでは15歳設定だからね⁉
「ポーション系は任せておけ。準備はなしだ。すぐに走るぞ」
「あ、はい!……あ、店員のお姉さん! わたし、帰ります! お金は……もう事前に払っていますけど、お昼寝の場所代……追加料金はなしで? はい、ありがとうございます! バタバタしてすみません。おいしかったです。また来ます!」
お昼寝用のスペースはホントに無料なんだ……。
このお店、赤字になって潰れなきゃ良いけど……。味は良かったし、また来たい。
「おい、何やってるんだ! 置いていくぞ!」
「あー、はいはい、すぐに行きまーす!」
≪アサダ≫さん、めっちゃ本気だ。
これならホントに間に合うかも⁉