「≪クロッシーダイク≫さんはどこにいますか? 知っていたら教えてください!」
≪アサダ≫さんも同じサブマスなら居場所くらいは把握していますよね⁉
「≪ダイ≫なら、3日前から留守だぜ」
「それは知っていますって。だからどこでレイドボス戦をやっているのかなと。できれば具体的な場所を地図で教えてほしいです!」
残り時間がわずかしかないんですよ!
間に合いそうなら、急いで向かいたいんです!
「『ファロ山脈』の麓で最近見つかったダンジョンだな」
「ふむふむ。それで『ファロ山脈』ってどの辺りですか? ここから遠いです?」
「距離的にはそう遠くない。むしろかなり近いな。だから困っているわけなんだが」
「近いんですね! やったね! この地図にだいたいの場所をマークしてもらっても良いですか⁉」
インベントリーから地図を取り出して≪アサダ≫さんの前に広げる。
わたしが持っているのは、雑貨屋で買った安い地図なので、この『ウルティムス』の街周辺しかマッピングされていなんだけどね。
「この辺りだな。ま、すぐ裏庭みたいなものだ」
おお、ホントに近そう!
これなら今から1時間で間に合っちゃうのでは⁉
「『テレフォン』マジ感謝ー! うぉー!≪サポちゃん≫急いで『ファロ山脈』にいくよー!」
≪今からですか? 外は真っ暗ですが≫
「今から行くよ! まだ1時間あるからギリギリ間に合うし! ほら、サブタイトルで告知打って! 視聴者集めよろしくぅ!」
何人見てくれたらどれくらい強くなるのかとかぜんぜんわからないけれど、きっといっぱいいっぱい視聴者がいてくれたらそれだけ戦闘にも有利になるんだよね⁉
「いやいや待て待て。『ファロ山脈』は近いし、周りに強いモンスターは出ないから問題はないんだが、ダンジョンの中に入るのはやめておけ」
「なんでですか?≪クロッシーダイク≫さんはダンジョンのボスと戦っているんですよね? だったら中に行かないと会えないじゃないですかー」
このまま時間切れになりたくないんですよー。
せっかく≪ニャンニャン姫≫から受注した特別クエストなんですからね!
「中のモンスターが異常に強いんだよ。初心者が迷い込んで被害が出まくってしまったから、今回3ギルド合同での討伐が決まったんだ。目的はダンジョンコアの破壊、およびダンジョンの封鎖だ」
「誰も入れないように閉じちゃうんですか。もったいないなー。良い修行の場なのに」
始まりの街の近場で高難易度のモンスターが出る場所があったら、パーティー組んでのレベル上げにもってこいですよねー。
「そういう意見も出たんだが、やはり山の麓にあるのがまずいという結論だ。ダンジョンの入り口がもっと山の上のほうにあったら話は変わったかもな」
「まあ、わかりましたよ。初心者マップなのに敵が強いんですね。じゃあ注意して入りますよ」
「待て待て。注意しても危ないだろ。≪アルミちゃん≫はレベル1なんだし、普通にその辺りにいるモンスター相手でも命の危険があるんじゃないか?」
≪アサダ≫さんが苦笑する。
言われてみればわたしって、戦闘力皆無なのでした! またAOの時のカチカチ
「んー、どうしよう。でもすぐに行かないと間に合わなくなっちゃうし……。ねぇ、≪サポちゃん≫。ダンジョンに入って戦闘状態になったら、『
【もちろん可能です。しかし、最低でも同時接続数が10000を超えないと『
「今の接続数は?」
【8500を超えたところです。徐々に増えています】
まあまあかなー。
サブタイトル変えてくれたのが効いてきている感じかな?
「ダンジョンに着く頃にはいけるんじゃない?」
【肯定。『
「どういうこと?」
【スキル用の『Wish List』をアンロックするには、一定数のファボリスト入り――各配信サービスのチャンネル登録のようなものが必要なのです。また、実際のスキル使用には一定量のギフトを贈ってもらう必要になります。つまり安定的に戦闘を行うためには、視聴者との関係性を徐々に深いものにしていかなければなりませんが、まだその時間が足りていないと思われます】
「……なんか言いたいことは……わかる」
見てくれているのは≪ニャンニャン姫≫の故郷の人だし、厳密な意味で言えばわたしのことを見に来てくれている視聴者ってわけじゃない。だから、ギフトを贈ってまで応援しようとは思われないんじゃないか。そういうことよね……。
「やっぱり厳しいかな……」
ここでクエストを断念するしかないってことかあ。
悔しい……。
「まあ、待て。話はわからんが、話はわかった」
≪アサダ≫さん……まだいたんですか?